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神への階と十五柱の花嫁  作者: 輝夜月愛


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第71話:死闘の果てに砕けた首輪と、愛が刻まれた究極の花嫁

【第九十九層 ~絶対なる神の巨兵~】


第九十九層、最下層ボス部屋。

そこは、星空のような宇宙空間が広がる、広大な神の領域だった。

そして中央に鎮座するのは、最高神が作り上げた究極の試練――六つの光背を持ち、神の威圧感を放つ黄金の巨人、『神造巨兵・アストラル・デミウルゴス』。


「……はぁっ、はぁっ……!」

長女のベイラが、血に濡れた床に膝をつき、激しく咳き込んだ。


戦闘開始から、どれほどの時間が経っただろうか。

圧倒的、いや、理不尽という言葉すら生ぬるい強さだった。

巨兵の放つ『神罰の光線』は、女神たちが十人がかりで張った防御結界をいとも容易く貫通し、さらに巨兵の装甲は、覚醒したばかりの「極細糸(魔法)」も「神格体術(物理)」も一切寄せ付けない『絶対反射』の性質を持っていた。


「が、はぁっ……!」

前衛で囮になっていたレオが、巨人の裏拳を食らい、壁際まで吹き飛ばされて動かなくなった。


「レオ君! 嫌っ、みんな、もう立たないで……ッ!」

銀髪のリーフェが悲痛な叫びを上げる。

一般生徒たちは、すでに全身の骨が砕け、意識を保つことすら奇跡のような状態だった。


十人の女神たちも、かつてない『瀕死の重傷』を負っていた。

黄金の髪は泥と血で汚れ、純白のドレスはボロボロに引き裂かれている。

真紅の髪のフレイヤは右腕の骨を砕かれてだらりと下げ、漆黒のヘカッテは腹部を深くえぐられ、純白のニーケが必死に治癒魔法をかけるが、傷の再生がまったく追いつかない。


「……ここまで、なの……?」

琥珀色の髪のヘスティアーが、霞む視界で巨人を見上げた。


制限された魔力。通じない物理攻撃。傷だらけの仲間たち。

パパに守られていた頃には決して味わうことのなかった、「死」という絶対的な恐怖と絶望が、彼女たちの心を黒く塗り潰そうとしていた。


巨人が、無慈悲に巨大な黄金の剣を振り上げる。

標的は、膝をついたまま動けないベイラとリーフェだ。


(……ごめんなさい、パパ)


ベイラが、ギュッと瞳を閉じた、その瞬間。


「……諦めるなァァァッ!!」


血だらけのマリーが、折れた槍の柄を握りしめ、ベイラの前に立ち塞がった。

マリーだけではない。倒れていたはずの一般生徒たちが、互いの体を支え合いながら、ボロボロの武器を構えて巨人の前に壁となって並び立ったのだ。


「マリーさん! ダメ、逃げてッ!!」


「逃げない! 俺たちは、最高のパーティーだろッ!」

血反吐を吐きながらレオが叫ぶ。

巨人の剣が振り下ろされる。生徒たちが必死に掲げた盾や武器が、紙くずのように砕け散り、彼らの体が一斉に宙を舞った。


だが、彼らが命を賭けて稼いだ『数秒』。

それが、絶望に沈みかけていた女神たちの魂に、爆発的な炎を点火させた。



【極致の総力戦 ~命を燃やす最後の一撃~】


(……みんなが、命を懸けて繋いでくれた。なら、私たちがここで諦めるなんて、絶対に許されないッ!!)


「……立つわよ、みんなッ!!」

ベイラが、砕けた足の骨を無理やり魔力で固定し、血を吐きながら立ち上がった。

他の九人も、限界を超えた体に鞭を打ち、折れた腕を、裂けた腹を庇いながら、巨兵を睨みつける。


「絶対反射の装甲なら……それを超える『一点集中』で、貫くッ!」


ベイラの叫びに、十人の女神たちの瞳がかつてないほどの鋭い光を放った。

「極細糸(魔法)」と「神格体術(物理)」。二つの覚醒スキルを、さらに融合させる。

十人は、己の残された生命力(命の炎)を魔力に変換し、それを極限まで圧縮した『目に見えないほどの極細の刃』にして、自身の「手刀」や「足先」に直接纏わせたのだ。


「いくわよぉぉぉぉッ!!」


フレイヤとユリィナが自らの背中を『踏み台』として差し出し、ベイラたちがそれを蹴って宇宙空間のような天井へと跳躍する。

迫り来る巨兵の四本の腕を、空中でヘカッテとアフロディテが神格体術の回し蹴りで強引に弾き飛ばす。


「これで……ッ!」

「「「最後よぉぉぉぉッ!!!」」」


十人全員の、文字通り最後の一滴までの命と神気を乗せた、流星のような物理と魔法の融合打撃。

それが、神造巨兵の胸のコアへと、寸分の狂いもなく同時着弾した。


ピキッ……。

十人の命を燃やした極細の刃が、絶対反射の装甲をミリ単位で貫通し、内部のコアを完全に捉えた。


カァァァァァァァンッ!!!

