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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦2年
191/201

貧乏性は直らない

新世界暦2年2月2日 日本国東京都 防衛省防衛装備庁


「ドラスト大陸でやってる合同演習は順調らしいな」

「これまで連携がなかった国もあるし、現場は苦労してるみたいだがな。想定外の事態(工作員の襲撃)もあったし」


警衛任務中の殉職については今も一部マスコミや国会では取り上げられているホットな話題だったが、彼らの仕事には関係のない話であった、


「で、敷島大公国の航空機に関しての情報は集まっているのか?」

「報告を見ている限り概ね60年代といったところじゃないでしょうか。格闘戦を行ったパイロットからの報告では、著しい推力不足と見られる、との所見が多いですね」

「・・・F-15と比べてもなぁ・・・」


やれやれ、と1人は嘆くが、「著しい」推力不足なので、他参加国の装備ゴテゴテのF-16と比較しても推力不足が目立つ、ということである。


「この双発可変翼の機体はF-111に似てるな。機体重量が重いせいで推力が足りないのか?」

「こっちのMig-21に似た軽量戦闘機らしい機体でも推力不足が目立つらしいから、単純にエンジン技術が未熟で機体に見合った大推力エンジンが造れないんじゃないか?」


送られてきた画像や動画も見ながら技官たちはわいわいと意見を言い合っている。


「レーダーを始めとした電子技術も60年代相当らしく、視界外戦闘では一方的にキル(撃墜)判定を取りまくれたらしいですね」

「F-1Cでも売れそうだな」

「今でも製造現場はいっぱいいっぱいなのに、どうやって売るんですか」


アズガルド向けにF-1B、T-2Bの製造と、試験中にも関わらずF-1Bの量産計画をF-1Cへの切り替えを行っているので、ただでさえオーバーワークの製造現場からの恨み節が聞こえてきそうである。

いくら儲かっていても、現場はオーバーワークを歓迎などしないのである。


そもそも今の日本の航空産業が量産している航空機としては、海自向けにP-1、空自とアズガルド向けにC-2、アズガルド向けにT-4B、T-2B、F-1Bである。

さらに開発中の機体として、次期主力戦闘機XF-3、アズガルド向けのF-1C、空自向け次期練習機T-4C、海自向け次期飛行艇XUS-3とてんこもりである。

固定翼機だけでこの状況で、さらに回転翼機でUH-2とSH-60Lも量産中である。


なお、ティルトローター機がある現状で、また新しい飛行艇を造る意味はあるのか、という議論もあるにはあるのだが、結局、ジュラシック大陸における航続距離問題で政治サイドからのプッシュで予算がついた案件である。


「XF-3の初飛行が遅れてる現状では、そっちに割り振るリソースも増やさんとならんが・・・航空産業は数年前からは考えられん活況だな」

「笑ってばかりもおれんがな」


ここにいる技官のほとんども目の下に黒いクマをつくっているのが何人かいるような状況であり、突然の需要拡大に日本の航空産業が開発陣も含めて、完全なキャパオーバーになっているのがよくわかる。

ちなみに、自動車産業もアズガルド、ラストール需要による好景気に沸いてはいたが、元々のキャパシティがデカいのと日本仕様をそのまま輸出できるので、航空産業ほどの問題にはなっていない。


「まぁ、レーダーやミサイル、エンジンみたいなコンポーネント単位での売り込みは十分見込めるだろう。完成機の生産よりははるかに余力もあるし」

「アズガルド向けの軍備再編計画も練り直しだし、どうなるかわからんがね」

「T-4Cの開発停止とT-7Aの採用圧力も増してきたし、今年も荒れそうだな」


彼らの忙しい日々はまだまだ続くのだった。




新世界暦2年2月2日 台湾国台北 海軍司令部


「日本とアメリカから退役艦を購入する計画は失敗に終わりました」

「むぅ、まさか日米からのあんなに強い圧力を受けるとは・・・」


一見すると深刻そうなことを言っているように見えるが、APTOの海軍関係者が聞いたら助走をつけて殴りに来るレベルでどうでもいい話である。


「制約が無くなったんだから黙って新造艦買えばいいだろ、なんて・・・」

「くっ・・・せっかくあんなに良さそうな退役艦があるのに・・・」


ちなみに、日本に購入を打診したのはFFMの配備で除籍されるゆき型、きり型、あぶくま型、アメリカには念願のイージスシステム搭載艦として一部が予備役保管されている初期型のタイコンデロガ級を打診していた。

却下された理由は、日本のほうはアズガルドとラストールに回すのが優先、アメリカのほうはそもそもVLSも装備しない初期型タイコンデロガなんて今更導入してどうするんだと怒られた。


「とにかく、まずは古くなった艦の入れ替えが最優先だ」


古くなった艦をちょっと新しい古い艦で入れ替えようとするんじゃない、とまた怒られそうなことを言っているが、2000年代までギアリング級(WWII型)駆逐艦を使っていた海軍を舐めてはいけない。

彼らが今言っている「古くなった艦」も、1970年代前半までに建造されたノックス級フリゲートのことである。


「しかし、新造となると・・・」

「国内では無理でしょう」

「出来るならとっくにやってる」


造船業というのは設備が大規模で特殊なうえ、実際の設計や製造もそうそうゼロから立ち上げられるものではないので、世界の造船シェアが偏る一因になっている。

なお、そのノウハウをタダで教えて世界一の造船国の地位から転落した間抜けな島国がどこかにあるらしい。


「となると、購入先は日本、アメリカ、イギリスか」

「フランスだけは二度と御免ですね」


ラファイエット級フリゲートの台湾向けである康定級は、フランス産業界が台湾首脳部に賄賂を使って購入させたうえに、肝心の対空ミサイルシステムには法外な高値を吹っ掛けて導入されず、武装は全て台湾側で用意したという曰く付の艦である。

