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神への階と十五柱の花嫁  作者: 輝夜月愛


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第75話:十色の朝陽と、女神たちの「消えない」約束

【ローレンツ邸 ~神王の寝室~】


最高神ジジイから「お前たちに寿命などない」という最大の安心感を与えられ、ライルは羽が生えたような足取りで自身の寝室の扉を開けた。


今夜だけは、フィリアやサクヤたち五人の「先輩妻」たちは、気を使って別の部屋で休んでくれている。

広大な寝室にある、特注の巨大な天蓋付きベッド。

そこでライルを待っていたのは、薄絹の艶やかなナイトガウンに身を包んだ、十人の美しい花嫁たちだった。


「パパ……。ううん、あなた。遅かったですわね」

長女のベイラが、シーツの上で長い脚を組み替えながら妖艶に微笑む。


圧縮進化によって170センチとなった彼女たちのプロポーションは、暗いランプの灯りの中でも、思わず息を呑むほどに完璧で、艶めかしかった。

金、銀、琥珀、漆黒、星空、真紅、翡翠、純白、瑠璃、紫水晶。

十色の真っ直ぐで美しい髪が、純白のシーツの上に花のように広がっている。


「……待たせてごめん」


ライルがベッドに腰を下ろすと、十人の花嫁たちが甘い香りと共に一斉にすり寄ってきた。

「ふふっ、パパの匂い……大好き」

リーフェが胸元に顔を埋め、ヘスティアーが背中から腕を回す。


神の力を制限するチョーカーはもうない。彼女たちの首にあるのは、ライルの名前が刻まれた愛の証だけ。

不安も、悲劇も、タイムリミットもすべて乗り越えた。

「愛しているよ、みんな」


ライルのその言葉を合図に、部屋のランプがそっと落とされた。

これまでの果てしない戦いの疲れをすべて溶かし尽くすような、甘く、深く、そして最高に満たされた新婚の夜が、静かに更けていった。



【翌朝 ~究極の目覚め~】


チュン、チュン……。

窓の隙間から、爽やかな朝の光が差し込んでくる。


「……んん……」

ライルがゆっくりと目を開けると、視界いっぱいに、信じられないほどの「美」が広がっていた。


右を見れば、無防備な寝顔でライルの腕を抱きしめる銀髪のリーフェ。左を見れば、シーツから艶やかな肩を覗かせてすやすやと眠る真紅の髪のフレイヤ。

十人の絶世の美女たちが、ライルを中心に身を寄せ合い、幸せそうに寝息を立てている。

これぞ男の究極のロマン、という言葉すら陳腐に思えるほどの、圧倒的な朝だった。


ライルが身動きを取ろうとすると、胸元に乗っていた黄金の髪がさらりと揺れた。


「……おはようございます、あなた」

ベイラが、パッチリと目を覚まし、ライルの胸元に顎を乗せて上目遣いで微笑んだ。


「おはよう、ベイラ。……昨日は、最高だったよ」

「ふふっ。私もですわ。私たち、やっと本当の夫婦になれたのですね」


ベイラの声で、他の九人も「んぅ……パパ、おはよう……」と次々に目をこすりながら起き上がってきた。


「パパ、朝のキスして……」とアフロディテが唇を寄せ、ヘカッテがライルの頬を撫でる。

朝から限界突破の甘やかさに、ライルが照れ笑いを浮かべていると、不意にヘスティアーが、真剣な、それでいて期待に満ちた瞳でライルの顔を覗き込んできた。


「ねえ、パパ」


「ん? どうした、ヘスティアー」


「パパは……私たちとの子供、何人欲しい?」



【トラウマと、笑顔の特効薬】


その一言を聞いた瞬間。

ライルの心臓が、ドクンッ! と嫌な音を立てて跳ねた。


(子供……)


ライルの脳裏に、かつての光景がフラッシュバックする。

それは、サクヤが自身の命を削って子供を産み落とし、その神体(存在)が光となって消えかけた、あの血の気が引くような絶望の記憶。

神や精霊といった上位存在が、新たな命を生み出すために莫大な神気を使い果たし、代償として消滅してしまうという世界のルール


ライルの顔から、サッと血の気が引いた。


(ベイラたちに子供ができたら……サクヤの時のように、消えてしまうんじゃないのか……?)


命に代えてでも守り抜くと誓った、十人の愛する妻。

もし彼女たちが、子供を産むことでこの世界から消えてしまうのなら、そんな悲劇は絶対に耐えられない。


「パパ……? どうしたの、顔が青いよ?」

純白の髪のニーケが、心配そうにライルの頬に触れる。


「あ、いや……その。子供は、すごく欲しいけど……でも……」

ライルは、震える声で本音を絞り出した。

「君たちが、消えちゃわないか……怖いんだ。サクヤの時みたいに、君たちまでいなくなってしまったら、僕は……」


ライルが言い終わる前に。


「あははははっ!!」


十人の女神たちが、一斉にベッドの上で吹き出した。


「えっ……?」


「もう、パパったら! サクヤお義母様ママの時のトラウマを引きずりすぎですわ!」

ベイラが、涙目になるほど笑いながら、ライルの鼻の頭をツンッと指先で突いた。


「き、消えないわよ!」

ヘスティアーも、シーツを引き寄せながら満面の笑みでライルの顔を覗き込む。

「あのねパパ。私たちが、どうしてダンジョンの底で190センチから170センチに『圧縮進化』したと思ってるの?」


「え……?」

ライルが目を瞬かせると、ヘカッテが誇らしげに胸を張った。


「パパ(最高神)がくれたあの進化はね、ただ見た目を可愛くするためだけじゃないの。

余った質量と神気を、私たちの体の内側に『命を創り出すための絶対的な器(マナの永久機関)』として作り変えてくれたのよ!」


「そうよ。だから、子供を何十人産んだって、私たちの神気が枯渇して消えるなんてことは、絶対にあり得ないの!」

リーフェが、ライルの首にギュッと抱きつきながら耳元で囁く。


「なっ……」


ライルは、呆然と十人の顔を見回した。

昨夜の「寿命がない」という衝撃に続き、またしても最高神ジジイの周到なサプライズ(システム改修)に、完全に一本取られてしまったのだ。


「……そっか。消えないのか……本当に」


「ええ。絶対に消えませんわ。だから……パパの子供、いっぱい産ませてくださいね?」

ベイラが、極上の色香を漂わせながら、再びライルの唇を塞いだ。


安心感と、幸福感。

すべての不安を笑い飛ばしてくれた彼女たちの明るい笑顔に、ライルは今度こそ、心からの安堵の涙を零しそうになりながら、十人の妻たちを強く、強く抱きしめ返した。


消えない命。消えない愛。

これからはただ前だけを向いて、賑やかすぎる家族たちと共に、新しい命を育んでいけばいい。


最高の朝陽に照らされた寝室には、神王と女神たちの、底抜けに明るく甘い笑い声がいつまでも響き渡っていた。


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