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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦2年
149/201

混乱再び

ぼちぼち再開しますが、更新ペースは従来よりゆっくりで不定期になります。

新世界暦2年1月1日 多島海・北米大陸間海域上空 ロンドン・ヒースロー発NY・J(ジョン)FK(ケネディ)行 BA155便


「こちらは機長です。ただいまGMT(グリニッジ標準時)正午です。当機はロンドン、ヒースロー空港を15分遅れで出発しておりますが、ジョン・F・ケネディ国際空港への到着は定刻通りの予定です。それでは、我が国が誇る昼食をお楽しみください」


機長の最後の一言に機内には小さな笑いが起こる。

誇る、とは言っていても、美味しいとは言わないあたりがなんともアレだが、別にウナギゼリーや星を見る魚のパイが出るわけではない、普通の食事なのでただの自虐ギャグである。


「さて、じゃあ私もいただくとするかね」


マイクを切った機長は副操縦士にそう言って先に昼食をとることにする。


「ええ、ごゆっくり。さきほどJL機とはすれ違いましたから、しばらく接近する便もありませんしね」


そう言う副操縦士も、自動操縦なので何も入らない無線をモニターしつつ、計器監視していただけである。


「1年でここまで国際航空路が戻ったんだから、GPS様様だな」

「ほんとですよ。しかし、天測より先にGPSってどうなんでしょうね」

「慣性航法と方位磁針はあるから大丈夫だろ」


この訳のわからない世界になってようやく1年。

天体の観測からして公転周期がほぼ360日ということがわかったので、30日でひと月として12月、という安直な新暦が制定されていた。

まぁ、転移からひと月経過した時点である程度の予想は立てられていたのだが、実際に1年経たないことには証明されないので、とにかくGPSが重宝されていたのである。

そのGPSもまだ衛星が足りないので、市街地でナビに使うには精度にやや難があったが、航空機で使用する場合なら慣性航法装置のずれを修正するには十分である。


「そういえば、アメリカの有人宇宙飛行再開の噂聞きましたか?」

「俺たちにゃ無縁だがな」


どうでもいいよ、という感じの返事をした機長に、副操縦士は夢がねぇなぁと溜息を吐く。


国際宇宙ステーションが消えてしまったことで、宇宙空間に浮かぶ有人拠点はゼロの状態である。

というか、そもそも、有人宇宙飛行自体、転移後は中国が一度やったきりで、どこも衛星の打ち上げを優先していた。

その衛星打ち上げも、大型の通信衛星やGPS衛星、偵察衛星が優先で、1基のロケットで複数打ち上げられる小型衛星や、それこそ一度に数十の衛星をばら撒けるマイクロ衛星は、運用寿命の短さと無秩序なデブリ拡散を招いた地球の轍を踏まない、という名目の元、どこも打ち上げていなかった。

実際のところは、打上国が自国の安全保障を優先して、衛星枠を全て押さえてしまっているのと、未だ復旧途上の海底ケーブル網の補完で通信需要が大きく、小型衛星では迅速に24時間接続可能にできたとしても、常時パンクしている状態になりかねない、という要因による。


「この宇宙の成り立ちを調べるなら、直接宇宙で調べるのが早い、とか言ってましたけど、この宇宙の成り立ちってなんなんですかね?」

「さぁな。日本がなんかよくわからん小難しい観測衛星打ち上げたはずなのに、その観測について何の発表もないしな」


よく知ってるじゃねぇか、と副操縦士は思ったが、機長が会話に乗ってくれたので黙っておく。


「国際宇宙ステーションの再建と、月(仮)への恒久的滞在拠点の建設、って他にもっと金を使うべき場所がある気がするんですがねぇ」

「実際、ISS参加国の中で、この計画に乗れそうなのってアメリカと日本くらいだろ。ロシアは中国との軍拡競争で必死だし、ESAは・・・機能してんのかね?」


ISSでも予算の問題が常に付きまとったのに、それを2ヶ国だけでやるなんて正気の沙汰じゃねぇな、と2人は笑う。


「ん、あれ?」


そのとき、無線をモニターしていた副操縦士が違和感に気付く。


「どうした?」


食事を続けながら機長が尋ねる。


「いえ、無線に突然ノイズが」

「周波数変えてみたらどうだ?近い周波数で発信してるやつがいるんだろう」

「国際緊急周波数ですよ?その付近で発信ってどんな嫌がらせですか」


というか、海しかないのにどこから発信してるんだ?と思いながら、ヘッドセットを外す。

一応、転移後の海上飛行においては国際緊急周波数を常時モニターするよう義務付けられてはいたが、全員が全員、律義に守っているか、というと怪しいものである。


「しかし、どこのバカだ?国際緊急周波数を妨害するなんて」

「わかりませんが、到着したら報告しておかないと」


現在地をメモしながら副操縦士は言う。


「お、止んだかな」


耳にヘッドセットを軽く当てて機長が言う。


「そのようですね。やれやれ」


副操縦士がヘッドセットを装着し直して、再び退屈な計器監視に戻る。ことはできなかった。


「なんだ!?」

「乱気流でしょうか?」


突然機体がガタガタと振動しだしたのである。


「念のため手動に切り替えよう」


食事のトレーを脇にやりながら機長が告げる。


「了解。操縦しますか?」

「いや、任せる」

「分かりました。操縦します(I have)


