三条京阪
夏休みが終わり、学校が始まった。
教室ではいつものように里美が近くにいる。
「宿題出した?」
「出した」
「ほんと?」
「俺を何やと思ってんねん」
クラスメートが笑う。
「相変わらず仲いいな!」
「うるさい」
二人同時に答えた。
*
その夜。
典子から電話。
『日曜日、三条京阪で』
「分かりました」
以前と同じ場所。
*
日曜日。
典子はいつものように待っていた。
「榊原君」
「お久しぶりです」
「また榊原君に戻った」
「典子さんも俺を榊原君って」
「じゃあ潤君」
二人で喫茶店へ入る。
*
「バイク、結局どうなったんです?」
「直ったよ」
「今日は?」
「置いてきた」
「何乗ってるんです?」
「125」
「それは聞きました」
典子が笑う。
「今度、後ろに乗ればいいじゃない」
「彼氏に怒られますよ」
「そんな人いないよ」
前にも聞いた会話。
なぜか潤は妙な既視感を覚えた。
*
「潤君、私のこと好き?」
「急に何ですか」
「好きじゃない?」
「そういう意味では……」
「里美ちゃんの方が好き?」
「比べる話ちゃうでしょ」
「そうかな」
典子は窓の外を見る。
「孝子さんも、待ってたんだろうね」
「昭吾朗さんを?」
「うん」
「帰ってこなかった」
「帰ってくるって約束したのに」
潤が典子を見る。
「何で約束したって知ってるんです?」
典子は微笑んだ。
「そうだったんじゃないかなって」
*
帰宅すると里美がいた。
「どうだった?」
「普通」
「ほんと?」
「なあ」
「何?」
「大学生になったらさ」
「うん」
「一泊くらいでどっか走りに行こうか」
里美の顔が明るくなる。
「行く!」
*
夜。
潤は孝子と典子の写真を並べた。
同じ人間が、
違う時代の服を着ているように見えた。
机の端に置いたライカが、
まるで孝子の写真を向いているようだった。




