好きです……おーじろうくん 2
公募用の作品なので、申し訳ありませんが、ガンガン改稿が入ります。
PV稼ぎするつもりじゃありませんが、もし内容が繋がらないってなったら、前に戻ってみてください。
完成してから載せればいいじゃんって話ですが、その通りです。
申し訳ありません。
(´;ω;`)
その時。
紅坂が虚空を仰ぎ、何かを聞きつけた猫みたいに耳を澄ます。
開いた窓に顔を向け、大股で歩み寄った。
「ん……どした、紅坂?」
三階下の花壇を見下ろしているその背中へ、声を掛けるカッシー。
「……アイツラだ」
「アイツラって、どいつらだよ?」
立ち上がって、紅坂の隣にならぶカッシー。僕はエンディングを迎えた画面を、ぼんやり眺めていた。
窓の外から聞こえて来るバカ笑いが、イヤな気持ちにしてくれる。
この高校、元々はそこそこの進学校だったけど、少子化と、高校無償化で私立のハードルが下がったせいで定員割れ。後はお察しだ。
「……門田さんの言ってた三年たち。図書室で騒ぐから困ってる」
「……あー、迷惑動画撮ってるアホどもか。これだから、偏差値低めの公立は……おい、ツヤツヤ・キューティクルに、ハカセと……西郷どん! 花壇に入るんじゃない!」
カッシーらしい、気配りだけど、最後だけ微妙なのが残念だ。
カッシーが続けて叫んだ。
「はぁん? 残念だったな、貴様らとタメだ……しっ、デケエ声で、ダブりとかいうんじゃない!」
バカにした笑い声が窓の下から聞こえ、気づいたら立ち上がってた。
ソイツラが言っちゃいけないセリフを吐いたから。
紅坂が淡々と窘めた。
「樫沢、もういい。オマエの気遣いが通じるヤツラじゃない」
「んー……実力行使はちょっとなあ……」
その声を聞きながら、開けっ放しのドアからそっと出た。
◇◇◇
公立高校ってのは、たいていボロい。
この大浜高校も昭和の遺物だから、『物陰』がたくさんある。私立の小中一貫校で育った僕はカルチャーショックを受けたもんだ。
校舎の裏口を出て左へ。運動部が汗を流している運動場を横目に見ながら、校舎の角へ向かう。
変色した花びらが地面に散ってる。新学期の始まりが遠い昔に思えた。
深呼吸をしながら、角を曲がる。
花壇と、ブロック塀に挟まれた三メートルほどの空間に、ソイツラは立っていた。
茶髪のギャルと、メガネのカリアゲ、僕よりデカいデヴがゲラゲラ笑ってる。
そのデヴは拳を口に当てては、薄い煙みたいなものを吐き出している。電子タバコを握り込んでるのが見えた。
上をチラ見すると、カッシーと紅坂が僕に気づいてた。
スマホを構える仕草をしてから、手のひらで押しとどめるジェスチャーを送る。
撮影は任せたけど、今じゃない。
カッシーが目だけで頷く。
僕はバクついてうるさい鼓動を無視、腹の底から吼えた。
「おい!」
ビクッとこっちを見る三人。
デヴはあわてて、ポケットに拳を突っ込んで隠した。
「なーんてね……おいおい、パイセン。ズボン焼けるぞ?」
僕がひとりなのと、ブレザーのエンブレムの色で年下な事に気づいたのか、三人ともぶっちぎれそうな顔で吼える。
「ンだ、コラァ!?」
喚くカリアゲを手で押し止め、ことさら余裕をかますように、煙をフカすデヴ。
「アイコスで焼けるわけねえだろ、ボケ……コロすぞ?」
化粧で地顔を隠してる女が、スマホを僕に向けながらはしゃぐ。
「ね、コイツになんか面白いことしてもらおーよ? 陰気くさい目ェしてるやつが、その花とか食ったらウケるんじゃね?」
女が目で指したのは、カリアゲが持ってる、へし折られたピンクの花。
理由はわからないけど、むかっ腹が立った。
目をそらさないまま、僕は声を上げる。
「……だそうですよ、樫沢さん?」
「あー、自分でゲロってくれるあたりが親切だよね、蒼瀬さん」
慌てて三階を振り仰ぐ、アホ三人組。
「ナニ撮ってんだ、コラァ!?」
iPhoneでいつの間にか自分たちが撮られてるのに気づき、激昂する。
まあ、焦るわな。喫煙と花壇荒らし、動画を教師に見せたら、間違いなく停学だ。
なによりこの学校、体育教師が鬼怖い。見た目、マジで本職と見分けがつかない。
僕にづかづか近寄って来るデヴ。
ポケットに手を突っ込んだまま、薄ら笑いを崩さない僕。
怖くない訳じゃないけど……逃げたくない。
アイツラに会ったとき、せめて逃げずに踏みとどまりたいから。
胸倉をつかまれ、吊り上げられる。
あ、コイツ、カッシーよりデカいな?
つまさき立ちにされた僕は反撃するのを諦めた。
狭くなる視界の中、一つの言葉だけが、頭に浮かぶ。
ゼッタイに目はそらさない。
負けてたまるか。
「おい」
静かな声が降って来た。
そこに含まれてる不穏な響きに、ヤンキーどもが慌ててカッシーを見上げ……
言葉を失った。
歯を食いしばり、両手で何か小さなものをへし折ろうとしてるカッシー。
仁王の様な形相で、前腕がバキバキに膨れ上がった姿を見たヤンキーどもが凍りつく。
やがて。
つまらなさそうな顔で、握り込んでた何かを僕らの足元に放る。
未舗装の地面で跳ねたものをガン見するソイツら。
折れ曲がった一〇円玉が、桜の花びらの上で止まる。
「やめとけ」
見上げるとそこには、窓枠で重ねた腕に、顔を乗せているカッシー。
隠れた口許。感情の消えた目。
コイツが憧れてるケンさんそっくりの静かな圧力。
僕はカッとなって喚こうとした。
「ふざ……」
「相棒が、お話してえのはオマエの方じゃねえ……放せ」
……ゴメン、カッシー。
相棒が、僕に恥をかかせる様なこと……するはずないのに。
不定期ですが、とにかくがんばります。
お付き合いいただけたらありがたいです。
( ;∀;)




