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神への階と十五柱の花嫁  作者: 輝夜月愛


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第44話:女神たちの絶対宣言と、パパの新たな胃痛

【ローレンツ領・屋敷のバルコニー】


正門前を埋め尽くす、数百人の貴族たちと白馬の馬車。

「どうか! どうか麗しの姫君たちとのお見合いを!」

「我が家の財力のすべてを賭けて!」


狂騒に包まれる中、屋敷の2階のバルコニーの扉が、静かに開いた。


「……騒がしいですわね。パパが困っているじゃない」


その声が響いた瞬間、数百人の貴族たちが一斉に息を呑み、静まり返った。

バルコニーに姿を現したのは、成長(羽化)を遂げた十人の娘たちだった。


身長190センチメートル。

その半分以上(股下110センチ)を占める、すらりと伸びた神の造形美たる脚。

誰もが平伏する八頭身の完璧なプロポーション(ナイスバディー)。

そして、朝日に透けるような、腰まで届く艶やかなストレートロングの髪が、風に揺れている。


ベイラリーフェ琥珀ヘスティアー漆黒ヘカッテ星空アフロディテ真紅(フレイヤ)翡翠(ユリィナ)真珠(ニーケ)瑠璃(ファリナ)、そして紫水晶(ノア)。十色の美しいストレートヘアが並び立つ光景は、もはや絵画や彫刻すらも凌駕する「美の暴力」だった。


「おおお……! 美しい……!」

「女神だ……本物の女神が降臨されたぞ……!」


貴族たちが次々と膝をつき、感涙を流す。

王太子からの使者も、そのあまりの神々しさに持っていた求婚状を取り落とした。



【拒絶の儀式 ~人間に女神は飼えない~】


長女である氷の女神・ベイラが、バルコニーの手すりに優雅に手を置き、冷ややかな、しかし甘い毒を含んだ声で見下ろした。


「皆様。遠路はるばる、私たちに求婚しに来てくださったこと、光栄に思いますわ。

……ですが、私たちを妻に迎えるということは、それなりの『覚悟』がおありなのでしょうね?」


「も、もちろんでございます! 全財産を投げ打ってでも、貴女様を幸せに……!」

侯爵家の当主が叫ぶ。


「財産? ……ふふっ」


ベイラが扇子で口元を隠し、クスクスと笑った。


「私たち、すでに北の帝国から南の魔境、東の海、そして魔界まで、世界中の国々を『自分のお庭』として所有しておりますのよ?

人間の財産など、私たちにとっては路傍の石ころと同じですわ」


「うぐっ……!」

貴族たちが言葉に詰まる。圧倒的な資産格差である。


続いて、炎の女神・ヘスティアーがバルコニーから身を乗り出し、長い脚を組んだ。


「それにさ、あたしたちの旦那さんになるなら、当然あたしたちより強くないとダメだよね?

……あたしと腕相撲して、この白炎(神炎)に一秒でも耐えられる人、いる?」


ヘスティアーの指先から、空間を歪ませるほどの超高温の白炎が立ち上る。

「ひぃぃっ!?」

最前列の貴族たちの眉毛がチリチリと焦げ、後ずさる。


「森の精霊一万匹を束ねられる?」とリーフェが微笑む。

「重力100倍の部屋で、私とお茶会してくださる?」とヘカッテが妖艶に首を傾げる。


誰も何も言えない。

彼女たちは、見た目こそ絶世の美女だが、その本質は「国家を単騎で滅ぼせる歩く災害(神)」なのだ。

人間の男が養えるような存在では、決してない。



【女神たちの絶対宣言】


静まり返る群衆に向かって、最後にアフロディテが、星空の瞳を細めてとどめを刺した。


「それにね、おじ様たち。

私たちにはもう、心に決めた『たった一人の殿方』がいるの」


「な、なんだと……!? い、一体どこの国の王族ですか!」


十人の女神は顔を見合わせ、そして、後ろの部屋で胃を押さえて隠れていたライルを、強引にバルコニーへと引っ張り出した。


「「「私たちのパパ(創造主)よ!!」」」


「……は?」


群衆の頭上に、巨大なクエスチョンマークが浮かんだ。

ライルは冷や汗を滝のように流しながら「や、やめろお前たち!」と抵抗するが、身長190センチの女神十人にガッチリとホールドされ、逃げられない。


「いいこと? 私たちの魂も、体も、すべてはパパのもの。

パパの『幸運』と繋がっていなければ、私たちは神格を保てないの。

だから、他の人間のところに嫁ぐなんて、絶対にありえないのよ!」


ベイラがライルの腕に豊かな胸を押し当てながら、高らかに宣言する。

ヘスティアーもライルの背中に抱きつき、長い脚を絡ませた。


「そういうこと! あたしたちは永遠にパパの『専属巫女』として、この家で生きていくの!

だから、もう二度と変な手紙を送ってこないでね!」


「あ、ああ……なんということだ……」

「我々は、神王の聖域に足を踏み入れてしまったというのか……」


貴族たちは絶望に打ちひしがれた。

相手が他国の王子ならまだしも、「彼女たちを創造したライル」が相手では、勝ち目など万に一つもない。


「撤収だ……。我々では、あの女神たちの熱にすら耐えられん……」

白馬の馬車が、次々とローレンツ領から逃げるように去っていった。



【そして始まる、家族内の新たな戦争】


「……ふぅ。これで静かになりましたわね」

ベイラが満足げに長い髪を払う。


バルコニーには、ライルと十人の娘たちだけが残された。

ライルは、放心状態からハッと我に返り、自分に密着している五人の娘たちを引き剥がそうとした。


「お、お前たち! なんてことを言うんだ!

専属巫女ってなんだ! 僕はパパだぞ!?」


「パパはパパですわ。でも、血は繋がっていませんし、私たちは神ですから、人間の倫理は適用されませんのよ?」

ベイラが、長い脚を交差させ、悪戯っぽくライルの胸元に指を這わせる。

その大人びた色香は、かつての幼女のものとは次元が違った。


「そ、そうだよ! あたしたち、もう大人だもん! パパのお嫁さんになれるもん!」

ヘスティアーが顔を真っ赤にしながら背中から離れない。


「ちょ、ちょっと待て! サクヤ! フィリア! 止めてくれ!」


ライルが助けを求めると、部屋の奥で紅茶を飲んでいた妻たち(母親たち)が、クスクスと笑いながら歩み寄ってきた。


「ふふ。主さま、諦めてくださいな。

あの子たちの神格は、貴方の魂を『アンカー』にしてこの世界に留まっているのです。

離れられないのは、物理的にも、魂の構造的にも事実なのですよ」


サクヤが、ライルの頬にそっとキスをした。


「それに、あんな美しい女神たちに愛されるなんて、男冥利に尽きるでしょう?」


「……僕の胃壁の厚さには限界があるんだが」


「あら、大丈夫ですわ。胃薬なら私が調合しますもの」

エルフのセレナが優しく微笑む(目が笑っていない)。


かくして、外部からの求婚者という脅威は去った。

しかし、ライル・フォン・ローレンツの真の試練はここから始まる。


身長190センチ、股下110センチ、絶世の美貌とストレートロングの髪を持つ十柱の女神たち。

彼女たちが全力で仕掛けてくる「パパへの猛烈なアピール(誘惑)」を、最強の妻たちの監視下で、いかにして躱し、父親としての威厳を保つのか。


世界を救うよりも過酷な、「ローレンツ家・絶対防衛戦」の火蓋が切って落とされたのである。


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