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神への階と十五柱の花嫁  作者: 輝夜月愛


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第72話:卒業の証と、十柱の花嫁との永遠の誓い

【王立学園 ~新たなる出立の時~】


帝都近郊の大迷宮を踏破し、地上への凱旋を果たした翌日。

王立学園の大講堂は、厳粛でありながらも、温かな感動の空気に包まれていた。


ステンドグラスから差し込む春の陽光の中、最高学年の生徒たちが整列している。

その最前列に立つ十人の少女たちが名前を呼ばれ、壇上へと進み出た。


「ベイラ、リーフェ、ヘスティアー、ヘカッテ、アフロディテ……」


教頭が震える声で卒業証書を読み上げる。

壇上に上がった彼女たちの姿に、講堂にいるすべての者が息を呑んだ。

身長は170センチメートル。かつての規格外の威圧感は消え、代わりにそこにあるのは、息が止まるほどに完成された『至高の女性美』だった。

純白のウェディング・アーマーに身を包み、引き締まった腰から伸びる完璧な脚線美。そして首元には、未知の金属と宝石で作られた『愛のチョーカー』が輝いている。


来賓席の最前列で、ライルは言葉を失っていた。

(……綺麗だ。本当に……大人の女性になったんだな)


「パパ……」

証書を受け取ったベイラが、壇上からライルを見つめ、花が咲くように柔らかく微笑んだ。

それはもう「保護者を慕う子供の顔」ではない。過酷な試練を乗り越え、自分の足で立ち、愛する人の隣を歩く覚悟を決めた「ひとりの伴侶」としての気高い微笑みだった。


「……以上をもって、卒業を認める!」


その宣言と共に、講堂は割れんばかりの拍手に包まれた。

マリーやレオたち、共に死線を潜り抜けたクラスメイトたちが、涙を流しながら立ち上がり、彼女たちに向けて惜しみない喝采を送っていた。



【大聖堂 ~戦友たちに見守られて~】


卒業式の感動も冷めやらぬまま、舞台は学園の隣にそびえ立つ王立大聖堂へと移された。

王族や貴族ではなく、十人の女神たちが「絶対に参列してほしい」と望んだゲスト――それは、迷宮の第九十九層までを共に戦い抜いた、レオやマリーたちクラスメイトだった。


荘厳なパイプオルガンの旋律が響き渡る。

祭壇の前には、純白の王装を纏った神王・ライルが立っていた。


大扉が開き、十人の花嫁が入場してくる。

金、銀、琥珀、漆黒、星空、真紅、翡翠、純白、瑠璃、紫水晶。

十色のストレートロングの髪がヴェール越しに透け、彼女たちが祭壇へと進むたび、純白のアーマーが擦れる微かな音が聖堂に響く。


最前列の参列席で、マリーが両手で口を覆って静かに泣いていた。

レオも、クラスメイトの男子たちも、目を真っ赤にしている。

迷宮の泥の中で、血を流し、互いに背中を預け合った戦友。あんなにも泥臭く戦った彼女たちが今、世界で一番美しい花嫁となって、愛する人の元へ歩いていく。その光景が、たまらなく誇らしかったのだ。



【誓いの口づけ ~永遠の愛~】


十人の花嫁が、ライルの目の前に並び立った。

170センチの彼女たちと、ライルの視線が、完璧な高さで交差する。


「……待たせたな」

ライルの声は、微かに震えていた。


「いいえ。……私たち、パパの隣に立つために、いっぱい頑張ってきましたわ」

ベイラが、ヴェール越しに潤んだ瞳で微笑む。


「ああ。レオたちから聞いたよ。魔力が通じない壁の前でも、決して諦めなかったって。……僕の自慢の娘たちだ。いや……」


ライルは、一歩前へ踏み出した。


「今日からは、僕の自慢の『妻』たちだ」


ライルが、そっとベイラのヴェールを上げる。

黄金の髪がこぼれ落ち、長い睫毛が伏せられた。

ライルの大きな手が、ベイラの滑らかな頬を包み込む。彼女の首元で、ライルの名前が刻まれたハートのリングが小さく揺れた。


「愛してる、ベイラ」

「……私も。永遠に、あなただけを」


重なり合う唇。

それは、かつてのおでこや頬へのキスとは違う。一人の男と女として、魂の奥底までを共有する、深く、静かで、熱を帯びた『誓いの口づけ』だった。

ベイラの目から、一粒の涙がこぼれ落ち、ライルの指を濡らす。


唇を離し、ライルは隣のリーフェの前に立った。

銀色の瞳が、切なげにライルを見上げる。

「……ずっと、この日を夢見てた」

「叶えるのが遅くなってごめん。これからはずっと一緒だ」

リーフェの細い腰を引き寄せ、その柔らかい唇を塞ぐ。リーフェの腕が、ライルの背中にギュッと回された。


続いて、琥珀色の瞳を熱く濡らすヘスティアー。

「パパ……ううん、あなた。……んっ」

背伸びをしたヘスティアーの唇を、ライルが優しく受け止める。


漆黒のヘカッテ、星空のアフロディテ、真紅のフレイヤ、翡翠のユリィナ、純白のニーケ、瑠璃のファリナ、紫水晶のノア。

ライルは一人一人と真っ直ぐに向き合い、その瞳の色を、髪の香りを、そしてこれまでの果てしない旅路を噛み締めるように、十回の口づけを交わした。


全員のヴェールが上げられ、十色の花嫁たちが、最高に幸せな涙を流しながらライルを囲む。


彼女たちはもう、何でも一瞬で壊してしまう暴力的な神ではない。

愛を知り、痛みを学び、仲間と手を取り合うことを知った、この世界で最も気高く、美しい伴侶たちだ。


「……ライル公爵。並びに、十柱の女神よ。ここに、永遠の婚姻の成立を宣言する!」


神父の宣言と共に、大聖堂の鐘が一斉に鳴り響いた。

マリーやレオたちクラスメイト、そしてサクヤやフィリアたち「先輩の妻」たちから、割れんばかりの拍手と祝福のフラワーシャワーが降り注ぐ。


舞い散る花びらの中。

ライルは十人の花嫁たちの手をしっかりと握りしめ、かつてないほどの確かな温もりと、永遠に続く幸せの重みを、その胸に深く刻み込むのだった。


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