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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦2年
186/201

警備側は常に不利

新世界暦2年1月29日 アズガルド神聖帝国 ドラスト大陸 セントーラス空軍基地 航空自衛隊基地防空用地対空誘導弾


昨年は売り込みのために陸自の11式短距離地対空誘導弾が展開していたものの、今回の演習への対応も兼ねて、空自の基地防空隊に代わっていた。

なお、空自の地上部隊としてはこの他にも、陸軍演習場のほうにPAC-3MSEを装備した高射隊も展開している。

そんなところに展開している理由は勿論、実弾射撃訓練のためである。


一応、空軍としては初めてのAPTO合同演習なので、そんなにえぐい想定の訓練はしないことになってはいたが、各国合同の基地警備訓練も行われることになっており、SAMを派遣していた日米シンガポールはそちらも対象であった。


結果的に、予行も兼ねて、各国は各々勝手に歩哨を立てて巡検を行ったりしていた。


「・・・暇だな」


昨日までは演習開始前だったので、幹部による巡検などが頻繁にあったが、演習が開始された以上それほど暇ではなくなったのと、あまりにも張りすぎて肝心の合同警備訓練で疲れ切っていては意味がないからである。


そして何より、近年はかなり改善されたとはいえ、空自の基地警備隊、というのはかなり冷遇されていた部署であり、士気が低いとは言わずとも、射撃訓練と多少の訓練をしている航空自衛官、という程度のものだった。

本格的に装備が揃えられるようになったのは、2000年代に入ってからであり、そのきっかけとなった「事件」は陸自との合同訓練だとまことしやかに囁かれている。


ちなみに、その「事件」は、空自基地の警備訓練として陸自部隊が侵入側を演じる、というもので、夜間に陸自側部隊が侵入、破壊工作を行う、というかなり実戦形式のものだったと言われている。

その結果は、「昨日結局陸さん来なかったけど寝てたのかな、HAHAHA」と言いながら基地司令が自分の部屋に入ると机の上に手榴弾(模擬)が置かれていた。という散々なものだと伝わっている。


さすがにこれではまずい、となり軽装甲機動車の導入や個人装備の更新が進むことになった。

それでも小銃が64式小銃のままなのは、基地面積の広い空自では、武装工作員侵入などの有事には、普段はさして戦闘訓練を受けていない部署からも増援を受けて、重要拠点の防衛するという点では単発威力が高く、射程も長い64式小銃のほうが有利、という事情がある。

もっとも、それは建前で、小銃更新の予算と、それに伴う教育課程の見直し、そして有事に基地警備隊に増強される全隊員の教育やり直しなど、手間が多すぎるせいだと言われている。

そもそも、最初に5.56mm小銃であるM16を採用したのは米空軍の基地警備なのだから、威力だの射程だのが理由にはならないと少し考えれば誰でも思いつくことである。


そんな事情はさておき、64式小銃を下げて歩哨に立つ基地警備隊所属の隊員は、持っている小銃の割にはシューティンググラスをかけていたり、膝や肘にプロテクターを着けてタクティカルベストを着ていたりと現代的である。


さすがに64式小銃も古くなり過ぎたので、20式小銃で更新の話が出ているが89式小銃も結構な数導入した海自と違って、ゼロからの5.56mm小銃導入であり、どうなるか不明である。


「ん?」


取り留めのないことなどを考えつつ、時間を潰していると、闇の中からわずかに声が聞こえたような気がした。


「誰か!?」


フラッシュライトを点灯し、暗闇を照らす。

ちなみに、ここで見知った上官が


「おお、俺だ俺だ。ご苦労さん」


などと声をかけながら近づいてきたのを見て気を抜くと、どやしつけられることになる。

なぜなら、「誰か」の問いかけに対し、所属と官姓名を応えていないからである。見間違いで上官でなかったらどうするのか、というわけだが、工作員なら官姓名名乗るくらいの偽装はするだろ、とか突っ込んではいけない。


