会議は踊るよどこまでも
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これからも頑張りますのでよろしくお願いします。
新世界暦2年1月26日 アズガルド神聖帝国 帝都アガルダ 首相官邸
戦時体制でありながら帝都防空は他国任せといういまいち締まらないアズガルドだが、それでも戦争当事者である以上、戦争指導部は多忙である。
「とりあえず戦線はもとの位置まで戻ったか」
戦況図を診ながら首相のアルノルドは呟いた。
「無視できない損害は被ったがな」
ソファに座って分厚い戦況報告をげんなりして見ているのは、アルノルドと仲良しコンビ(他称)のランヴァルドである。
「やはり訓練不足だな。戦車が20輌近くやられてる」
「従来の戦車に比べれば敵を撃破できるだけマシだろ」
北海道で1輌も撃破できずに全滅したことを考えると、制空権を抑えた影響もあるとはいえ、敵に与えた損害のほうが遥かに大きい、というのは大きな進歩である。
「そうは言うがな、自衛隊や米軍の指導教官にも見せたが訓練不足の不注意による被撃破が半分という評価だった。戦車との直接の撃ち合いより、歩兵携行の対戦車兵器や各種対戦車ミサイルによる被害の方が大きい」
「敵が戦車を温存するためか、単純に自走できるせいかは不明だが、戦車の撤退は早かったと聞いているが」
「それでも戦車対戦車なら基本は大して変わらんさ。日本で訓練させていた奴らも、元々熟練した戦車兵だしな。だが、我々にとって未知の兵器だった対戦車ミサイルに対する習熟は不十分だ」
10式戦車のような敵対戦車ミサイルによる照準を検知すると自動で発煙弾を発射する機能が74式戦車にあるわけはないので、発煙弾の使用は車長の判断のみである。
対戦車ミサイルによる待ち伏せを受けそうな地形を警戒したり、仮に発射されても即座に反応して発煙弾を発射するような防御手段が取れればいいが、対戦車砲よりも小さく、設置場所の自由度が高い対戦車ミサイルにたかだか数か月の訓練で対応しろ、と言うのは困難だ。
そもそも、その期間のほとんどは74式戦車への習熟に充てられていたのである。
「幸か不幸か、明確な脅威が現れたことで我が国にかけられていた兵器の購入制限は緩和される方向のようだし、これから増々教育が課題だな」
「それ以前に、どんな兵器をどの程度いれたらいいのかがわかる人間がいないからな。向こうの言いなりで買わされるとキリがないぞ。まずは上の留学や研究を進めさせんと」
目先の問題があるにも関わらず、先のことも考えないといけない、なんていうのは軍人時代には無かったことである。
いくら将官だったとはいえ、大局から見れば現場組だったということである。
「いくら予算があっても足らんな」
「今更だな」
また予算案組み直しか、とゲンナリする2人だった。
新世界暦2年1月26日 日本国東京都 内閣総理大臣官邸
「戦争してるのに経済は無視か」
「不景気で支持率下がるよりいいでしょ。いつの時代もみんな自分の財布のほうが心配ですから」
自国に戦火が及ばない限りは、と官房長官は付け足す。
「まぁ、それもそっかー。景気さえよかったら仕事してなくても文句言われないもんねぇ」
うんうん、と首相は1人で納得しているが、官房長官はそれを凄まじい顔で睨んでいる。
「アズガルドの装備制限の緩和の話が出てますから、防衛装備庁は裏でいろいろ動いているようですよ」
とりあえず仕事しろや、と言った感じで話題を振る官房長官だが、そんな軽い感じで処理していい問題なのかは謎である。
「いろいろってどんな?」
「F-3開発費用負担させようとかいう話が出てるみたいですね。まぁ、F-3はやりすぎでも、装備開発に金出させる話はでてますね。共同開発でもなんでもない、ただの出資ですが」
「そういえばF-3ってどうなってんの?」
「予定通り順調に遅れてますよ?」
「・・・順調?」
「航空機開発は遅れるモノでしょう」
だったら最初からそれを織り込んで開発計画を立てろと言う話だが、それでも遅れるのが最近の航空機開発である。
