浴衣
典子から電話があった。
『次の日曜日、会える?』
「はい」
『今度こそバイクで行くから』
「直ったんですか」
『たぶんね』
電話を切る。
ちょうど里美が来た。
「典子さん?」
「うん」
「日曜日?」
「うん」
「会うんだ」
「まあ」
「二人で?」
「そらそうやろ」
里美は少し黙った。
「土曜日、祭り行かない?」
「ええけど」
*
土曜日。
里美は浴衣で現れた。
潤は一瞬、言葉を失った。
「何?」
「いや」
「変?」
「……似合ってる」
里美が笑った。
「珍しい。ちゃんと言えた」
「うるさい」
*
人混み。
里美が流されそうになり、潤は反射的に腕をつかんだ。
「あ」
「離れんなよ」
「うん」
少し歩いてから、里美が言った。
「明日」
「何?」
「取り込まれないでね」
「何言ってんの」
「だって……」
里美は俯く。
「典子さんと会ってから、潤ちょっと変だから」
「変ちゃうわ」
「ならいい」
*
祭りの帰り。
人の少ない道。
里美が突然言った。
「私たち……何もしてないね」
「?」
「付き合ってるみたいなのに」
「みたいって」
「ほんとに私のこと好きなのかなって」
潤は固まった。
「何言うてんねん」
「だから、そういうところ」
何を言えばいいのか分からない。
潤は迷った末、里美の肩へ腕を回した。
ぎこちない。
里美も固まる。
「……これでええ?」
「馬鹿」
「何でや」
「でも、まあいい」
その夜。
潤が思い出していたのは、
典子ではなく浴衣姿の里美だった。




