第七ステージ 嵐は静かに現れる
那由多らが立ち去って一時間後多くのMEGAMIたちが現世界に舞い立った。
その中にはもちろんリオたちも含まれている。リオたちは地上に降り立つなり変わり果てた現世界の様子を見て唖然とした。
「まじかよ。」
「まさかここまで酷かったとはね。」
ゼノンとティファが口々に落胆をもらす。今もなお至る所で火災や爆発が起こっている。
「とりあえずかたっぱしからバクを討伐してくわよ。ゼノンもリオも気をつけてね。」
二人は神妙な顔つきで頷く。
リオにとってもこの光景はあまりにも残酷すぎた。それと同時に自分の家族たちの安否も気にかかった。しかし今はそんなことを言っている場合ではない。一刻も早く、一匹でも多くのバクを討伐しなければならない。
するとさっそく待ち構えていたかのように三体のバクが現れた。いつもなら一体を三人で倒しているがそんな悠長なことも言ってられないらしい。
「二人とも、一人一体づついくわよ。」
「「了解。」」
ティファの合図と共に三人は空中へ舞い上がり一人一体のノルマを片付けにかかった。幸いなことに普段相手にしてるやつらより程度が低いバクのようだ。簡単にとまではいかないがなんとか討伐出来た。
三体のバクは奇声をあげて倒れこみ、粉塵になって消えていく。
「はぁはぁ、こいつらをずっと相手にしてろなんて無茶言うわね局長も。」
ティファが肩で息をしながら不満を漏らすと三人の前方で一際大きな爆発音がした。急いで前方を向くと無数のバクに囲まれている一人の隊員の姿があった。
「誰かがバクに囲まれてる。」
「行きましょう!」
三人がその隊員を助けに行こうとしたその時だった。隊員を囲んでいたバクたちが一瞬にして粉塵となり消えてしまったのだ。
「どういうことなの・・・。」
呆然と立ちすくむ三人の前方、舞い上がる噴煙の中からよく見覚えのある姿が現れた。
「やぁ、君たちにはよく会うね。もしかして俺の後を付いてきてるとか?」
やはりそんな神業をやってのけるのは一人しかいない。ハルトはいつもの様にニコニコしながら三人の元に近づいた。
「誰がてめぇなんかの後をつけるかよ!気色わりぃ。」
ゼノンがとっさに威嚇をするがそんなものは全く意味を持たないようだった。その時ふっとリオの頭の中にある考えが浮かぶ。
「そうだ、ハルトさんも一緒に行動しませんか?」
そのリオの一言にゼノンとティファの二人は固まり、ハルトからは笑みが解けた。
「リオ!てめぇいきなりなに言ってやがんだ!いくら現世界が破滅しようと中央界が一転しようとこんなやつと一緒に行動できる訳ねぇだろうが!」
ゼノンの物凄い反発に当のリオ本人はきょとんとした顔をしている。彼女にとってはブラックジョークでもなんでもなく心からの言葉だったらしい。
「だって一人よりも二人、三人よりも四人のほうが効率いいし。ハルトさん強いからきっと私たちの助けになるだろうし。駄目ですか?」
あまりにも無垢すぎる答えにティファもため息が漏れる。ゼノンがまたもや反発しようとした時、今度はハルトが意見を述べた。
「うん、俺はいいよ。君の戦うところが間近で見れるだろうし。単細胞君が一緒なのは癪だけどこんな事態だ。今回はそれも我慢しよう。」
「おいてめぇ誰が単細胞だ、言って見ろよコラ。」
一方的にゼノンが火花を散らす。その姿はハルトの眼中に入っていないようだ。
そこにティファがコホンとわざとらしく咳をして入る。
「まぁとにかく、こんな緊急事態だもの仲良くやりましょう。ハルト、あなたの戦闘能力の高さは分かっているわ。ぜひ私たちと戦って頂戴。ゼノン、あんたも今回ばっかりは仲間として認めるのよ、いいわね。」
リーダーの命令は絶対ということもあってゼノンはしぶしぶ承諾した。
「よろしくお願いします、ハルトさん」
「うん、まぁ足を引っ張らないでいてくれればなんでもいいよ。」
相変わらずゼノンは不服なようだがなんとか四人がまとまったところでハルトが話し出した。
「このバクは恐らく何者かによって放たれたものだよ。要するに親玉を叩けばこいつらは消滅する。俺はそいつを探しに行こうと思ってたんだけど君たちも来る?」
一同はその発言に早速面食らったようだった。局長からの指令はあくまでもバクの討伐。だかしかしハルトはそれより先の行動に出ようとしていたのだ。
リオは決定権を持つティファの顔を見つめる。
「・・・局長からの指令はあくまでバクの討伐よ。私たちが勝手に判断して行動するわけにはいかないわ。それに親玉がいるって確証はどこにもないでしょう?」
利害は不一致に終わった。局長の命令は絶対であっていくらハルトの提案であれ背くことなど微塵も考えられないのだ。
「ティファ。」
リオが縋るような目でティファを見る。ティファ自身も今どんな決断を下すべきなのかは分かっていた。しかし感情だけで動いて良いほどリーダーのポジションは甘くない。
「癪だがあいつの言ってることは半分正しいな。ティファ、さっさとその親玉を倒して終わらせようぜ。現世界がなくなっちまう前によぉ。」
ゼノンの言葉にティファは大きなため息をついた。
「わかったわ、局長たちに知られる前にとっとと片付けるわよ。面倒はごめんですからね。」
二人はリーダーの決断に笑みをこぼした。ゼノンは未だふてくされているティファ
の肩に腕を回し笑いかけた。
「おう、お咎めなら四人一緒だ。」
「おい、なんで俺が入ってるんだ。」
ゼノンの提案にハルトは不満を漏らす。
「これからとりあえずは一緒に行動すんだろぉが。しょうがねぇ、仲間に入れてやるよ。」
「俺はお前みたいな弱いやつだけは死んでも仲間だなんて認めないよ。」
「上等だコラ、親玉に行く前にお前からぶっ殺してやる。」
この二人を少しでも放っておけない、静かにリオはそう思うのであった。
そして今ここに嵐のようなチームが発足した。




