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残高ゼロの極小ダンジョン経営~頼りない水晶コアと、ネズミ穴から始める迷宮拡張記~  作者: 盆ちゃん


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第101話(閑話):愚者の末路と、崩壊のカウントダウン

第101話(閑話):愚者の末路と、崩壊のカウントダウン

人間の国、ガルダル王国。

その王都の中央にそびえ立つ壮麗な王城の正門前で、白昼堂々、信じられない異常事態が発生していた。

「な、なんだこれは!? 突如として空間が歪んだかと思えば……空から木箱と人間が降ってきたぞ!」

「警備兵! 警備兵を呼べ!」

虚空にぽっかりと開いた漆黒の穴(転移ゲート)から吐き出されたのは、ずぶ濡れで白目を剥いて気絶している三人の屈強な男たちと、デカデカと『粗大ゴミ(着払い)』と書かれた巨大な木箱だった。

騒ぎを聞きつけて駆けつけた衛兵たちが恐る恐る槍を構える中、木箱の中から「ひぐっ……だ、だぜげで……」という情けない呻き声が聞こえてくる。

「中に誰かいるぞ! バールを持て、蓋をこじ開けろ!」

衛兵たちがギシギシと釘を抜いて蓋を開けると、そこには下着一枚にひん剥かれ、恐怖と汚物でドロドロに汚れきった中年の肥満男が、胎児のように丸まって震えていた。

「こ、この方は……ザバン伯爵様!?」

「そして、こっちで気絶しているのは、伯爵のお抱えであるAランク冒険者の『紅蓮の牙』の連中じゃないか! 一体、誰が彼らをこんな目に……ッ!?」

その答えは、木箱の裏側に魔法のピンで突き立てられていた、一枚の漆黒の封筒の中にあった。

***

数十分後、ガルダル王国の謁見の間。

豪奢な玉座に座るガルダル国王は、わななく手でその手紙を握りしめ、顔面を土気色にして硬直していた。

彼の御前では、急遽集められた大臣たちが青ざめた顔で顔を見合わせ、その中心には、毛布にくるまりガタガタと震え続けるザバン伯爵が土下座をしている。

「……ザバン。貴様、視察と称して向かったあの『迷宮国家』で、何をした」

「ち、違うのです陛下! わ、私はただ、人間の貴族として相応しい扱いを求め――」

「黙れッ!!」

国王の怒号が、謁見の間に雷鳴のように轟いた。

「貴様は、あの迷宮国家がどれほどの武力と経済力を持っているか知らぬわけではあるまい! 周辺の小国が束になっても敵わぬ戦力と、我が国も喉から手が出るほど欲しい純度の高いポーションと魔力結晶を産出する、もはや一つの『帝国』に等しい相手だぞ!」

国王は、手首を震わせながら、ミラージュから送られた漆黒の警告状を読み上げた。

『貴国のザバン伯爵が、当迷宮の絶対ルールである「身分無用の平等」を侵害し、武力による脅迫および営業妨害を行いました。よって、当迷宮はこれをガルダル王国からの明確な敵対行為とみなします。

慰謝料および営業妨害の賠償金として、三日以内に【白金貨一万枚】を要求します。

もし支払いが一日でも遅れた場合、貴国へのポーション・魔具・魔石の輸出を永久に凍結。さらに、国境付近に設置している「魔物誘導装置」の設定をオフにし、大深緑の迷い森から溢れ出すスタンピードの進路を、貴国の王都へ向けて「解放」いたします。ご機嫌よう』

「は、白金貨一万枚だと!? 国家予算の半分に匹敵する額ではないか!」

財務大臣が泡を吹いて倒れそうになる。

「それだけではないぞ! ポーションの輸入が止まれば、我が国の医療と軍事は立ち行かなくなる! その上、あの魔の森からのスタンピードを意図的に誘導してくるだと!? そんなことをされれば、我が国は一週間で地図から消え失せるわ!」

軍務大臣も頭を抱えて絶望の叫びを上げた。

迷宮国家は、一切の軍隊を動かすことなく、ただ「取引を停止し、防波堤としての役割をやめる」だけで、一国を容易く滅ぼすことができるのだ。その事実が、ガルダル王国の首脳陣を底知れぬ恐怖へと突き落とした。

「へ、陛下……お助けを……あのような理不尽な……」

ザバン伯爵がすがりつくように手を伸ばすが、国王の目はもはやゴミを見るような冷徹なものに変わっていた。

「近衛兵。この豚を捕縛しろ」

「へ、陛下!?」

「ザバン伯爵。貴様の全財産および領地を没収し、賠償金の一部に充てる。貴様の爵位は永久に剥奪し、一族郎党すべてを最下層の魔石鉱山での強制労働に処す! 死ぬまで国のために石を掘り続けろ!」

「ひ、ひぃぃぃぃっ! お許しをぉぉぉっ!!」

絶叫しながら近衛兵に引きずられていくザバン伯爵。彼がどれほど泣き喚こうと、同情する者は誰一人としていなかった。

「それから、伯爵の護衛をしていたという愚かなAランク冒険者どもだ。迷宮の騎士団長に傷一つつけられず無力化された挙句、国に泥を塗ったクズどもめ。冒険者ギルドに圧力をかけ、永久追放(ブラックリスト入り)にしろ。その後、反逆罪として地下牢へ放り込め!」

もはや、情けをかけている余裕などガルダル王国には微塵もない。三日以内に白金貨一万枚という天文学的な額をかき集めなければ、国そのものが滅びるのだから。

「……王家の隠し財産もすべて吐き出せ。貴族どもからも特別税を徴収しろ。何としても、何としても金を集めるのだ! あの迷宮国家を……本気で怒らせてはならん……ッ!」

玉座に崩れ落ちた国王は、恐怖に顔を歪めながら虚空に向かって懺悔するように呟いた。

原因を作ったザバン伯爵は暗く冷たい鉱山で一生を終え、威張り散らしていたAランク冒険者たちも光の差さない地下牢で腐っていく。

この一連の事件は、周辺諸国に瞬く間に知れ渡ることとなる。

「迷宮国家のルールを破れば、国ごと地獄に叩き落とされる」。

その絶対的な教訓は、シンの創り上げた『リゾート階層』を、誰もが震え上がりながらもルールを厳守する、真の意味での「絶対安全の楽園」へと完成させる決定打となったのである。

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