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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦2年
150/201

いろんな国、いろんな反応

新世界暦2年1月1日 アメリカ合衆国バージニア州 ノーフォーク海軍基地


日本がぐだぐだと対応しているころ、アメリカはもっと激烈に反応していた。


世界最大の海軍基地とも言われるノーフォーク海軍基地を空母打撃群が緊急出港していく。

原子力空母ジョージ・H・W・ブッシュ、ハリー・S・トルーマン、ミサイル巡洋艦ノルマンディー、アンツィオ、ミサイル駆逐艦スタウト、ミッチャー、マハン、ウィンストン・S・チャーチル、メイソン、ベインブリッジ、原子力潜水艦ニューポート・ニューズ、高速戦闘支援艦サプライ。

通常の哨戒行動中の艦も含むので、その全てが出港していくわけではないが、それでも休暇中だった乗員を無理やり呼び戻して次々に出港していく艦を見れば、何か尋常ならざる事態が起こったことは明確である。


さらに他の基地からも原子力潜水艦や巡洋艦、駆逐艦が次々に出港しているのだから、「遭難信号を発信して連絡の途絶えた民間機の捜索」と言われても誰も「はい、そうですか」とは思わない。

しかし、日本政府もアメリカ政府も、というか、衛星を保有するすべての国が、突然未知の陸地が増えたことについて、一切発表していなかったので、一般的には民間機の大量遭難がニュースになった程度で、社会は平穏を保っていた。


一部の軍関係者だけが、この緊急出港を不安げな表情で見送っていたのだった。





新世界暦2年1月1日 アメリカ合衆国ワシントンD.C. ホワイトハウス


「当該海域に向かわせられる艦艇は全て向かわせています」


受話器を置きながら国防長官が大統領に告げる。


「くそっ!やっと落ち着いたと思ったらこれか!」


ドン、と大統領はテーブルに拳を叩きつける。


「現在、空軍も電子偵察機を飛ばして情報収集を行っています。初報では、どうやら不明国は防空レーダーを含む防空システムを有しているらしく、通信電波も受信できており、解析中とのことです」


厄介なことになりそうです、と空軍参謀長は渋い顔をしている。


「それよりも大統領、マスコミへの発表はどうします?他国に先に発表されてしまうとまた煩いですよ」

「そうは言うが、なにもわからないことをどうやって発表するんだ?」

「事実だけを述べて、あとは調査中で煙に巻くしかないでしょう」


補佐官がさっさとマスコミに言うだけ言え、と大統領に促すが、大統領は気乗りしない、という表情を隠そうともしない。


「どのみち接触したところで言語問題がありますし、すぐには何もわからないでしょう。でしたらさっさと未知の存在が増えたことだけは発表しておく必要があるとおもいますがね?」


どこかが発表してからでは遅いですよ?と補佐官は再度大統領を促す。


「大統領、日本の首相からホットラインです。増えた陸地について報道発表するかどうかの相談だそうです」


国務省の通訳担当が大統領を呼び出す。


「中国やロシアが何か発表してしまう前にさっさと言っちゃうべきだと思いますがねぇ」


味方同士で談合しても勝手に発表する奴らが勝手に言っちゃうだろ、とホットラインに出るために執務室に向かう大統領の背中を見ながら、補佐官は溜息を吐くのだった。





新世界暦2年1月1日 イギリス ロンドン ダウニング街10番地


鳴り止まない電話にややうんざりしながらこの国の首脳部(内閣)は打ち合わせを続けていた。


「日本とアメリカから提供された衛星画像によると、BA機はUA機、DL機、CI機とまとめて同じ空港に留め置かれているようです。乗員、乗客の状況が不明ですので、救出作戦を強行するのはリスクが高いですね」

「というか、BA機だけでも200人近いんだろ?そんなもんどうやって救出するんだよ」


敵地(仮)で捕らわれた200人とかどうやって救出するんだよ、と首相は無理ゲーと匙を投げる。


「イスラエルが過去に成功させてますね」


ウガンダのエンテべ国際空港奇襲作戦で、歴史上稀に見る大規模、かつ大胆な(敵地での)ハイジャック制圧、人質救出作戦が成功した前例がある。


「いや、よく知らないけど、それやった国(イスラエル)の時点で嫌な予感しかしないからいいや」


実際、複数国の領空侵犯で目的地に侵入、地上支援なしで(夜間に)隠密着陸、現地のウガンダ兵と銃撃戦、とイスラエルらしさ全開の強襲作戦である。


「というか、また変な陸地が増えたとか、これくっついた世界がもう1個追加ってこと?」

「そう考えるのが自然じゃないですか?詳細はわかりませんが」


ちなみに、これについては未知のことを知るには便利なの(ウルズ)を有している日本もよくわかっていない。

もちろん、首相官邸はウルズを使って情報を得ようとはしたのだが、その本人が妙にポンコツなところがあるので、”この世界の状況の全て”を知ろうとする暴挙に及び、その情報量にパンクしてしまったのである。

