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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦2年
179/201

おかしいと感じたら立ち止まることが重要

新世界暦2年1月20日 アズガルド神聖帝国本国東島 アトランティス帝国外征軍団司令部 空中要塞「クリティアス」


「前進せよ!数は我が方が圧倒的優位だ!一気に敵防衛線を突き破り後方を脅かせ!」


昨日は2キロしか戦線が進まなかったことで鬱憤の溜まっている司令官は大声で怒鳴り散らす。

もっとも、状況が昨日と変わらないわけではなく、新たに機甲軍団が戦線に投入されており、その物量でもって敵を押し潰せるはずであった。


「航空部隊は全て出せ!総攻撃だ!」


そもそも1日で増援が届くなら、攻勢の開始を1日待てば良かったのでは?と言う話だが、威力偵察のつもりで攻勢をかけてみると思った以上に敵の火点が少なかったのでとりあえずの戦力で前に出たのである。

結果は散々なものだが。


敵の火点が少なかった、というのは単純にドローンによる偵察と、部隊間のデータリンクで同一目標を重複して射撃したりすることが無いので、必要最低限の射撃しか行っていなかったから、ということは彼らには知る由も無いのだが。

というか、いくら火点が少なくても、威力偵察に出た部隊が次々に壊滅していたのだから、おかしいことに気付くべきだったのである。


それはさておき、さすがにもとの2個歩兵師団にさらに1個機甲軍団の増援を受けた60年代~70年代レベルの機甲部隊が相手では、いくら情報面や技術面で優位とはいえ、正面に展開したシンガポール軍は1個師団。それも編成としては小規模な1個師団である。

アトランティスの第2機甲軍団は2個戦車師団と3個機械化師団からなる大兵力である。

それをこの短期間でアズガルドに輸送したアトランティスの即応能力もバカげているが、そんな量の戦力を狭い戦線正面にぶつけているのもだいぶバカげている。


「海軍も進ませろ!使えそうな港湾を押さえ次第、新たな補給拠点の設営を急がせる必要がある!」

「本土基地から飛来する戦略爆撃飛行隊があと30分で作戦エリアに入ります。爆撃目標の指示が必要です」

「昨日上陸させた砲兵師団はどうなっている?師団編成は後回しで自走化部隊から優先で戦線に送れ!」


多数の無線と紙が飛び交う司令部も前線とは違った戦場である。


「飛行可能な作戦機は全て武装して上げろ!」

「支援可能な砲兵が足りない!航空支援はまだか!?」


慌ただしく飛び交う情報に、まだこの一大攻勢を脅かす「影」は無い。

もっとも、そのことを知るのが遅れれば遅れるほど、傷口は大きくなるのだが、彼らが望むと望まないにかかわらずその時は刻一刻と迫っていた。

勿論、それを知る者はこの部屋にはいないわけだが。


その異変は、輸送船団との通信を担当していた部署から始まった。


「なんだこれは!?」


本国との間のピストン輸送を担当していた輸送船団からの定時暗号電文を受信した担当者は、その内容に目を疑った。


「兵員輸送船4隻と重装備輸送船5隻が撃沈!?その他4隻が航行不能!?」


担当者が思わず上げた声に、周囲にいた通信員達や士官がビクリと一瞬動きを止める。

その一瞬の後、それまで通りに全員が動き出す。

自分の担当ではない暗号通信の内容は知ってはならないことになっているためであるが、じゃあその通信員が非番や休憩中はどうすんだよ、と言う話もあり、その実、わりと建前的な部分もあるので、思わず声を上げてしまった通信員のことは見て見ぬフリをすることにしたのである。


