表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神への階と十五柱の花嫁  作者: 輝夜月愛


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
49/89

第49話:孤独な玉座と、神が涙した人間(ライル)の覚悟

【崩壊した天界 ~最高神の玉座~】


かつて、地上のすべてを管理していた荘厳な天界。

光も水も風も失われ、黄昏のように薄暗くなった廃墟の最奥で、**『最高神』**は一人、静かに目を閉じていた。


その背中はどこか小さく、長い年月を孤独に耐え抜いてきた老人のような、深い疲労と哀愁が漂っていた。


ゴオォォォォン……ッ!!


重く閉ざされていた天界の扉が、物理的に粉砕された。

舞い散る光の粉塵の中から現れたのは、黄金のオーラを纏ったライル。

そしてその後ろには、身長190センチ、股下110センチの完璧なプロポーションと、美しいストレートロングの髪をなびかせる五人の絶世の女神(娘)たちだった。


「……何の用だ、人間よ」


最高神は玉座から立ち上がることなく、静かに、しかし世界を圧するような威厳を持って問いかけた。


「これ以上、この空っぽの天界から何を奪う気だ?

魔法も、水も、光も、風も……ワシのヘラであった魂すらも、すべてお前の家族として地上に降りてしまった。……ここにはもう、お前に与えるものなど何もないぞ」


その声には、怒りよりも深い諦観と、底知れぬ寂しさが滲んでいた。


ライルは剣を鞘に収め、まっすぐに最高神を見据えて一歩前に出た。


「奪いに来たんじゃない。……頼みがあって来た」



【神の理と、人間のエゴ】


ライルは、サクヤが新しい命と引き換えに消滅しようとしていること、そして家族の寿命の格差について、包み隠さず語った。


「サクヤを救い、フィリアたち人間の妻にも永遠の命を与えて、家族全員で生きていきたい。

そのためには、枯渇したこの世界のルールそのものを書き換える必要がある。……最高神、あんたの権限と力が必要なんだ」


最高神は、ゆっくりと首を振った。


「無茶を言うな。……ワシとて、神界のシステムそのものだ。

『新しい命(魂)を生み出すには、同等の神格を消費する』。それは等価交換という絶対の宇宙の法則。ワシ個人の感情でどうにかなるものではない。

それに……永遠の命だと? 人間が神の領域を欲するなど、ただの傲慢なエゴに過ぎん」


「エゴで結構だ!」


ライルが一喝する。


「愛する妻を失いたくない。子供を抱きしめたい。家族とずっと一緒にいたい。

それがエゴだと言うなら、僕は喜んで世界一の傲慢な男になる!

……最高神。あんただって、本当は分かってるはずだろ?」


ライルの鋭い言葉に、最高神の肩がビクリと揺れた。


「あんたは、この世界を愛していた。

地上を見守り、神々という『家族』を愛していたからこそ……みんなが地上に降りてしまっても、たった一人でこの玉座に残り、崩れゆくシステムを最期まで支えようとしていたんじゃないのか?」


図星だった。

最高神は、神々が去ったことを恨んではいなかった。ただ、自らが創り上げたシステムが限界を迎え、家族が離れ離れになってしまった己の不甲斐なさを、この孤独な玉座で何万回も悔やみ続けていたのだ。


「……ワシは、失敗したのだ」


最高神が、ポツリとこぼした。

その声は、神ではなく、一人の不器用な父親のようだった。


「ワシには、すべてを縛り付けることしかできなかった。

……ライルよ。お前とワシが『同化』すれば、システムへの干渉は可能かもしれん。だが、それはワシという『個』の消滅を意味する。

それに、世界を背負う重圧は、人間の魂など一瞬で押し潰すぞ。……お前に、その覚悟があるのか?」


ライルは少しも迷わず、真っ直ぐに最高神の目を見た。


「ある。……それに、あんたは消滅しない」


「なに……?」


「僕と同化するんだ。あんたの魂は、僕の魂の中で生き続ける。

玉座に縛り付けられて世界を見下ろすんじゃなく……僕の目を通して、地上で笑う元・神々たち(家族)の姿を、一番近くで見守ればいい」


娘のベイラが、長い髪をかき上げて優しく微笑んだ。

「そうですわ。ノア(元・最高神の妻)も、今は私たちの可愛い妹として、毎日元気に遊んでおりますのよ。……お爺様も、一緒に来ませんか?」


「お前たち……」


最高神の瞳から、ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちた。

孤独だった。ずっと、誰かに手を引いてほしかった。

自らが縛られていた「最高神」という孤独な役割から、この不敵で愛情深い人間の青年が、力ずくで救い出そうとしてくれている。


「……ふっ、はははっ!

人間ごときが、このワシを慰め、救済しようなどと……本当に、とんでもない男だ」


最高神は玉座から立ち上がり、涙を拭って、どこか晴れやかな顔でライルに手を差し出した。


「よかろう。ワシのすべてを、お前に託す。

ライル・フォン・ローレンツよ! お前のその『傲慢な愛』で、この壊れかけた世界を、もう一度創り直してみせよ!!」


ライルは力強く頷き、最高神の手をガッチリと握り返した。


カァァァァァァッ……!!!


最高神の体がまばゆい光となり、ライルの胸の奥深くへと溶け込んでいく。

重圧は凄まじかった。だが、ライルは歯を食いしばり、娘たちの支えを受けながら、そのすべてを自身の「幸運」の器で受け止めた。

二つの魂が完全に融合し、ライルは**『新世界の神王』**へと至った。



【異世界の女神召喚と、新システムの構築】


「……力が、満ちてくる。ありがとう、最高神(相棒)」


ライルの魂の奥で、『うむ、任せたぞ』という温かい声が響いた気がした。


神王となったライルは、両手を虚空にかざした。

狙うのは、サクヤの故郷である「別の異世界」。


「開け……次元のゲート!!」


空間が裂け、光の道が繋がる。

ライルは、サクヤの故郷の神界から、純粋な「女神の神格(エネルギー概念)」を四つ、こちらの世界へと引き寄せた。


「パパ! これを、ママたち(妃)に……!」

娘たちが祈りを捧げる。


「ああ! 届けェェェッ!!」


ライルが放った四つの神格は、光の流星となって地上へ降り注ぎ、ローレンツ邸で眠るフィリア(人)、セレナ(エルフ)、ミア(獣人)、アナスタシア(魔族)の胸にそれぞれ宿った。

これにより、四人の妻は「神王の眷属(新たな女神)」へと進化を遂げる。

種族の寿命という枷は外れ、誰もが同じ永遠の時を歩めるようになったのだ。


「……そして、最後はサクヤ!」


ライルは、新世界のシステムを構築し直す。

最高神の権限を使い、『女神が命を産めば消滅する』という旧時代のルールを完全に書き換え、『世界の外側からエネルギーを循環させる』新たなルールを定着させた。


『システム・アップデート完了』


神界の跡地に、温かく、命の息吹に満ちた新しい風が吹き抜けた。


「……終わった。全部、守り抜いたぞ」

ライルが安堵の息を吐き、膝をつく。


「パパ! かっこよかったですわ!」

「さすが、私たちのパパ!」

190センチの美しい娘たちが、歓声を上げてライルに抱きつく。


ライルの胸の奥底では、もう孤独ではない元・最高神が、その温もりに包まれて静かに微笑んでいた。


こうして、愛する妻の消滅と、家族の別離という残酷な運命は、ライルの決意と最高神の「人間らしい」譲渡によって完全に打ち砕かれた。

いよいよ次回、真の幸せを手にした家族が迎える、サクヤとの「普通の子供」の誕生編へと続きます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