↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/27

里美の違和感

「典子さんって、何学部?」


 里美が突然聞いた。


「知らん」


「住所は?」


「知らん」


「電話番号」


「向こうからかかってくるから」


「友達は?」


「知らん」


「京都のどこに住んでるの?」


「……知らん」


 里美は潤を見る。


「潤、典子さんのこと何も知らないじゃん」


「大学一年で、大分出身で、D大で」


「それ全部、典子さんが言ったことだけだよ」


 潤は黙った。


     *


「125のバイク乗ってるんだよね」


「うん」


「見た?」


「まだ」


「車種は?」


「知らん」


「ナンバーは?」


「だから見てへん」


 里美の表情は真剣だった。


「私、焼きもち焼いてるのは認める」


「認めるんか」


「今はそこじゃない」


「はい」


「典子さんと会ったあと、潤、変なんだよ」


「変?」


「ぼうっとしてる」


「そうか?」


「前よりひどい」


     *


 その夜。


 里美は自宅で紙を広げた。


 徳田典子。


 D大学一年。


 大分出身。


 十九歳くらい。


 125ccのバイク。


 安心院で会った。


 だが確認できるものが何もない。


 里美は黒電話の前へ座った。


 電話帳を開く。


 D大学の番号を探す。


     *


「もしもし、すみません」


 緊張しながら尋ねる。


「そちらに徳田典子さんという一年生はいらっしゃいますか」


 電話の向こうで確認する声。


 少し待つ。


 返事が来た。


「……え?」


 里美の手が止まる。


「いないんですか?」


 もう一度確認する。


 答えは同じだった。


 受話器を置く。


 紙を見る。


 徳田典子。


 その横へ、


 里美は一言だけ書いた。


 ――いない。


 その瞬間、


 里美の表情から嫉妬の色が消えた。


 代わりに浮かんだのは、


 はっきりとした恐怖だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。