第十二ステージ 相対する者たち
非常事態宣言が発令されてから1週間。
MEGAMIたちの疲労はピークに達していた。リオたちも未だバクを送り出している根源の特定が出来ずにいる。
「はぁ、はぁっ、ったくこれじゃキリがねぇっ!」
本日10体目のバクを消滅させ、ゼノンは苛立ったように膝を叩いた。
「だらしないねぇ~、そんなんでよく俺を倒すなんて担架が切れたよ」
パンパンと自身の隊服の乱れを直しながらハルトが微笑んだ。途端に食ってかかろうとするゼノンをリオが全力で止める。
「2人とも体力が無駄になるからやめて下さい。」
ゼノンの苛立つ気持ちも分かる。しかし今はバクを倒しながら先方の核たる部分を見つけるしかないのだ。
「敵は、何を考えているのでしょうか」
「さぁ~わからないけど、まぁ敵意むき出しなのは間違いないわね。」
ティファは上層部と連絡を取りつつ討伐を続けている。局長であるノアもフランドルも最善を尽くしているが、あまり結果は芳しくないようだ。
「でも多分そろそろじゃないかな」
すっかり暗くなってしまった夜空を見上げながらハルトが呟く。
「なにが・・・ですか?」
「君は感じない?今までとは違う強い力が近づいてくる気配」
その瞬間辺りが凍りついた様に空気が変わった。バクではない何か恐ろしいものが近づいてくる、リオの直感が警鐘を鳴らす。
凄まじい殺気に4人が後ろを振り向くと、そこにはいつの間にか2人の男が立っていた。
1人は眼鏡をかけた痩せ型の男、もう1人は目つきの悪い銀色短髪の男だ。服装から見てもMEGAMIではない。
そしてこの嫌な威圧感を考慮すると、どうやらこの者たちが捜し求めていた悪意剥き出しの先方様ということになる。
「待ってたよ、そろそろ姿を見せてくれるんじゃないかなーと思ってたんだ。」
朗らかに笑うハルトの目は獲物を見つけたように生き生きとしている。少しも臆することのない態度に、眼鏡をかけた方の男が口を開いた。
「なぜ我々が出向く、と?」
「だってもし俺が相手を倒そうと思ったら、どう考えても叩くなら今じゃない?」
その言葉にもう一人の男が吹き出す。
「はっ!てめーおもしれーな。よし、お前は俺が倒してやる!」
男は両手の拳をパンッと合わせるとハルトの方を向き戦闘体勢に入った。
「じゃあその眼鏡は俺がぶっ倒す。丁度イライラしてたんだ、ちゃっちゃと終わらせようぜ。リオ邪魔すんなよ」
ゼノンは腕をぐるぐる回すとリオに目線を向けた。相手の眼鏡の男は一つため息をつくと腰に備えたサーベルに手を伸ばす。
「そちらにも単細胞な方がいるようですね。あと、私の名は鬼灯と申します。こちらの単細胞は邪鬼。」
「おい、単細胞単細胞うるせーぞ!しかも敵相手にご丁寧に自己紹介するやつなんざ聞いたことねーっつーの」
一触即発のその状況に、ティファが本部に指示を仰ぐ。
しかし上の判断をハルトが待てる筈もなく、刀を抜き瞬く間に邪気に斬りかかった。
遅れを取らずゼノンも鬼灯に向かっていく。その様子をリオはただただ見守ることしかできなかった。
「男の人ってなんで戦うの好きなんですかね?」
「さぁね、本能ってやつじゃないかしら。たった今上からの指示が来たけど・・・現場判断に任せるそうよ。まぁハルトもいるしってことでしょうね」
目の前では4人の鬼神たちが戦いを繰り広げている。一向にどちらも引けを取らない戦いぶりに流石のリオも恐ろしくなる。なんといってもMEGAMI随一の戦闘アーマーであるハルトとでさえ互角に渡り合っているのだ。恐らく自分相手ではとても歯が立たなかったであろう。
その瞬間猛烈な爆音と共に噴煙が上がった。粉々になった塀にはゼノンが打ち付けられている。
「ゼノンっ!!」
思わず駆け寄ろうとしたところをティファに制される。
「まだよ。あいつなら大丈夫」
瓦礫を払いのけ立ち上がるゼノンの顔には笑みが浮かんでいた。この戦闘が楽しくて仕方のないような嬉々とした表情だ。
そんなゼノンの様子を見て鬼灯が一つため息を吐く。
「はぁ、あの攻撃を食らってもまだなお立ち上がるとは・・・骨が折れそうですね。それに戦闘狂な所も邪鬼にそっくりとは・・・全くやりにくい」
「てめぇちょいちょい人の悪口言ってんじゃねーぞ!!」
ハルトと邪鬼の戦闘も一歩も引いていない。しかし邪鬼が気をそらした一瞬をついてハルトが剣を振るい、猛烈な勢いでそれを吹き飛ばした。
すさまじい轟音を立てて壁が崩れていく。
「人と死合ってる時に余所見するなんて酷い侮辱。死んで償ってくれる?」
「ゴホッゴホッ、いってーな・・・くそ。こりゃあばら2~3本イってるぜ」
一方ゼノンの方も決着が着きかけていた。
「はぁ、はぁ・・・なんてタフさですか」
「もぉ終わりか?全然足んねーなぁ、もっとやろうぜ」
倒しても倒しても起き上がり、更に力を増してくるゼノンに鬼灯は苦戦を強いられていた。
ゼノンの戦闘力はハルトのように特質しているわけではないが、MEGAMI1のタフさと戦闘が長引けば長引くほど強くなるという性質を持っている。
「ゼノンはアドレナリンが出れば出るほど強くなるのよ。相手からすれば厄介極まりないと思うわ」
そう言うティファの顔は心なしか誇らしそうだ。
「・・・決着、着いたみたいですね」
目の前では鬼灯と邪鬼が息も絶え絶えに片膝をついている。
「くっ、まさか私たちが負けるなんて・・・屍鬼様にどんな顔をすれば」
「あら?あなたたちは今から私たちと一緒にMEGAMI本部へ行くのよ。局長が首を長ーくしてお待ちだから」
ティファはそう言うと拘束具で二人の自由を奪った。恐らくこれから相手方についての尋問が行われるのだろう。
ハルトとゼノンはもういがみ合ったりはしていなかった。
ひとまずはこの戦いはMEGAMI一行の大勝利で幕を閉じたのである。




