第52話:最強のお留守番部隊と、崩壊する現代日本への帰還
【いざ、次元の彼方(現代日本)へ】
(※お留守番部隊への引き継ぎシーンは前回同様)
屋敷の中庭に出ると、そこにはすでに「出陣」の準備を整えた十人の娘たちが整列していた。
身長190センチメートル、股下110センチの圧倒的に長く美しい脚。全員が眉目秀麗、八頭身の完璧なプロポーションを、戦うための美しく洗練されたドレスアーマーで包み、ストレートロングの髪をなびかせている。
「みんな、遠足じゃないんだぞ。
向こうは僕の故郷……魔法なんてない、ただの『現代日本』って国だ」
ライルは自身の胸の奥、同化した最高神の力を引き出し、虚空に向かって黄金の剣を振り下ろした。
ガギィィィィンッ!!
空間がガラスのように砕け散り、「次元の座標」への巨大なゲートが開く。
「さあ、帰ろうか。僕たちの故郷へ」
ライルを先頭に、サクヤ、四人の妻、そして十人の規格外の女神たちが、光のゲートへと足を踏み入れた。
◇
【到着:魔都と化した現代トーキョー】
光が収まり、ライルたちが降り立った足元には、土ではなく、硬い「アスファルト」があった。
「……ここは」
ライルは息を呑んだ。
天を突くようなガラス張りの高層ビル群、ひしゃげた大型のデジタルサイネージ、乗り捨てられたハイブリッドカーや路線バス。地面には、持ち主を失って画面の割れたスマートフォンが無数に転がっている。
間違いなく、ライルが事故に遭って転生する直前まで生きていた「現代の日本」だった。
だが、街はまるでパニック映画のように徹底的に破壊されていた。
ビルは半壊して黒煙を上げ、空は不気味な赤紫色に淀んでいる。
「……パパ。なんだか高い塔がたくさんありますけれど、ここは本当にパパの故郷なのですか?」
長女のベイラが、横転したパトカーを不思議そうに長い指でツンツンと突く。
「ああ。でも、こんな廃墟じゃなかった。もっと平和で……」
その時だった。
グルルルォォォォォッ!!
地響きと共に、アスファルトを砕いて現れたのは、赤黒い瘴気を纏った巨大な魔獣の群れだった。
ライルが転生後の世界で戦ってきたような、凶悪なAランク指定の魔獣たちだ。
「なっ!? どうして現代の日本に魔獣がいるんだ!?」
ライルが剣を抜く。
その疑問に答えたのは、ライルの内に宿る『転生後の最高神』だった。
『……ライルよ。お前がこの世界から、四柱の女神の概念を引き抜いたからだ。
女神という柱を失ったことで、この地球(日本)を覆っていた次元の結界が破裂した。その次元の亀裂から、あちこちの異世界の魔物や瘴気が現代に漏れ出し、パニックを引き起こしておるのだ』
「……つまり、この怪獣映画みたいな惨状は、全部僕のせいってことか!?」
ライルは頭を抱えた。
家族を救うための行動が、結果として故郷の現代日本を「魔界と繋がるゲート」に変えてしまっていたのだ。銃火器などまるで通用しない化け物たちに対し、現代の兵器では成す術もないだろう。
「主さま! 敵が来ます!」
サクヤが桜色の神気を展開しようとした、その瞬間。
「ママは下がっていて! 産後なんだから無理しちゃダメ!」
三女のヘスティアーが、長い脚で軽やかに前へ飛び出した。
魔法も知らない、銃すらも効かない化け物の群れを前に、逃げ惑うしかなかった現代社会。
しかし、彼女たちにとっては「ただの的」でしかなかった。
「パパの故郷を荒らす害虫は、あたしが燃やしてあげる。
……《白炎・神滅の息吹》」
ゴォォォォォォォォォッ!!!
ヘスティアーから放たれた白い炎が、崩壊したスクランブル交差点を舐めるように広がる。
それは周囲のビル群を一切傷つけることなく、魔獣という存在の概念だけを「浄化」する神の炎。
悲鳴を上げる間もなく、数百頭の凶悪な魔獣たちは、一瞬にしてチリ一つ残さず蒸発し、消滅した。
ついでに、赤紫色に淀んでいた上空の瘴気雲すらも、熱波で吹き飛んで青空が顔を出した。
「……ふぅ。ちょっとスッキリした!」
ヘスティアーが、琥珀色の長い髪をかき上げながらニカッと笑う。
「……相変わらず、容赦ない火力だな」
ライルが冷や汗を拭う。
「さあ、パパ。私たち、どこからお掃除しましょうか?」
リーフェが微笑み、他の娘たちもやる気満々で拳を鳴らしている。
ライルは、アスファルトの匂いと風を感じながら、不敵に笑った。
自分の引き起こしたバグなら、自分で落とし前をつけるしかない。
「そうだな。まずは、次元の亀裂から漏れ出た魔物を片付けながら、歪みの中心を探そう。
……最強のローレンツ家の力、この現代の日本にも存分に見せつけてやろうぜ!」
「「「おーっ!!」」」
身長190センチの麗しき女神軍団の無邪気な勝鬨が、現代日本の空に響き渡った。