プログラム周りの開発が膨大になりすぎたうえに、モノの性質を考えるとバグ潰しを人海戦術でやることもできないせいである。
「まぁ、せっかくの市場だし、アメリカとかに荒らされる前にうまいことやってよ」
「供給能力の問題もありますし、今みたいな感じで行くしかないんじゃないですかね」
とりあえず民間含めて自動車市場は押さえたし、兵器関連はある程度アメリカにもやるかぁという特になんの変更もない方針で固まったのだった。
新世界暦2年1月26日 アメリカ合衆国ワシントンD.C. ホワイトハウス
「アズガルドの方はどうにかなりそうか」
戦況報告を見ながら大統領が声をあげる。
「敵本土の防空能力は完全に無力化しました。敵中枢にも一撃いれましたし、後は我が軍は支援だけでもどうにかなるでしょう」
結局戦費の節約になったのかどうか微妙な大規模航空攻撃と兵器試験だが、後は他のAPTO加盟国だけでどうにかできるだろう、という国防長官。
「しかし、ラストール・オーストラリア方面が不穏です。あちらは我が軍とラストール、オーストラリアしかないですからね」
「空母も含め、アズガルド方面から兵力を振り替える必要があるかと」
終わった話をする政治家とこれからの話をする軍人。
逆のような気もするが、戦争の話だとわりとあることである。
「ラストールの自己防衛能力は?」
「F/A-18による最初の飛行隊が発足はしましたが、搭乗員は訓練中で、曲がりなりにもアラート待機が可能なアズガルド以下ですね」
「アズガルドの本土防空を他の国に引き継いで、ラストールに派遣するほうがいいでしょうね。オーストラリアに余力はないでしょうし」
国土が広い割に人口が、というか人の住んでいるところが少ない国な上に、元々本土防衛とかあんまり考える必要が無い立地だったので、現状では外征なんてしている余裕はないのである。
「それはいいが、アズガルドの防空はどこに引き継ぐんだ?」
「どこでもいいのでは?台湾あたりが航空戦力を派遣したがっていましたし、適任かと思いますが」
「それこそ平時ならアズガルドやラストールが自前の能力を持つまで、バルト3国の領空警備のような持ち回り態勢を構築するほうが良いでしょう」
使えるものは使おうぜ!という姿勢ではあるが、そもそもAPTO加盟国で他国の領空警備に出す戦力がありそうなのは日英台の他はシンガポールとバーレーン、オーストラリアだけである。
「中国が大規模な正規戦に突入したのは確実ですし、ロシアの動きにも注意が必要です。使える手駒は増やしておくに越したことはありません。・・・欧州は微妙ですが」
「勝手にロシアに喧嘩を売ったバカ共のことなど知るか!」
ウクライナがロシアに仕掛けたバックに独仏とベネルクス三国がいるのは各種情報から確実であり、ロシア軍との直接交戦まで疑われている状況である。
NATOはほぼ瓦解しており、欧州全体としては、ウクライナを取り込んで南進を進めようとする独仏ベネルクス三国にデンマークの陣営、ロシアを危険視して対米関係を重視するポーランドを主とする東欧諸国やバルト三国、スカンジナビア三国の陣営、何やら勝手に動き回っているのかなんなのかよくわからないイタリア、スペイン、ポルトガルの陣営と、三者三様のバラバラである。
「もう少し使える手駒が欲しいな」
やれやれ、と大統領は溜息を吐いたのだった。
新世界暦2年1月26日 アトランティス帝国 帝都 帝国評議会事務棟 会議室
アトランティス帝国の政治中枢である帝国評議会が開催されていたが、いつも使われていた無駄に立派な議事堂は、彼らの公式発表が言う「隕石」に吹っ飛ばされたので、普通の会議室で開かれていた。
戦況の割には強気な言葉が飛び交う室内だが、結局のところ、派遣軍は進むことも引くことも出来ずただ干上がるのを待つだけなのだが、はいそうですか、と言えるほど小さな戦力では無い上、本土も丸裸である。
打開策の無い会議は踊り続けるのだった。
次も1週間以内を目指しますが、ちょっとオーバーするかもしれません。2週間以内にはどうにかしますので気長にお待ちください。




