青いカブ
典子と入った喫茶店で、潤は旅の写真を見せた。
「これ、安心院で撮ったやつ」
典子の写真を差し出す。
「ちゃんと写ってる」
「当たり前でしょ」
典子が笑う。
「孝子さんとやっぱり似てます」
「そう?」
「親戚じゃないんですか」
「さあ」
答えは曖昧だった。
*
「今度ツーリング行こうか」
典子が突然言った。
「典子さんと?」
「うん」
「バイク乗るんですか?」
「125だけどね」
「へえ」
「潤君、後ろに乗ればいいじゃない」
「彼氏に怒られますよ」
「そんな人いないよ」
典子は意味ありげに笑った。
「じゃあ、里美ちゃんは?」
「何で知ってるんです?」
「前に話してたでしょ」
「ああ」
「彼女?」
「……たぶん」
「たぶん?」
典子が笑う。
「キスした?」
「してません」
「手は?」
「何の話ですか」
「かわいいね、潤君」
*
夕方、家へ戻る。
里美がいた。
「楽しかった?」
「まあ」
「また会う?」
「たぶん」
「ふうん」
「その返事やめろ」
「じゃあ明日の朝、うち来て」
「何で?」
「いいから」
*
翌朝。
里美の家の前へ行く。
里美が満面の笑顔で立っていた。
その横。
青いカブ。
「じゃーん」
「……え?」
「私の」
「は?」
里美が免許証を見せる。
「取った」
「いつの間に」
「内緒」
「カブまで買ったん?」
「うん」
「何で」
里美は少し照れた。
「潤と一緒に走りたくて」
潤は返事に困った。
典子に「ツーリングへ行こう」と言われたときとは、
何かが違った。
「どこか行こうよ」
「……じゃあ俺もカブ取ってくる」
「うん!」
これまで一台しかなかったカブが、
今日から二台になった。