巨人のコアに致命的な亀裂が走り、次の瞬間、太陽が爆発したかのような光と共に、神の巨兵は完全に崩壊し、光の塵となって消え去った。



【砕け散った首輪と、究極の進化】


「……たお、し……た……」


ベイラが地面に崩れ落ちた。十人全員が、指一本動かせない。

激闘を終えた、死のような静寂。


パリンッ。


その時、乾いた音が地下空間に響いた。

ベイラの首元で輝いていた『愛のチョーカー』。ライルから贈られた大切な宝物が、極限の死闘による魔力負荷に耐えきれず、ヒビ割れて霧散してしまったのだ。


「え……?」

ベイラだけではない。十人全員の首から、チョーカーが砕け散って消えた。


「嘘……パパからの、初めてのプレゼントが……!」

「嫌だ、嫌ッ! パパとの繋がりが……ッ!」


絶望が彼女たちを襲いかけた、その瞬間。

巨兵が消滅した跡地から、神々しい光を放つ『巨大な黄金の宝箱』がせり上がってきた。


「……卒業試験の、クリア報酬……」

ベイラは震える手で涙を拭い、妹たちと共に宝箱の蓋に手をかけ――ゆっくりと開け放った。


ドクンッ。


宝箱から溢れ出した圧倒的な光が、広間に倒れる全員を包み込む。

その光は、瀕死だった生徒たちの傷を一瞬で癒やし、そして十人の女神たちの肉体に『劇的な変化(圧縮進化)』をもたらした。


身長190センチメートルあった長身が、光の粒子を伴いながら、キュッと**『170センチメートル』へと圧縮されていく。

しかし、ただ縮んだのではない。失われた20センチ分の質量と神気は、すべて女性としての『圧倒的な艶めかしさ』と『プロポーションの巨大化』**へと全振りされた。

血と泥にまみれていたドレスは、気高さと圧倒的な色香を併せ持つ『純白のウェディング・アーマー』へと編み直されていく。



【クラスメイトとの歓声と、新たな愛の証】


「……んん……あれ、傷が治って……」

光が収まり、気絶していたレオやマリーたち一般生徒が目を覚ました。

彼らの身を包んでいたボロボロの制服や防具も、宝箱の力によって、立派な「上級騎士の鎧」や「高位魔導師のローブ」へと変化していた。


「すげえ! 俺の剣、ミスリル製になってるぞ!」

「私のも! これ、王宮騎士が着るような凄く綺麗な鎧……!」


生徒たちが自分たちの真新しい卒業衣装にはしゃぐ中、マリーがふと前を見て、言葉を失った。


「べ、ベイラ様……? 皆さん……嘘、ですよね?」


マリーの声に釣られ、クラスメイト全員が十人の女神たちを振り返り――全員が、ポカンと口を開けて固まった。


「……あ、あら? 私たち、なんだか視線が少し低くなったような……」

銀髪のリーフェが、自身の両手を見つめて不思議そうに首を傾げる。


「身長が縮んでますわ! でも、その代わり……っ」

真紅の髪のフレイヤが、自身の胸元を見て顔を真っ赤にした。

ウェディング・アーマーの胸元は、以前の190センチ時代よりもさらに豊満に、はち切れんばかりの圧倒的なボリュームへと成長し、腰のくびれはより艶めかしく引き締まっていた。


「す、すっげぇ……」

男子生徒たちが、あまりの「美の暴力と色香」に顔を真っ赤にして視線を逸らす。


「ちょ、ちょっと皆! 凄すぎます! 絶世の美女ってレベルじゃありませんよ! しかもそのドレス……すごく綺麗!」

マリーが興奮気味に駆け寄り、ベイラの手を握る。


「ありがとう、マリーさん。マリーさんの騎士の鎧も、すごく似合っていて素敵よ」

ベイラが優しく微笑むと、その完璧な笑顔の破壊力にマリーまで赤面してしまった。


「でも、背が縮んだのには驚いたわ。……あ、見て! アフロディテのドレス、星空の刺繍が入ってて可愛い!」

「ヘスティアーお姉様のアーマーも、動きやすそうでかっこいいですわ!」


姉妹同士でぐるぐると回りながら、お互いの劇的な変化と新しい衣装を褒め合う女神たち。

その時、漆黒の髪のヘカッテが、ふとベイラの首元を指差した。


「お姉様……首。チョーカーが、新しくなってますわ」


「えっ……?」

ベイラが首元に触れる。

霧散したはずの首輪に代わり、そこには、未知の美しい金属で精巧に作られた『真新しいチョーカー』が輝いていた。

正面には、彼女の髪と同じ黄金の特大の宝石。

そしてその下には、小さな『ハート形のリング』が揺れていた。


リーフェも、ヘスティアーも、十人全員の首に、それぞれの瞳の色をした宝石とハートのリングが着けられていた。


「これ……リングに、何か文字が刻まれてる」

ベイラが、ハートのリングをそっと指先で摘まむ。


そこには、流麗な筆記体で、はっきりと刻まれていた。


**『 L Y L E (ライル)』**と。


「パパの……名前……っ」

ヘスティアーの大きな瞳から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。

それが意味するものを、彼女たちはすぐに理解した。

魔力を制限するための道具ではない。これは、過酷な試練を乗り越え、真のレディー(伴侶)として成長した彼女たちに贈られた、パパからの**『永遠の愛と、所有の証明』**なのだ。


「ふふっ……ずるいですわ、パパ。こんな最高のものを用意して待ってるなんて」

アフロディテが、ハートのリングを両手で大切に包み込み、頬ずりをする。


「やったな、みんな! 最高の卒業試験クリアだ!!」

レオが拳を突き上げると、第九十九層の巨大な広間に、生徒たちと女神たちの割れんばかりの歓声と、嬉し泣きの声が響き渡った。


泥にまみれ、何度も絶望し、それでも互いを信じて掴み取った勝利と成長。

究極の花嫁衣裳と愛の証を手に入れた十人のレディーたちは、最高の仲間たちと共に、眩しい光が差し込む地上へと凱旋の歩みを進めるのだった。


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