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すっぽかし

翌日。


 潤は待ち合わせ場所で典子を待った。


 十分。


 二十分。


 三十分。


 来ない。


 一時間近く待って、諦めた。


     *


 家へ戻ると里美が来た。


「会えた?」


「来んかった」


「連絡は?」


「ない」


「変だね」


「バイクまた壊れたんかな」


 里美は少し考えた。


「D大学って言ってたよね」


「うん」


「心配なら大学に聞いたら?」


「何て聞くんや」


「徳田典子さんいますかって」


「そこまでする?」


「潤、気になってるんでしょ」


     *


 二台のカブで走る。


 川沿い。


「もし私が急にいなくなったら?」


 里美が聞いた。


「何や急に」


「答えて」


「めちゃくちゃ困る」


「典子さんは?」


「……違う意味で気になる」


「違う意味?」


「何かよう分からんから」


「私とは違う?」


「全然違う」


 里美は少し嬉しそうだった。


     *


 夜。


 電話が鳴る。


『ごめんね』


「典子さん?」


『バイク、また駄目になって』


「連絡してくださいよ」


『怒った?』


「心配したんです」


『会いたかった?』


「……まあ」


 典子が笑う。


『私のこと、忘れないでね』


 その声だけが妙に耳に残った。


     *


 夢。


 焼けた町。


 空襲。


 三つ編みの少女。


 孝子。


 顔が典子へ変わる。


『ずっと待ってた』


 典子が手を伸ばす。


『今度は――』


 そこで目が覚めた。


 潤は暗闇の中で息を整えた。


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