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残高ゼロの極小ダンジョン経営~頼りない水晶コアと、ネズミ穴から始める迷宮拡張記~  作者: 盆ちゃん


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第111話:空を覆う魔導浮遊要塞と、不可侵の誓約

第111話:空を覆う魔導浮遊要塞と、不可侵の誓約

「――主砲の魔力充填回路、オールグリーン! 反重力機関アンチグラビティ・ドライブ、正常に作動しています!」

「ガハハハ! 外装の極厚ミスリル鋼板、ドワーフの意地をかけて一枚の隙間なく張り合わせたぜ! エンシェント・ドラゴンのブレスだろうが傷一つ付かねぇ!」

迷宮国家の上空、偽りの青空が広がる超巨大空間に、轟々たる重低音が鳴り響いていた。

そこにあるのは、山と見紛うほどの途方もない質量を誇る鋼鉄の浮遊島――最終決戦兵器『魔導浮遊要塞・アヴァロン』である。

これまでに宇宙開発(第4都市)や大深度地下網グランド・ネットワークで培ったオーバーテクノロジーのすべてを注ぎ込み、さらに俺のステータスでカンスト状態だったDPダンジョンポイントを湯水のように消費して建造された、空飛ぶ絶対防衛拠点だ。

「まさか、たったの数週間でこれほどの要塞を完成させるとは……。ファウスト、ガストン、お前たちの狂気には恐れ入るよ」

俺が艦橋ブリッジの司令席から眼下を見下ろすと、ファウストが白衣を翻して誇らしげに一礼した。

「すべてはマスターの無限に等しい魔力(DP)と、賢人会の皆様のサポートあっての賜物です! この要塞には、軌道衛星と連動した『神の目(GPS照準)』に加え、かつて帝国軍を消し飛ばした『魔力収束砲サテライト・カノン』を三門搭載! さらに、迷宮騎士団一万機を即座に投下できる強襲降下ポッドも完備しております!」

もはやファンタジーの枠を完全に逸脱した、空飛ぶバグのような兵器だ。これ一つで、世界中の国々を一日で更地にできるだろう。

「……マスター。通信の準備が整いました」

ミラージュの合図と共に、ブリッジのメインモニターに、新大陸の覇者である『神聖ラングス帝国』の謁見の間の映像が投影された。

画面の向こうでは、豪華な王衣に身を包んだ初老の皇帝が、先日の使節団であるバルバロッサ侯爵らと共に、緊張の面持ちでこちらを注視している。

「……単刀直入に言う。神聖ラングス帝国皇帝よ。先日そちらが提示した『不可侵と永遠の友好の盟約』、確かに受理した。これで俺たちとそちらは、正式な同盟国だ」

俺が重々しく告げると、モニターの向こうの皇帝と重鎮たちは、安堵のあまり膝から崩れ落ちそうになっていた。

「おお……! 偉大なる迷宮の主よ! 我が帝国は、あなたの深き慈悲に永遠の感謝を捧げます!」

「だが、喜ぶのはまだ早い。そっちの北の果てにある『禁忌の奈落アビス』……あそこに、世界を喰らい尽くす規格外の化け物(邪神のコア)が眠っているのを知っているな?」

俺の言葉に、皇帝の顔色がスッと土気色に変わった。

「し、知っておりますとも。あの奈落は、少しずつですが確実に周囲の魔力を吸い上げ、帝国の領土を不毛の荒野へと変えつつあります。我が国の全軍をもってしても、あの奈落の周囲にうろつく古代の魔獣一匹すら倒せず……我々にとっては、いずれ訪れる『世界の終わり』として恐れられている禁忌でございます」

「その『世界の終わり』を、俺たちがこれから叩き潰しに行く」

「……な、なんと!?」

皇帝が目を見開いた。

「勘違いするな。お前たちの国を救うためのボランティアじゃない。あの化け物がこのまま魔力を吸い続ければ、いずれ海を越え、俺たちの築き上げた迷宮や、大切な同盟国たちにまで被害が及ぶ。俺は、俺たちの平和な箱庭リゾートを、あんな得体の知れないゴミに汚される気はない」

俺は立ち上がり、画面の向こうの皇帝へ向けて鋭い眼光を放った。

「これより、我が迷宮の全戦力をもって、神聖ラングス帝国の領空を通過し、『禁忌の奈落』への大規模侵攻を開始する! この魔導浮遊要塞の圧倒的な威容に、帝国の民がパニックを起こすかもしれんが、一切の手出しは無用だ。お前たちはただ、震えて空を見上げ、俺たちが世界を救う様を見ていればいい」

「は、ははぁーッ!! 我が帝国の全領空を、喜んで解放いたします! 偉大なる神の軍勢に、勝利のあらんことを!」

皇帝は、通信越しであるにも関わらず、深々と頭を床に擦り付けた。

通信を切り、俺はブリッジから要塞の甲板へと歩み出た。

そこには、レオンハルト率いる迷宮騎士団の精鋭たち、リリアのハーピー部隊、そして同盟国であるエルフの魔術師団や獣人連邦の戦士たちが、整然と隊列を組んで並んでいた。

彼らの視線は、一様に玉座の前に立つ俺へと向けられている。

「……皆、よく聞いてくれ」

俺の声は、魔法によって拡声され、要塞の隅々にまで響き渡った。

「俺たちがこれまで、莫大なエネルギー(DP)を使って宇宙基地や地下トンネル、そしてこのふざけた要塞を創り上げてきたのは、世界を支配するためじゃない。俺たちが、誰の脅威にも怯えることなく、安全で、楽しく、豊かに生きるための『完璧な箱庭』を創るためだった」

兵士たちが、静かに頷く。

かつて理不尽な世界で虐げられ、今日を生きるのに必死だった彼らは、今やこの迷宮国家で「幸せな明日」を確信して生きている。

「だが、海の向こうの奈落で、俺たちのその平和を根こそぎ奪おうとする厄介なバケモンが目を覚まそうとしている。……許せるか?」

「「「許せるわけがありません!!」」」

レオンハルトの怒号に合わせ、数万の兵士たちが一斉に武器を掲げた。

「そうだ。俺たちが手を取り合い、不可侵の盟約を結んだ同盟国も、この豊かでくだらない日常も、世界中の理不尽から俺が絶対に守り抜く! 神だろうが、原初の化け物だろうが関係ない。俺たちの平穏を脅かす奴は、世界の果てだろうが完膚なきまでに叩き潰す!」

俺は拳を天高く突き上げた。

「これより、我が迷宮国家の総力を挙げた『禁忌の奈落アビス』殲滅作戦を開始する! 目標、新大陸の最北端! 全速前進だ!!」

「「「ウオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」」」

割れんばかりの雄叫びが、空を揺るがした。

魔導浮遊要塞アヴァロンの主機が咆哮を上げ、数千万のDPを光の尾に変換しながら、要塞はゆっくりと、そして圧倒的な速度で大空へと飛び立った。

眼下に広がる青い海を越え、未だ見ぬ脅威の眠る新大陸へ。

残高ゼロから始まった俺たちの迷宮は、今や星の運命を背負う無敵の盾と剣となり、最後の決戦の地へ向けて力強く進軍を開始したのだった。

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