第六ステージ 合戦の火蓋は切って落とされた
その一方はすぐさま全MEGAMI討伐隊員に伝わった。もちろんリオたちも例外ではない。
「なんだか物騒なことになってるわねぇ。」
リオ、ティファ、ゼノンの三人は遅ればせながら既に人でいっぱいの会議室に入る。
隊員たちは一つの会議室に招集され今か今かと局長の説明を待っていた。
「へー、討伐隊員ってこんなにいたんですね。」
リオにとって自分たち以外の討伐隊員を見るのは初めてだった。下はメリッサのような幼い子から上はフランドルのようなベテランの人間までさまざまで、皆それぞれに物々しい雰囲気を放っている。
「俺もこんなに集まってんのは初めて見るぜ。そんなだけ大事<おおごと>っつーことだな。」
しばらく黙って待っていると入り口の方が何やら騒がしくなってきた。すると入り口からみるみるうちに人がいなくなっていく。
リオが興味本位でそちらへ視線を向けるとすぐにその理由に納得がいった。
「ハルトさん。」
問題の人物は名前を呼ばれリオに気づくといつもの様ににこやかに微笑んだ。
「やあ。リオも来てたんだね。あいつに呼ばれてしょうがなく来てみたけど・・・何なんだいこの騒ぎは。」
ハルトがあいつと呼んだのはおそらくフランドルのことだ。
滅多にこんな人前に姿を現さないというのに隊員たちはみなハルトを知っているらしい。周囲の人間は触らぬ神に祟りなしの状態で距離を置いている。
「私もよくわかりません。それに初めてこれだけの隊員が集まってるのを見たぐらいですから。あっ、局長だ。始まるみたいですね。」
ノアが壇上に上がると室内はシンッと静まり返った。
「討伐隊のみなさん、本日お集まり頂いたのは他でもありません。先ほど現世界でバクが大量発生し手がつけられない状態に陥っています。原因は只今調査中ですが、自然現象ではないことは明白です。そこでみなさんには現世界へ赴いていただき、調査が終了するまで出来る限りのバクを討伐して頂きたいのです。このままでは現世界の存亡にかかわります。どうかみなさん、よろしくお願いします。」
ノアが簡単に説明すると入れ替わりにフランドルが壇上へと立った。
「諸君、今局長からお話があった通り異例の事態である。長期戦になると思うが耐え忍んで貰いたい。少しの油断が命取りになる、心してかかるように。それでは各チームのリーダーはここへ残り後のものは一時部屋で待機。以上だ。」
その言葉を合図としてチームのリーダー以外はわらわらと会議室から出ていく。
「ノア、ゼノン、今説明があった通りよ。後から呼びに行くからとりあえず部屋で待機していて頂戴。」
ティファの言葉を聞きリオとゼノンはそれぞれに頷くと部屋を後にした。
エレベーターホールではエレベーターを待つ隊員たちが不安そうに囁きあっている。
「ったく、めんどくせぇことになったもんだぜ。」
ゼノンも不満があるらしく腕を頭の後ろで組みながらリオに愚痴をこぼす。
「そんなに大変なことなの?」
しかし当のリオはというと全くことの重大さに気が付いていなかった。中央界に来て半年でこんな事件が起きたのだから無理もないのだが。
「お前なぁ・・・。いいか、フランドルのおっさんは俺たちにいつ終わるか分かんない調査が終わるまでバク相手に戦い続けろって言ってんだぞ。んな体力が持つかよ、はぁ。」
「バクを全部倒せばいいんでしょ?」
リオの一言にゼノンをはじめ周りが一気に凍りつく。すると明らかに場違いな笑い声が聞こえてきた。
「はっはっは。たしかにその通りだ。MEGAMIにもまだこんなに勇敢な女性がいたんだと安心出来る。初めてお目にかかるね、君がリオ・クロディオール君か。私はアウシュレット・フランドル局長補佐官だ。確かに局長が見込んだだけのことはあるな。」
リオの目の前には先ほど壇上に立っていた男が立ちふさがった。周りの隊員たちはそれを見て急いで背筋を伸ばし、緊張気味に敬礼をする。それを見よう見まねでリオも敬礼をしてみた。
「マクディケイド君も相変わらず元気そうだな。今回の件は君にも期待しているぞ。頑張ってくれ。」
「期待に添えるかはわからないっスけどいつも通りやってきます。」
ゼノンは彼なりに精一杯の敬語で答える。それを分かっているかのようにフランドルも頷いた。そうこうしているうちにエレベーターが付き二人はその場を後にした。
「どうなるんだろぉな。」
エレベーター中ゼノンは少し不安そうな声でつぶやく。それは中央界に対することなのか、それともゼノン自身に対することなのかは定かではないが。
リオはその声が聞こえなかったかのように一点を見つめていた。
所代わり現世界。
空には暗雲が立ち込めている。今にも雨が降り出し落雷が起きそうだ。
いくつものビル群が立ち並び、その中でも一際高いビルの上。雲にも手が届きそうな程の建物の上から二つの人影が地上を見下ろしていた。
一人は明るい色の髪をふわふわとなびかせ、妖艶ながらも威圧的な雰囲気を放つすらっとした男。ぱっと見た感じでは水商売をしていそうなイメージを持たれるであろう。その名前を那由多という。
「おぉ、いい眺めだねぇ。世界が破壊されていくってのは。そう思うだろう、エマ。」
那由多の傍らに座るエマと呼ばれた少女は静かに街を見下ろしていた。
地上ではバクたちが暴れ狂い破壊活動が繰り返されている。建物からは火が立ち上り噴煙が俟い、この数時間で地上は見るに耐えれない姿に変わってしまった。人々は目に見えない怪奇現象に手も足も出ず怯え逃げ惑っている。
「さー、そろそろMEGAMIのやつらが動き出す頃だな。エマ、他のやつらはどうなってる?」
「・・・はい、那由多様。全て抜かりなく。」
エマはそうか細い声で囁く。想定通りの答えを聞き那由多は満足そうに頷きその場から消えた。それに続きエマも地上を一瞥しその場から姿を消した。




