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神への階と十五柱の花嫁  作者: 輝夜月愛


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第42話:親たちの火消しと、殺到する求婚状(ラブレター)

【西の鉱山国家フォルデア ~地下大空洞~】


かつて、三女ヘスティアーが迫り来る溶岩の津波を「神炎食い」で飲み込み、強引に平和な温泉地へと変えてしまったこの国。

地表は平和そのものだったが、地下深くでは、世界を滅ぼしかねない致命的なバグ(歪み)が進行していた。


「……ひどい有様だ。ヘスティアーの奴、目に見える熱だけを食べて、地下のマグマ溜まりの『出口』を完全に塞いでしまったんだな」


ライルが、赤黒く明滅する巨大な岩盤を見上げて溜息をついた。

出口を失った惑星規模の地熱エネルギーが限界まで圧縮され、今にも大陸の西半分を吹き飛ばす「超巨大噴火」を起こそうとしていた。


「子供の食べ残しは、母親が綺麗にするもんだろ。……ライル、サポート頼むよ」


前に出たのは、ヘスティアーの母である第三夫人・ミアだった。

《白炎の舞姫》へと進化した彼女は、透き通るような白磁の肌と、大胆な革のビキニアーマーを熱風になびかせ、頼もしく笑った。


「もちろんだ。サクヤ、結界をお願いできるか?」

「ええ。熱が地上へ逃げないよう、空間を隔離します」


サクヤが桜色の神気で地下大空洞を覆い尽くす。

準備は整った。


「行くよ……! 《白炎化・獣神の息吹》!!」


ミアが岩盤に両手を突き立てる。

強引に破壊するのではない。彼女自身が「巨大な熱のバイパス(通り道)」となり、圧縮されたマグマのエネルギーを、自らの白炎と同化させて静かに抜き取っていくのだ。


「ぐぅぅ……ッ! さすがに、星の熱は重いね……!」

ミアの白い肌に汗が滲む。


「ミア、僕の『幸運』を君の魔力回路に重ねる! 熱の奔流が一番スムーズに流れるルートを固定するんだ!」


ライルがミアの背中に手を当て、測定不能の幸運値で「熱暴走が起きない確率100%」の道筋を作り出す。

夫婦の完璧な連携。

数万度の熱エネルギーが、ミアの体を通って安全な霊力へと変換され、地脈の正しい流れへと還元されていく。


数十分後。

赤く膨張していた岩盤が青白い光を放ち、静かに脈打ち始めた。

大陸を吹き飛ばすはずだった超巨大噴火の危機は、誰にも知られることなく、夫婦の汗と共に回避されたのだ。


「……ふぅ。終わった。お疲れ様、ミア」

「へへっ。ライルが背中を支えてくれたからね。……これでまた、あの子も安心してパパにお庭をプレゼントできるってもんさ」


ミアが豪快に笑い、ライルとハイタッチを交わした。

親としての責任と、世界を守る大人の仕事。

完璧な火消し(物理)を終え、爽やかな達成感に包まれていた、その時だった。



【王都からの緊急通信】


ピリリリリッ!


サクヤの空間通信用の魔石が、けたたましい音を立てて鳴り響いた。


「……あら? 第一夫人のフィリアからですね。学園で何かあったのかしら」


サクヤが通信を開くと、そこには顔面蒼白になったフィリア(妹)の顔が浮かび上がった。


『ラ、ライル様! サクヤ様! 大変です!

今すぐ屋敷にお戻りください!』


「どうしたんだフィリア!? 娘たちがキメラにでも襲われたか!?」


ライルが血相を変える。


『キメラは出ましたが、それは娘たちが一瞬で倒しました!

問題はその後です! あの子たちの……あの子たちの姿が……!』


「姿がどうしたって言うんだ!」


『と、とにかく戻ってきてください!