巡検の上官であることを期待して投げかけたフラッシュライトの光の先には、果たして、見覚えのない男が2人伏せていた。


「誰か!?」


改めて問いかけ、英語、アズガルド語でも誰何する。

多国間演習中故のわずらわしさであるが、なんとなく他国軍関係者ではない、という印象を抱いた。


「おい!動くな!伏せたまま、手を頭の上に乗せろ!」


すると1人が立ち上がろうとしたので、大声で威嚇し、立ち上がらないよう制する。

何事か男がしゃべっているが、何を言っているのかわからない。

おそらくアズガルド語なのだが、誰何と最低限の単語だけは研修があったが、日常会話には程遠いからである。

しかし、各国軍での事故を防ぐために決められた符丁を言わなかったことからも、少なくともこの基地の関係者でないことは明らかであった。


他の歩哨に不審者発見を知らせるため、警笛を吹いたのと、銃声が響いたのは同時であった。


撃たれた、そう思うと同時に、彼は意識を手放したのだった。




新世界暦2年1月29日 アズガルド神聖帝国 ドラスト大陸 セントーラス空軍基地 警備本部


「エプロン地区西側、JASDF(空自)の警備担当地区に武装工作員侵入!これは演習ではない!」


合同警備演習の開始は3日後ということで、慌ただしくはありつつもどこか弛緩した空気の流れていた警備本部は、一瞬にして戦場となっていた。


「JASDF警備要員が1名KIA!確認された武装工作員は6名、JASDF警備部隊と駆け付けたAFSF(米空軍警備隊)の追撃を受け北側へ逃走中!」

「HH-60がスクランブル。捜索を実施中」

「基地内の各地区を封鎖。以後4時間、無許可での地区移動を禁止する!各警備部隊は防御態勢を取れ!」


慌ただしく指示が飛び交う中で、ディスプレイには各種ドローンから送られてきた映像が表示されている。

その情報も確認しながら、各所からの報告を確認し、また指示が更新される。


「連中を絶対に逃がすな!生死は問わない!」




新世界暦2年1月29日 アズガルド神聖帝国 ドラスト大陸 セントーラス空軍基地 滑走路北側


「隊長、もうダメです。置いて行ってください」


脇腹に銃弾を受けた1人がこれ以上は走れない、と音を上げる。


「貴様、その意味がわかっているのか!」


わからないはずがない。

情報部員は「捕虜にはなれない」のである。


「手榴弾をください。時間を稼ぎますから、その間に隊長たちは離脱を」


その言葉に隊長は黙って手榴弾を渡す。

万に一つも生きたまま捕まってはならないのである。

捕まってしまえば、拷問だろうが薬物だろうが何でもありの尋問が待っている。

例え、どれだけ推察されているとしても、所属だけは吐くわけにはいかないのである。


「・・・行くぞ」


隊長はそう言って部下を促し、再び走り出す。


何かを警備していた歩哨に見つかり、誰何された。

ここまでは想定していた事態である。

当初の想定では、見つかった場合は迷い込んだ作業員を装って近付き、ナイフで始末する、というものだったのだが、歩哨が躊躇いなく警笛を鳴らしたので発砲する羽目になってしまった。


そして、第二の想定外は、警備の火力である。

彼らが持ち込んでいたのは自動拳銃と短機関銃であり、至近距離での制圧力は小銃装備の歩兵など相手にならないはずだったのである。

しかし、実際には基地内の警備は空自の基地警備隊と米空軍警備隊がいた上に、そもそもアズガルドの警備兵も合同演習の機会が多いからと、M16などの自動小銃が優先的に配備されていた。

これでは射程で負けている分だけ不利である。


警備犬の吠える声や車両の音はどんどん近付いてくる。

手榴弾の爆発音も聞こえた気はするが、なにやら上空を飛んでいる機体の爆音のせいで最早よくわからない。


上空からサーチライトで照らされ、警備犬と車両に追い詰められるのにさほどの時間はかからなかった。


投降を呼び掛けるであろう放送があったが、それを無視して光源に銃を向ける。

その彼らに向けて、毎分3000発の7.62mm弾が降り注いだのが今回の騒動の終わりであった。

次も1週間以内には

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― 新着の感想 ―
[一言] もう既に核兵器が飛び交っている戦場(アメリカ戦役)に派兵してんのに犠牲者1名で国会で取り扱うの?
[気になる点] 空自隊員に犠牲者が出ましたか [一言] 今話題のローカル5G警備システムを展開してれば或いは…… あれは陸自の機動展開も想定してますし
[一言] お疲れ様です むむ…犠牲者が出てしまいましたか。 警備側は下手に先制攻撃できないからなぁ 工作員たちは…ミンチよりひでぇや状態だなこれ(汗
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