12/32
第11話 止め声と並び鐘
宮廷で歌うのは、詠み司と呼ばれる人たちです。この国の教えの司で、詩で祈りを捧げ、詩で味を作ります。第三話でお話しした詠唱料理を作るのも、この人たちです。
◆止め声
声変わりの前に時止めの術をかけ、少年の声のまま歌い続ける宮廷歌手。止めた年月は喉に溜まり、歌うたびに少しずつ漏れ出して、聴いた者をほんのわずかに若返らせる。だが止めた時間は、消えたわけではない。止め声の歌手はある朝、止めていた年月の分だけ一度に年をとり、その日のうちに死ぬ。
◆並び鐘
音の高さをそろえた青銅の鐘の列。ひとつの鐘を打つと、二つの音が鳴る。一つめは鐘の音、二つめは、なぜか人の声に似ている。青銅は都の倉から運ばれてくる。宮廷の者は、二つめの音を「深みのある響き」と褒める。
◆朝の名詠み
毎朝、夜明けの刻鐘とともに、詠み司たちが大綯い堂の前で初代の王の名を詠む。一日も欠かしたことはない。この国の者なら誰でもその名を知っているが、口にするのは、この朝の儀式のときだけである。
朝の名詠みで詠まれる王の名を、私はこの帳面には書きません。書けば、またひとつ、その名が強くなってしまうので。理由は、いずれお話しします。
次は、ひとりの笛吹きの話です。