お屋敷の門の前が、えらいことになっています!』


通信が一方的に切れる。

ライルたちは顔を見合わせ、すぐさま転移魔法でローレンツ領の屋敷へと跳んだ。



【ローレンツ邸 ~白馬と薔薇の包囲網~】


「……なんだ、これは」


転移してきたライルは、絶句した。

屋敷の正門前が、見渡す限りの**「白馬の馬車」と「高級な薔薇の花束を持った貴族の男たち」**で埋め尽くされていたのだ。

その数、ざっと数百人。王都の独身貴族が全員集まったかのような異様な光景だ。


「公爵閣下がお戻りになられたぞーッ!!」

「閣下! どうか、どうか我が息子とベイラ姫の婚約を!」

「私に! 私にリーフェ様との面会許可を!」

「全財産を差し出します! ヘカッテ様を一目だけでも!」


血走った目をした貴族たちが、一斉にライルに群がってくる。

元・枢機卿ガニス率いるメイド&庭師部隊が、必死にバリケードを組んで防いでいる状態だった。


「ちょ、ちょっと待て! 何の話だ!

うちの娘たちは、まだ8歳と7歳だぞ!? 婚約なんて早すぎる!」


ライルが叫ぶと、先頭にいた侯爵(学園でベイラに助けられたドラ息子の父親)が、涙ながらに訴えた。


「閣下……! ご冗談を!

あのような**『身長190センチ、股下110センチの完璧なプロポーションと、美しすぎるストレートロングの髪を持つ絶世の女神たち』**を、いつまでも隠しておけるとお思いか!!」


「……はい?」


ライルの思考が停止した。

身長190センチ? 股下110センチ? ストレートロング?

誰の話をしているんだ、この男は。


「主さま、ひとまず中へ!」


サクヤが空間魔法で群衆を押し退け、ライルとミアを屋敷の中へと引きずり込んだ。



【娘たちの劇的変化】


玄関ホールに飛び込むと、そこにはフィリア、セレナ、アナスタシアの妻たちが、頭を抱えてソファーに座っていた。


「フィリア! 外の騒ぎは一体……」


ライルが声をかけた瞬間、奥の階段から、コツン、コツンと優雅な足音が響いてきた。


「あら、パパ。お帰りなさいませ」


「……え?」


ライルは息を呑んだ。

階段を降りてきたのは、見知らぬ五人の「絶世の美女」たちだった。


天井に届きそうなほどの長身(190cm)。

その半分以上を占める、信じられないほど長く美しい脚(股下110cm)。

誰もがひれ伏すような八頭身の完璧なナイスバディー。

そして、歩くたびにサラサラと光を反射する、腰まで伸びたストレートロングの髪。


金髪の美女が、ライルに妖艶に微笑みかける。

「パパ、私よ。ベイラですわ」


銀髪の美女が、優しく小首をかしげる。

「びっくりした? リーフェだよ、パパ」


琥珀色の髪の美女が、ウインクをする。

「へへっ! あたしだよ、ヘスティアー!」


「な、ななな……」


ライルは腰を抜かしそうになった。

「お前たち……どうして急に、そんな大人に!?」


「学園で、少し『心』を学んだんですの。

そうしたら、神格が成長して、体がそれに合わせて羽化してしまいましたのよ」

ベイラが自身の長い髪を指で梳きながら、事も無げに言う。


「……それで、その姿で学園から帰ってきたのか?」

サクヤが冷静に尋ねる。


「はい! 街中を歩いて帰ってきたら、みんな口をポカンと開けて、後ろからゾロゾロと男の人がついてきちゃって……」

アフロディテ(元7歳・現パーフェクト美神)が、困ったように頬に手を当てる。その仕草だけで、窓の外の貴族たちが「おおおっ!」と奇声を上げた。


ライルは両手で顔を覆った。


「……そりゃ、求婚状の山ができるわけだ」


机の上には、すでに国王からの『王太子との婚約打診』の手紙まで届いていた。

年齢(中身)はまだ8歳と7歳。しかし外見は、世界を傾けるほどの傾国の女神。

物理的な世界崩壊の危機は親たちが解決したが、**「パパとしての平穏な日常の崩壊」**は、今まさに始まったばかりだった。


「ダメだ……! どこの馬の骨とも分からん男共に、僕の娘を渡すわけにはいかない!!」


ライルが《天帝の覇鎧》を全力で展開し、完全な「過保護な父親モード」へと突入する。


「主さま、落ち着いてください。屋敷が壊れます」

サクヤが呆れたようにため息をつく。


かくして、強大すぎる敵の代わりに現れたのは、**「絶世の美女となった娘たちを巡る、国を挙げての求婚ラッシュ」**という、ライルにとって古龍よりも恐ろしい戦いだった。


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