ライカ
日曜日。
潤と里美は喫茶店で写真を見ていた。
旅の写真を一枚ずつ机に並べる。
「これ宇佐?」
「うん」
「こっちは安心院?」
「そう」
里美の手が止まる。
典子の写真。
「この人?」
「うん」
里美はアルバムから持ってきた孝子の写真と見比べた。
「……似てるね」
「やろ」
「親戚って言われたら信じる」
「本人は知らんみたいやけど」
里美はしばらく写真を見ていた。
*
行きのフェリーで撮った暗い写真もあった。
ほとんど真っ黒。
「何これ」
「夜の甲板」
「何撮ったの?」
「人がおったような気がして」
「誰?」
「分からん。見直したら誰もおらんかった」
「やめてよ」
「俺も今見てちょっと嫌になった」
*
もう一枚。
見覚えのない写真が混じっていた。
暗い室内。
輪郭だけ。
「これ撮った?」
「知らん」
「潤が撮ったんでしょ」
「ライカが勝手に一回切れたことあった」
「……怖いこと言わないで」
「でもたぶんそれ」
里美が写真を裏返した。
「見なかったことにしよう」
「賛成」
*
その日の夜、典子から電話があった。
『今度の日曜日、空いてる?』
「はい」
『三条京阪で会おうよ』
「分かりました」
『楽しみにしてる』
電話が切れる。
潤は机の上のライカを見る。
その横には孝子と典子の写真。
同じ顔。
違う時代。
偶然。
そう思うことにした。