よって、ウルズは北条の膝枕で再起動待ちの状態で、今、世界の状態を正確に把握している人間は誰もいないのである。


「アメリカは一応捜索救難名目とはいえ、原子力空母2隻とか、何する気なんでしょうね?」

「うちは空母ださなくていいの?」


そういやうちは日本にいた駆逐艦1隻だけだけど、それでいいの?と首相は国防相に聞いてみる。


「アメリカくらい数があればローテーション回せますけど、うちは2隻しかないんですよね」


去年のスケジュール考えてみ?と国防相は言うが、本土決戦の航空支援に全力出撃していたアメリカも別にローテーションに余裕があるわけではない。

というか、むしろ過剰労働だが、アメリカはそれだけの事態だと判断した、ということである。


「多島海側からは日本が4隻、我が国が1隻と後追い1隻、アメリカが2隻に、台湾が4隻派遣とのことですから、とりあえずどうにかなるでしょう。捜索救難名目ということでシンガポールも1隻派遣するらしいので、まぁ空母がいない以外は相当な戦力ですよ」


もっとも、問題は艦隊防空艦がアメリカの2隻だけだということだが。

いや、一応、世代を無視すれば台湾が派遣する2隻も一応、艦隊防空艦ではあるのだが、アメリカでは「いらないよね」とMk13ミサイル発射機を撤去されてしまったOHペリー級である。


「それに相手の立場で考えるなら、突然領空内に現れた航空機をいきなり撃墜しなかったのですから、十分話し合いの余地はあるのでは?」

「そうだといいが、自国の航空機を拿捕されたんだ。軍事的圧力があるのと無いのでは向こうの出方も違うだろう?」


やられっぱなしだと舐められるだろ?という実にアングロサクソン的思考だが、外交なんてそんなもんである。


「それ以前の話として、去年の我々の状況、と考えると多分何もわかってないですよね」

「少なくともレーダーによる警戒網と超音速ジェット戦闘機を配備している国ですよ?敵対したら面倒なことになりますし、ここは穏便に行くべきでは?」


やっと経済に注力できるようになったと思ったらこれかよ、と何人かの閣僚は不満の声をあげる。

そんなことを言ったところで、起こったことは仕方ないので、対処しなければならないのだが。


「穏便も何も、すでに向こうに我が国の国民が捕らわれている状況ですよ?世論に弱腰と見られるのは避けるべきでしょう」


その一言に、参加者全員の頭に「選挙」という文字が浮かぶ。


「とりあえず、APTO加盟国と連携しつつ、軍事的圧力をかけて機体と乗員、乗客の返還を目指す、という基本方針でよろしいか?」


その首相の言葉に全員が頷き、会合は散会となったが、散会にしてから、また転移してきた国があるらしいことをどのタイミングで公表するよう衛星を持つ日米に要望するか決めるの忘れてたじゃねぇか、と首相は1人で頭を抱えることになるのだった。





新世界暦2年1月1日 台湾国 台北 総統府


国名を台湾に改めた当初は国内で一悶着も二悶着もあり、混乱したものの、結局のところ大陸との関係が物理的にもぶった切られてしまったので、いまさら中国を名乗っても面倒なだけだろう、という結論に落ち着いた。

落ち着いてしまえばそこからの動きは速かったのだが、軍に関してはそんなに急には変わらないので、まだまだ各国と新装備の輸入交渉をしている段階である。


結果的に遠方への展開能力は相変わらずのままなので、今回の民間機遭難でもろにその欠点が露呈していた。


「行って帰ってくるだけならいいですが、現地で何らかの行動、例えば他国との艦隊行動や、それこそ不明国家との睨み合いなどになった場合、燃料が不足します」

「海軍が保有する補給艦は2隻のみで、1隻はドック入りで、もう1隻も去年の酷使が祟って、中身空っぽで帰投中です」


総統に捜索救難任務で派遣した海軍部隊の説明をしていた海軍士官達は、お手上げ、とバンザイをする。

それをやや冷めた目で見ながら、総統はバンザイしたままの海軍中枢に尋ねた。


「で、それを私に伝えてどうしろと?」

「「日本かイギリスかアメリカあたりにお願いして補給艦出してもらってください」」


最後にハートマークがつきそうな媚びる声を出した海軍士官をぶん殴りそうになるのを堪えながら、総統は重ねて尋ねる。


「それだけか?」

「「日本かアメリカから新しい軍艦買いたいな」」


再びハートマークのつきそうな甘ったるい声を出した士官に、ついに総統がキレた。


「補給艦の要望は外交部からも日米英に出してもらうが、お前らもパイプあるだろ!?そこも使え!あと、軍艦購入は既定路線といえ、今言うことじゃないよな!?」


バレたか、という顔をしている海軍士官に、再び総統はキレそうになるがそこは抑える。


「とにかく、なんとしてでも機体と乗員、乗客を取り戻す。この決意で臨め。軍の能力不足についてはマスコミも上手く使って、予算増額の方向に持って行く」


そう言うと総統は海軍首脳陣を追い出した。


「とはいえ、原資がなぁ・・・」


いまいち芳しくない経済指標を眺めながら、総統は溜息を吐いたのだった。

次回も1週間以内に

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― 新着の感想 ―
[一言] あれー、台湾総統は女性じゃ無いの? と思ったけど三選禁止で任期四年だから交代してるか…。 いやしかし、遂に冷戦期の国家が参入。ワクテカが止まりませんな。 あと月どうなってんかね。月観測して…
[一言] まーた面倒な事になってるよもう… ともかく、日米は即座に動く一方で、台湾はちと足踏み状態…今後はどの様に進むのやら…
2020/08/18 20:59 退会済み
管理
[一言] ぶっちゃけ技術的に格下を相手にしてた今まで(楽じゃなかったけど)と比べて今回は勝手が違いそう。 アメリカ海軍の大規模出撃は何かのフラグか!読み進めて緊張感があります。
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