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神への階と十五柱の花嫁  作者: 輝夜月愛


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第36話:魔界への里帰り ~クーデター鎮圧と、お爺ちゃん(魔王)の決断~

【魔界・魔王城「パンデモニウム」】


空が紫色に染まる異界、魔界。

その中心にある魔王城は今、黒煙に包まれていた。


「グハハハ! 見よ! 軟弱な魔王は堕ちた!」


玉座に座り、勝鬨を上げているのは、魔族軍の強硬派筆頭、将軍ザガン。

彼は先代からの重臣たちを幽閉し、現魔王(アナスタシアの父)を地下牢へと追いやっていた。


「人間ごときと融和だと? 笑わせる!

我ら魔族こそが至高!

これより地上へ侵攻し、レギュラント王国を火の海にしてくれるわ!」


広場を埋め尽くす数万の魔族兵たちが、ウォーッ! と雄叫びを上げる。

彼らは知らなかった。

自分たちが喧嘩を売ろうとしている相手が、**「神々すら逃げ出す最強の一族」**であるということを。



【王城上空・次元の裂け目】


ザガンが侵攻命令を下そうとした、その時。


バリリリリリッ……!!


魔界の空が、ガラスのように砕け散った。

次元の裂け目から、優雅な馬車(重力魔法で浮遊中)が現れる。

御者台に座るのはライル。

そして、馬車から降り立ったのは――。


「……あらあら。久しぶりに帰ってみれば、随分と汚れてしまいましたわね」


漆黒のゴスロリドレスに身を包み、濡れたような黒髪をなびかせる美女。

第四夫人・アナスタシア(魔族形態・完全版)。


「ママ、ここが実家?」

「暗くて、重くて……うん、いい感じ」


その隣には、黒いドレスを着た愛らしい少女。

アナスタシアの長女、ヘカッテ(8歳)。


「な、なんだ貴様らは!? 侵入者か!?」


ザガンが立ち上がる。

アナスタシアは優雅に扇子を開き、冷徹な瞳で元・部下を見下ろした。


「お久しぶりですわね、ザガン。

……私の父、魔王陛下はどこかしら?」


「あ、アナスタシア姫だと!?

フン、人間界へ嫁いだ裏切り者が!

陛下なら地下牢だ。すぐに貴様も送ってや――」


「……黙りなさい」


アナスタシアが指を一本、クイクイと動かした。


ズドォォォォン!!


ザガンを含む、広場にいた数万の兵士たちが、一斉に地面に叩きつけられた。

重力魔法ではない。《愛玩人形のマリオネット・ストリングス》。

見えざる魔力の糸が、彼らの四肢を強制的に操り、「土下座」の姿勢を取らせたのだ。


「ぐ、ぐあああっ!? 体が……動かん!?」


「私の庭(実家)で、大きな声を出さないでくださる?

……ヘカッテ、掃除をお願い」


「はーい、ママ」


ヘカッテが前に出る。

8歳の少女は、無邪気な笑顔で、とんでもない魔法を行使した。


「《ブラックホール・スイーパー》」


ヘカッテの掌に小さな闇の球体が生まれる。

それは強烈な吸引力を発し、ザガンたちの武器、鎧、そして戦意を根こそぎ吸い込んで消滅させた。


「ひぃぃぃッ!? 武器が! 鎧が! パンツ一丁に!?」

「ママー、綺麗になったよー」


「ええ、偉いわヘカッテ」


戦闘時間、約30秒。

クーデターは、母娘の「お掃除」によって鎮圧された。

ライルは馬車の上で、「僕の出番、また無しか……」と遠い目をしていた。



【地下牢・魔王との再会】


クーデター部隊を絨毯じゅうたんのように丸めて片付けた一行は、地下牢へと向かった。

最深部の牢獄には、やつれた老紳士――魔王が繋がれていた。


「……アナスタシアか? それに、その子は……」


「お父様! ご無事ですか!」


アナスタシアが魔力で鉄格子を消し飛ばし、父に駆け寄る。

魔王は娘の姿を見て涙ぐんだが、その視線はすぐに足元の少女に釘付けになった。


「……もしや、孫か? わしの孫娘か!?」


「初めまして、お爺様。ヘカッテです」


ヘカッテがスカートの裾をつまんでカーテシー(挨拶)をする。

その瞬間、魔界の王の威厳は崩壊した。


「おおお! なんて可愛いんだ! 目元がワシにそっくりじゃ!」

「お爺様、よしよし」

「ふごぉぉッ! 孫に撫でられたぁぁッ!」


魔王、陥落。

ライルが苦笑しながら回復魔法をかけると、魔王はシャキッと立ち上がり、ライルに向き直った。


「……ライル殿と言ったな。

娘を……いや、孫を連れてきてくれて感謝する。

まさか、たった数人で反乱軍を制圧するとはな」


「いえ、僕は何も……。妻と娘が強すぎまして」


「……うむ。魔界の男どもよりよほど強い」


魔王は溜息をつき、寂しげに天井を見上げた。


「ワシはもう、疲れたよ。

部下の裏切りにも、魔界の統治にもな。

……ライル殿。相談がある」



【魔王城・玉座の間(再)】


数時間後。

鎮圧されたザガンたちが縛り上げられ、魔王が玉座に復帰した。

だが、魔王は宣言した。


「皆の者、聞け!

本日をもって、ワシは魔王を引退する!」


ざわめく広場。

「で、では次はどなたが!?」


「次期魔王は指名しない!

この魔界は……本日より、**レギュラント王国の『自治区』**となる!」


「「「はぁぁぁぁッ!?」」」


全魔族が驚愕する中、魔王はヘカッテを膝に乗せてニッコリ笑った。


「ワシはこれから、娘婿のライル殿の屋敷で『隠居』することにした!

孫の成長を見守りながら、余生を過ごすのじゃ!

文句がある奴は、そこにいるアナスタシアとヘカッテが相手をする!」


殺気立つアナスタシアとヘカッテ。

「……文句、あります?」

「……お掃除しちゃう?」


全魔族が首を横に振った。

「あ、ありません! 賛成です! レギュラント王国バンザイ!」



【結末:魔界併合】


こうして、魔界は歴史上初めて、人間国家の領土(飛び地)となった。

表向きは「同盟」だが、実質はライルの管理下にある。


ライルの書斎には、また一枚、新しい地図が加わった。

『魔界全域(アナスタシアの実家)』。


「……広すぎるよ」


ライルが頭を抱えていると、アナスタシアが紅茶を運んできた。


「あら、いいじゃありませんか。

魔界の特産品は豊富ですし、魔族たちは優秀な労働力になりますわ。

それに……」


アナスタシアは妖艶に微笑み、耳元で囁いた。


「これで、お父様も屋敷に来て、子守をしてくださいます。

……二人きりの時間が、もっと増えますわよ?」


「……!」


それは魅力的だ。

ライルは観念した。

世界征服も、魔界併合も、すべては「家族の幸せ」のため。

そう思えば、悪くない。


「……わかったよ。魔王様の部屋、用意しておかないとな」


「ふふ、愛していますわ、旦那様」


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