第7話 抜かずの剣と鋳直しの勲章
宮廷の刃の話をするには、この国の教えに少し触れておかなければなりません。
この国の人々は、世界は綯い母という神が綯った一本の大きな縄で、人はそこからほつれた細い糸だと信じています。そして王は、その大縄の結び目だと教えられています。眠っている綯い母に代わって、世界を結んでいる者だ、と。
◆抜かずの剣
王が宮廷の行事で腰に下げる儀礼の剣。一度も抜かれたことがないことが、この剣の値打ちである。鞘の中には、王が戦わずに過ごした年月が時止めの術で溜められていて、抜けばそれが一度に流れ出し、王はその場で老いるとされる。だから鞘の中で刃が錆びていても、確かめた者は誰もいない。
◆鋳直しの勲章
手柄を立てた貴族や将に授けられる勲章。戦場で回収された剣を溶かして鋳る。胸につけると、溶かされた剣の持ち主たちの勇気が流れ込み、臆病な者でも堂々と振る舞えるという。どの兵の剣だったかは記録されない。名前は、金物と一緒に溶けてしまうからだ。
◆刃集めの触れ
宮廷はときどき国じゅうに触れを出し、民から刃物を集める。集めた刃は都の大綯い堂へ運ばれ、そこに座る綯い母の巨像を組み上げる釘になる。触れが出るたびに像の釘は増え、像の姿勢は少しずつ変わっていると、都の者はひそひそと噂する。なお、田畑の鍬と鎌は触れから外される。刈り入れができなくなれば、宮廷に納められる縄も麦も絶えるからだ。
大綯い堂の巨像は、私もよく見ています。前に見たときより、首がほんの少し下を向いたように思います。
次は、ある鍛冶場の話をします。七代目の刃と、刃集めの触れが、同じ月にやってきた家の話です。




