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神への階と十五柱の花嫁  作者: 輝夜月愛


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第45話:女神たちの帰省と、ローレンツ家・夏の陣(パパ争奪戦)

【ローレンツ領・真夏の正門前】


王立学園が夏季休暇に入ったある日の午後。

ローレンツ公爵邸の前に、王家の紋章が入った豪奢な馬車が到着した(※学園側が「女神たちを歩かせるわけにはいかない」と気を利かせた特別車である)。


馬車の扉が開き、降り注ぐ真夏の太陽の下に、五つの影が降り立った。


「パパーッ! 帰ってきたよー!」


馬車から飛び出してきたのは、琥珀色の瞳を輝かせるヘスティアーだ。

身長190センチメートル。その半分以上を占める股下110センチの圧倒的に長い脚が、軽やかに地面を蹴る。

それに続いて、金、銀、琥珀、漆黒、星空のストレートロングの髪を風になびかせた五人の絶世の美女たち(ベイラ、リーフェ、ヘスティアー、ヘカッテ、アフロディテ)が、ランウェイを歩くトップモデルのような優雅さで降り立った。


「おお、みんな! 無事に……うおっ!?」


出迎えに出たライルが両手を広げた瞬間、五人の規格外のナイスバディーが、一斉に彼に向かってダイブした。


「パパ、寂しかったですわ!」

「パパー! ぎゅーってして!」

「……パパ成分、補給完了」


「ぐはぁっ!」


ライルは、神々しいフローラルな香りと、五人分の「完璧なプロポーション」による物理的な圧力に押し潰され、芝生の上で完全に埋没した。

身長190センチの女神五人に絡みつかれると、大柄なライルでさえ、巨大な美しい花の群れに飲み込まれた蝶のようだった。


「こらこら、お前たち。……重くはないが、少し離れなさい。パパの息が止まる」


ライルが苦笑しながら身を起こそうとするが、彼女たちの長くて美しい手足がタコのように絡みついて離れない。


「いいえ、離れませんわ! 学園の男たちは皆、私たちの顔を見るだけで気絶するか土下座するばかりで、ちっとも面白くありませんでしたのよ!」

ベイラがライルの腕に豊かな胸を押し当てながら、頬をすりすりする。


「そうそう! やっぱりパパの隣が一番落ち着くの!」

アフロディテが星空のような髪を揺らして、ライルの膝の上に(長い脚を持て余しながら)座り込む。


娘たちの猛烈なスキンシップに、ライルの理性が限界を迎えそうになった――その時である。


「……あらあら。帰ってきて早々、随分と元気なことですね」


背後から、絶対零度より冷たく、そして優雅な声が響いた。

ピタリと、娘たちの動きが止まる。


屋敷の玄関に立っていたのは、桜色の薄絹を纏ったサクヤを筆頭とする、五人の妻(母親)たちだった。



【勃発:母と娘の仁義なき戦い】


「ママ……」

娘たちが、ススッとライルから少しだけ距離を置く。


サクヤは優雅な足取りでライルに近づくと、その襟元を直しながら、流し目で娘たちを見た。


「学園で少しは『大人のレディ』の嗜みを学んできたかと思えば……相変わらず主さまにべったりですね。

その美しく育った体に免じて、今回だけは大目に見てあげますけれど」


「むっ……。ママだって、いつもパパを独り占めしてるじゃない!」

ヘスティアーが口を尖らせる。


「独り占め? ふふっ。私たちは『妻』ですから、当然の権利ですわ」

サクヤが、ライルの腕にそっと自分の腕を絡め、勝利の笑みを浮かべる。


これに火がついたのが、娘たちだった。


「権利なら、私たちにもありますわ! パパの魂から生まれた『娘』という絶対的な絆が!」

ベイラが立ち上がり、自身の黄金のストレートロングヘアをかき上げる。


「そうですわ! この夏休みは、私たちがパパの身の回りのお世話をすべて引き受けます!

さあパパ、あちらのソファーへ! 私が最高級の氷魔法で冷やしたフルーツを、あーんして差し上げますわ!」


「ずるいぞベイラお姉ちゃん! ならあたしは、パパの肩揉みをする!」


娘たちが再びライルに群がろうとした瞬間――。


「……ちょっと待ちなさい、ヘスティアー」

獣人の姫・ミアが、腕を組んで前に出た。


「お前のそのバカ力で肩揉みなんかしたら、ライルの肩が粉砕されるだろ。

……ライルの体のツボを知り尽くしているのは、妻であるあたしだけさ」


「なんだとー! ママ、勝負だ!」

ヘスティアーの全身から白炎が吹き上がる。

「上等だよ! 娘だからって手加減しないからね!」

ミアも白炎を纏い、親子で闘気オーラのぶつかり合いを始める。


「……なら、私はパパにお昼寝の膝枕をしてあげる」

ヘカッテが、ライルを重力魔法でふわりと浮かせ、自分の太ももの上へ着陸させようとする。


「させませんわよ、ヘカッテ」

魔族の姫・アナスタシアが、指先から見えざる糸を放ち、重力魔法を相殺してライルを空中で静止させる。


「ライル様に膝枕をするのは私です。……貴女のその長すぎる脚(股下110cm)では、ライル様の首の角度が合わなくて寝違えてしまいますわよ」

「う……! そ、そんなことないもん!」


「私は森の精霊の力で、ライル様をお風呂で流して差し上げますわ」

「お風呂のお世話は妻の特権です! リーフェ、貴女はまだ早いですわ!」

セレナとリーフェのエルフ親子も、水面下で激しい火花を散らし始めた。



【ローレンツ家・夏の陣の結末】


「あのー……君たち?」


ライルは、空中に(妻と娘の魔法の綱引きによって)浮遊したまま、虚無の表情で声をかけた。


右を見れば、サクヤとベイラが「どちらがライルに冷たいお茶を飲ませるか」で吹雪を発生させ、

左を見れば、ミアとヘスティアーが白炎を燃やして腕相撲をしており、

下を見れば、アナスタシアとヘカッテが重力と糸で空間を歪ませている。


美しき八頭身の女神たち(娘)と、神格を持つ絶世の美女たち(妻)。

世界中が羨むような夢のハーレム空間であるが、その中心にいるライルのHP(精神力)は、ゴリゴリと削られていた。


「パパ! 私が淹れたお茶を!」

「主さま! 私のお茶を!」


「パパ! あたしのマッサージ!」

「ライル! あたしのマッサージ!」


「パパァァァッ!!」

「主さまぁぁぁッ!!」


「……誰か、助けてくれぇぇぇッ!!」


ライルの悲鳴が、真夏の青空に虚しく響き渡った。

世界を救う力を持つ英雄も、身内の「過剰な愛情」という波状攻撃の前には、ただ為す術もなく翻弄されるしかなかったのである。


かくして、ローレンツ公爵邸の夏季休暇は、世界で最も美しく、そして最も騒がしい「パパ争奪戦」によって幕を開けた。

娘たちの猛烈なアピールと、妻たちの鉄壁のディフェンス。

この夏、ライルが心休まる日は、果たして来るのだろうか……?


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