第27話 縄返しと骨挽き所
宮廷の弔いの話をします。今日は、これまでより少しはっきり書くことにしました。
【宮廷の弔い】
◆縄返しの教え
綯い教の教えでは、死んだ者の縄を国へ納め、詠み司の手で天の大縄へ返してもらうことが、最上の弔いとされる。戦で死んだ兵の縄を軍が一本残らず集めるのは、この教えによる。家族や仲間が死者の縄を手もとに残すことは縄隠しと呼ばれ、軽くない罪になる。
◆留め置き
王族と位の高い貴族は、死んでも土に埋められない。詠み司が時止めの術をかけ、大綯い堂の地下にある刻の間に、息を引き取った日の姿のまま寝かせておく。何百年も前の王族が、昨日亡くなったような顔で並んでいる。
止めた時間は消えない。押しやられる。刻の間の真上にあたる都の下町では、刻熱の出ない夏が、昔から一度もない。
◆骨挽き所
都の北の外れ、川の流れが速い場所に、大きな水車小屋がある。昼も夜も石臼が回っていて、近くに住む者はいない。
戦が終わると、黒い札をつけた荷車が、何台もここへ着く。積まれているのは縄だけではない。手首に黒い札を結ばれたまま、野送りされたはずの兵たちが、そこにいる。王国の兵も、敵の乗り手も、区別なく。
石臼が挽いた粉は、黒い札で口を封じた壺に詰められ、大綯い堂へ運ばれる。宮廷では、それを「遠い国の古い王たちの亡骸」と呼んでいる。
はっきり書きます。黒い薬の材料は、白木の箱に入らなかった兵たちです。
黒い薬を飲んだ者は、亡骸の持ち主が覚えていたことを、ほんの少しだけ手に入れる、とお話ししました。前の話の、ほどけない結び目の糸の先を握っているのは、黒い薬を飲んだ誰かです。その少しのぶんだけ、死んだ兵たちは、まだ天へ戻りきれずにいます。
亡骸は黒い薬に、故郷の夢は帰り香になって、宮廷の人々の口と鼻に入ります。では、荷車に積まれていた縄はどうなるのか。それは、最後の頁まで取っておきます。
次は、王国の外から見た弔いの話を。