「護衛艦艇は何をしていたんだ」


一応、制圧済みとされる海域ではあったが、大規模な輸送船団を組む以上、対空、対潜ともにそれなりの護衛がついていたのである。


「は?帝都が空襲?帝都防空施設がほぼ壊滅?」


今度は帝都の空軍作戦本部との通信を担当していた通信員が声を上げる。


「え?レーダーサイトと対空ミサイル基地も被害甚大?一体何が・・・?」


本国は丸裸になっている、ということに他ならない。

別の通信員が呟いたことも合わせると、敵はこちらの侵攻部隊を無視して、アトランティス本土、つまり後方を徹底攻撃することにしたということになる。

後方が潰された侵攻軍を待つものは万国共通、物資不足による戦闘能力の喪失。それだけで済めばいいが、さらに行けば飢餓地獄である。

なんせ敵は待っているだけでこちらは勝手に弱っていくのである。


「戦闘空域に接近する未確認の大規模編隊を確認!これは・・・高度12000(メートル)速度950(Km/h)・・・レシプロ機ではありません!」


思ったよりも早い破滅の訪れに、通信員は思わず悲鳴のような声を上げたのだった。




新世界暦2年1月20日 日本国東京都 防衛省中央指揮所


「反攻作戦の第一段はまずは成功のようだな」


各所から送られてくる情報が統合して表示された大型ディスプレイを見ながら防衛大臣は安堵の息を吐く。


「戦闘地域上空の航空優勢は日英米合同部隊によって確保されており、間もなく地上攻撃が開始されます」


空自は幕僚長以下ほとんどが横田にいるので、防衛大臣についているのは作戦課長である。


「アトランティスとアズガルドの間の海上輸送路の遮断は、巡航ミサイル攻撃を終えた英米海軍の潜水艦も加わりますので、計画通りに進むと思われます」

「アトランティス本国の防空網はほぼ無力化されました。敵輸送機の発着拠点と物資集積所だったと思われる基地も破壊されましたので、敵地上部隊は現有戦力と物資のみで戦闘を継続することになるでしょう」


あとは敵侵攻戦力を封じ込められれば時間が解決してくれると暗に陸幕長は告げる。


「弱らせれば今の地上戦力だけでも決着を着けられるかね」

「シンガポールと台湾の2個師団だけで掃討するのは厳しいでしょうが、一応アズガルドの戦力もありますし、どうにかなるでしょう」


彼らの国ですしね、と陸幕長は付け足す。


「それよりもアズガルドに持たせる兵器に関する縛りを見直す必要があるでしょう。今の縛りでは、特に航空戦力が貧弱すぎます。以前も議題に上がった通り、視界外交戦能力くらいは持たせる必要があるでしょう」

「そうはいうが、防衛産業の絡みもあるしなぁ」


部隊からは全て引き上げられたが一応他国で言う保管機扱いで解体されずに残っているF-4EJや、F-35の配備に伴い一線を引く予定のF-15SJなども供与するかどうかの議論は何度も交わされていた。

しかし、従来はアズガルドの戦力を縛る方向の意見が強かったことと、せっかく純国産機の輸出先が出来たのだから、1機でも多く買わせようという産業界の要求もあり、沙汰止みとなっていた。


「F-1Cに視界外射程(BVR)ミサイル運用能力を持たせることは可能でしょう」

「いや、あの機体をどこまで魔改造する気なんだよ・・・」


現役時代でさえ能力不足とされた戦闘機のベースとなった練習機に、フライバイワイア(FBW)とカナード翼をつけた技術試験機。

これがT-2CCVであり、それをF-1にバックフィットし、純国産のF-5エンジンを無理矢理押し込んでレーダーを今も手に入る外国製にしたのがF-1B、さらに自己防御装置や一部兵装の運用能力を追加したのがF-1Cである。

それをさらに魔改造するというのだから、A-4やMig-21並の魔改造ぶりである。


しかし、そもそもF-1に搭載されていた国産の火器管制システムであるJ/AWG-12がもう生産できないからと言う理由で、小型軽量で何にでも搭載できると評判のイスラエル製EL/M-2032を採用したが、EL/M-2032にはBVR戦闘能力がある。

AIM-120の運用能力はないものの、イスラエル製のダービーなら兵装パイロンとデータバスさえ対応させれば運用できるし、(スペースがあるかどうかはともかく)指令誘導装置のJ/ARG-1を搭載すればAAM-4の運用も理論上は可能である。


「とりあえず先の話はまたすればいいか」


そう言って防衛大臣は目先の問題に意識を移したのだった。

次も1週間以内で

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― 新着の感想 ―
[一言] >おかしいと感じたら立ち止まることが重要 >威力偵察に出た部隊が次々に壊滅していたのだから、おかしいことに気付くべきだったのである。 そもそも気付かなければ立ち止まって考えることすらも出来…
[良い点] 遂に始まった技術差無双。もっとやれ。 [気になる点] なんせ敵は待っているだけでこちらは勝手に弱っていくのである。 なんせ(こちら)は待っているだけで(敵)は勝手に弱っていくのである。 な…
[良い点] いいぞもっとやれ [気になる点] 『F-4』くらい余裕のある設計ならともかく……『F-1』ってそんなに大きくないイメージですが……大丈夫でしょうか? [一言] なんだかんだ言ってもイスラエ…
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