ステルス性を重視した船型ではあるが、世代としては最も初期のものであり、その維持管理の手間も相まって、台湾海軍内で評価されているのはその対潜能力だけ、という有様である。


「各国で建造中の艦は、日本がやはぎ型フリゲート(※現実ではもがみ型で確定しましたが、作中ではこれで通します)、アメリカがアーレイ・バーク級駆逐艦フライトIIIとコンテレーション級フリゲート、イギリスが26型フリゲートですか」

「アメリカの2級はイージスシステム搭載艦ですが・・・その・・・値段が・・・」


消費電力問題を始め、メーカーに艦載レーダーの経験が無いなど、各種問題でSPY-6の搭載に手間取ったアーレイ・バーク級フライトIIIは従来に比べて(もともと安くは無かった)建造費が高騰している。

ただ、ズムウォルト級に比べれば可愛いものなので、それほど大きな問題にはなっていない。(問題になっていないとは言っていない)

慣れって怖いな、という1つの例である。

余談だが、海自はSPY-6に何かを嗅ぎ取ったのか、安定性を取ったのか、まや型2隻の建造時にラインが閉鎖されるSPY-1レーダーを先に調達してしまうという荒業をとっている。結果的に政治都合でSPY-7を押し付けられて悶えることになったのは別の話である。


コンステレーション級はLCSの失敗を受けて計画されたフリゲート艦で、バーク級で37個のRMAモジュールで構成されるSPY-6を9個まで減らして小型、軽量化することで搭載する小型の艦隊防空艦である

アメリカ海軍の最新プロジェクト、と言う時点で地雷臭が半端ない上に、まだ就役した艦が1隻もない、というのも懸念事項である。


「26型は・・・なんか違うんだよなぁ・・・」

「違いますよねぇ・・・」


一見すると個艦防御用のVLS24セルに、巡航ミサイルやVLA用のMk41VLS24セルと十分な戦闘能力を持つように見えるが、レーダーのハード面では23型フリゲートと大差無く、AW101やCH-47といった大型ヘリへの対応など、微妙に水陸両用戦、特殊作戦重視の設計が抜けきっていない。


「防空艦としてコンステレーション級をアメリカから少数調達しつつ、日本からやはぎ型を買うのが無難かな」


いや、新規設計の提案依頼書でも出せばいいだろ、という話なのだが、どこまでも安くあげようとする台湾海軍の面々であった。




新世界暦2年2月2日 アズガルド神聖帝国 帝都アガルタ 陸軍調達本部


「装備の入れ替えを急がねばならんとはいえ、戦時に新装備の大量導入は・・・」

「止むをえまい。従来の装備では歯が立たんのだから」


歩兵装備の自動小銃くらいなら分解整備さえ教えればどうとでもなるが、それが戦車だなんだとなってくるとそういうわけにもいかなくなる。


「アメリカから買わされ・・・購入するM1戦車は重すぎて本国での運用は困難だ」

「だからドラスト大陸配備に限定したわけだが」

「しかし、鉄道輸送もムリそうだし、ドラスト大陸の道路インフラではトランスポーターによる戦略機動にも支障がある。となると今度は数がいくらあっても足らん」

「かといって、道路インフラの改善なんざ幹線だけでも数年で終わる話じゃないぞ」


戦車の話ばかりというか、オールタンクドクトリンまで行っちゃっている気がするが、やはり戦車の更新というのは新しい陸軍の形としてわかりやすいのである。

ちなみに、オールタンクドクトリンはイスラエルがかつて提唱した、「対戦車砲の隠蔽が困難な地形(要するに砂漠)であれば戦車だけで蹂躙できるよね!」という理論である。

なお、現実では対戦車ミサイルの一般化によって大失敗に終わり、イスラエルは第四次中東戦争の緒戦で痛い目にあうことになった。


「戦車については、日本が配備しているタイヤ式の車両はどうだろう。あれなら戦場まで自走できるし自重も軽いから未舗装でも道さえあればどうにかなるでしょう」

「しかし、軽いと言っても26tだぞ」

「装甲も戦車ほどじゃないんだろ?」

60tの置物(M1)よりは遥かにいいのでは?」


装備全てを更新しなければならない彼らには戦車以外にも決めることがいくらでもあるはずなのだが、なぜか戦車の話ばかりしているのだった。

次も1週間以内には

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― 新着の感想 ―
[一言] レーダーとコクピットがいちばん高騰している部分だから他国を巻き込まない限り無理では? 統合電子戦装置は既にラインはありますしね。 三倍になった理由が製造ラインが原因な関係でいちばん高くなった…
[一言] 更新お疲れ様です。 なかなか興味深い台湾海軍内情(^^;; 仏製艦艇が・・・・orz アズガルドの戦車事情も(^^;; 脆弱なインフラと歩兵直協のドクトリンから旧日本軍は軽戦車主体の編成…
[良い点] 軍隊も予算やマンパワーの縛りからは逃げられないという現実が、それぞれの陣営で垣間見えて面白かったです [一言] 「調達する時は何らかの想定の下に兵器の選定をするのに、いざ事が起こるとその想…
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