似ている
潤が帰った日の夕方。
里美は当然のように榊原家にいた。
土産を受け取り、旅行の話を聞く。
「で、孝子さんは?」
「空襲で亡くなってた」
「……辛い話だったね」
「うん」
潤は少し黙った。
「後電話で話した女性のこと」
「典子さんとかいう人?」
「うん」
「びっくりするくらい孝子さんに似てる」
「……ふうん」
里美の返事が急に短くなった。
*
「写真ある?」
「現像せな分からん」
「撮ったんだ」
「そら撮るやろ」
「そう」
「何怒ってんねん」
「怒ってない」
明らかに怒っていた。
*
数日後。
現像した写真を受け取った。
宇佐。
安心院。
道路。
海。
そして橋のそばに立つ典子。
潤は写真をアルバムの孝子と並べた。
「……やっぱり似てる」
祖母も覗き込む。
「あらまあ」
「やろ?」
「親戚やろか」
「本人は分からんって」
そのとき電話が鳴った。
祖母が出る。
「潤、女の人」
「え?」
受話器を取る。
『潤君?』
「徳田さん?」
『典子でいいって言ったでしょ』
胸が少し跳ねた。
『京都に戻ってきたよ』
「そうなんですか」
『会わない?』
*
電話を切ると、里美がこちらを見ていた。
「典子さん?」
「うん」
「会うの?」
「たぶん」
「二人で?」
「そら、そうなるやろ」
「……ふうん」
「またそれ」
里美は何も言わなかった。
*
帰り際。
里美が庭のカブを見た。
「ねえ、潤」
「何?」
「私も免許取ったらさ」
「うん」
「一緒に走る?」
「そら走るやろ」
「ほんと?」
「何で嘘つくねん」
里美は少し笑った。
「じゃあ、いい」
その顔には、
潤の知らない秘密が一つあった。