そう言って副操縦士は操縦桿を握る。

が、そこで2人の視界にあり得ない異物が飛び込んできた。


「戦闘機!?」

「どこから来た!?」


自機を追い越す形で前に出てきた双発のジェット戦闘機に、2人は驚愕の声を上げる。


「見たことない機体だぞ」

「ソ連機に似ている気がしますが・・・なんでしょうね」


全く心当たりのない機体に混乱するコクピットだが、それは窓から追い抜いていく機体を見た客室も同じであった。


「どうします!?」

「どうするもこうするも、何か指示があるんだろ、従うしかねぇだろ」


そう言って機長は全てのチャンネルを確認して何か警告が来ていないか確認するのだった。





新世界暦2年1月1日 日本国東京都 内閣総理大臣官邸


「俺の正月が・・・」

「諦めてください」


未練がましく雑煮を啜る首相を、官房長官がいつも通りぴしゃりと断じる。


「それで、どういう状況なの」

「第一報はJFKから羽田に向かっていたJL機、内容はBA機の遭難信号(メーデー)を受信したとの通報でした。続けて羽田からオヘア(シカゴ)に向かっていたUA機から同様の通報があると同時に、JL機から第二報として、アトランタから成田に向かうDL機の救難信号の受信と、第一報のBA機が不明戦闘機の迎撃(インターセプト)を受けていると通報してきたと報告」

「ていうか、日米間てもうそんなに飛行機飛んでたんだね」

「そりゃそうでしょ。日米間というか、日英と米の間、って考えたら同時に何機飛んでんだって話ですよ?」


暢気なことをいう首相に、官房長官が呆れたように告げる。


「まぁ、細かい経過はいいや。結果としてどうなったの?」

「結論から言いますと、多島海とアメリカの間を飛行していた旅客機4機が遭難しました。内訳は米国の航空会社が2機、英国の航空会社が1機、台湾の航空会社が1機、乗員乗客は合わせて1000名はいかないでしょうが、800は超えるでしょうね。米国籍の1機は到着地が成田ですから、相当数の邦人も乗っていたと思われます。これを受けて、4機が遭難時に飛行していた周辺空域は閉鎖、多島海とアメリカの間で迂回するほど航続距離に余裕のない便で欠航が相次いでいます」


はぁ、と首相は溜息を吐く。


「ほいで、我が国の対応は?」

「捜索救難の国際協力名目で護衛艦4隻を急派する予定です。横須賀寄港中だった英国艦1隻と、同じく横須賀配備の米海軍艦2隻も急行中」


まぁ、多数の航空機が一斉に遭難したんなら、そんなところに哨戒機は出せないし、初動としてはそんなもんかな、と首相は思う。


「で、その原因は?まさか自然現象じゃないんでしょ?」

「4機とも遭難信号(メーデー)を発信したうえで、不明機の迎撃を受けたと無線で報告しています。そして、衛星からの追跡では4機とも同じ場所に着陸させられたようです」

「着陸?」


はてな、と首相は首を傾げる。


「多島海とアメリカの間を飛行するってことは間違いなくワイドボディの大型機だろ?間にそんなのが降りられるような陸地なんてあったっけ?」


そもそも島すらないんじゃなかったっけ?と首相は首を傾げる。


「ええ、何もありませんでしたよ。大海原が広がるばかりです」

「じゃあ・・・」

「昨日まで、いえ、正確には本日の正午までは、ですが」


そう言って、官房長官は先ほど届けられたばかりの画像をタブレットに映して首相に差し出した。


「・・・なんか増えてない?」


まじまじと画像を見たうえで、絞り出すように首相は声を出した。


「増えてますね」


無慈悲に官房長官が告げる。


「・・・これやばくね?」

「やばいでしょうね」


うわぁもうやだ、と顔に書いてある首相に官房長官は無慈悲に告げた。


「惑星の面積が4倍になってたのに、やってきた世界が3つ。そこに1つ追加されて、ちょうどバランスが取れたってことじゃないですかね?」

「いやいやいや、そんなバランスいらないから」


まじでどうなってるんだこの世界、と首相は頭を抱える。


「とりあえず、不測の事態が起こることは十分考えられます。自衛隊に出動待機命令と、捜索救難で派遣する護衛艦は完全武装、かつ後続は準備する必要があるかと」

「ああ、さらば俺の安息の日々」


首相は嘆くように声を絞り出したが、官房長官は密かに、そんなもん転移からこっち元々無かっただろ。と思ったのだった。

クソ長い設定を上げといて直後にそれをぶっ壊していく作者がいるらしい(白眼

まぁ、もともとこうするって決めてたし、むしろあのタイミングで設定まとめたこと自体がイレギュラーということで。

次は一週間以内であげます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 新たなお友達のエントリーだ!!
[一言] 月にUFOとかいないたら面白そうって思ったw(テレビでタスクフォース?なる米軍組織をやっていたので) 次の更新はテスト終わりの楽しみにとっておきます!
[一言] そうか…ついにスペースナチスが襲来したのか…
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