〇〇〇はすごいぞ!最高だ!
昨日できてたのに更新忘れてたとかそんなわけないし(震え声
新世界暦1年12月16日 ラストール王国 王都第二軍港
「どうしたものか・・・」
人民統制委員会の艦隊侵攻と、アメリカ海軍への攻撃が明らかになり、入港したアメリカ海軍も交えて明け方から緊急の対策会議が開かれていた。
結局、人民統制委員会の艦隊の進路からして、アメリカ海軍は巻き込まれた形だったので、米空母は追撃を受けず、逆に大型飛行艇1隻の撃沈に成功していた。
「どうにも敵のバリアの様子が旧タスマンとは違う印象ですね」
「だろうな。そうでなければポーターが全弾打ち切らないと撃沈出来ない、なんてことにはならん」
空母攻撃隊が撮影した映像を見ながら、米海軍艦隊司令と空母艦長が話している。
ラストール側は、飛行船でもないこんなデカブツがこのスピードで飛ぶの?と言った感じで目を見開いている。
ちなみに、入港した米海軍は空母とLCS、補給艦のみで、被弾し大破したニッツェをポーターが曳航しているので駆逐艦2隻はまだ到着していない。
もっとも、来たところで1隻は早急にドックに入れる必要がある損傷、もう1隻は弾切れである。
「2隻が入港後にニッツェのミサイルコンテナをポーターに積み替えますか?」
そうすれば交戦可能な駆逐艦が1隻出来上がる。
「傾いた船体からミサイルを抜くのか?どうやって?」
ラストールのドックに入れようにも、アーレイバーク級の図面があるわけではないので、下手をすればドックで水抜きしたら台座が合わずに横転、なんてことにもなりかねない。
「オーストラリアに残った2隻が急行中ですが、敵の侵攻までには間に合わないでしょう」
オーストラリアに残っていたタイコンデロガ級巡洋艦と、アーレイバーク級駆逐艦が、豪州海軍2隻も伴って急行してはいたが、到着にはどんなに急いでも数日かかる。
そのころには大型飛行艇はとっくにラストールの内陸に入り込んでいるだろう。
「とにかく数撃ちゃ当たるで数を突っ込むしかない。ありったけの航空機と艦艇をかき集めよう」
微妙に現代技術が入ったレシプロ機を配備しているアズガルドと異なり、ラストールは地球で言うと純然たる1940年代前半の航空機である。
下手をすれば爆装した急降下爆撃機は大型飛行艇に速度で追随できない可能性すらあるが、何もしないよりましである。
「アメリカ海軍の航空機の援護は期待できますか?」
ラストールの参謀の問いに、空母艦長は力なく首を振る。
「先の交戦で対艦、対地攻撃用の弾薬は軒並み射耗した。対空兵装は潤沢だから、露払いや防空戦闘なら問題ないが、大型飛行艇相手には期待しないでくれ」
そもそも、空母の弾薬庫はラストールにF/A-18A/Bと一緒に引き渡す予定の対空ミサイルが場所を取っていたので、大型の対地攻撃兵装はかなりの数が降ろされていた。
「いずれにせよ、迎え撃たないという選択肢は無い。我々は出撃しますが」
「我々も出撃はするさ。雪辱は果たさんとな。しかし、何の手立ても無い、ではな」
米海軍司令は苦虫を噛み潰したような顔をする。
そもそもこの方面での米軍の戦力集積と補給体制の構築はまだまだこれからの状況であり、限られた手駒だけで厄介な相手と戦わなければならない、というのは圧倒的物量で相手を押し潰してきた米海軍では考えもしなかったことである。
「ん?あれは?」
なにか手はないか、と窓の外を見遣った米海軍司令は、見慣れたレーダーを艦橋に貼り付けた軍艦が入港してくるのを見つけたのだった。
新世界暦1年12月16日 ラストール王国 王都港湾地区
第二軍港に隣接する商業港地区に入港する船団を眺めながら、艦長は長く息を吐いた。
「これでやっとゆっくりできる」
「まだ復路がありますけどね」
海上自衛隊初のイージス艦として就役したこんごうだが、ぼちぼち入れ替えの話もでてくる艦齢であり、艦齢延長工事をして二桁護衛隊に、なんて話もでていたが、各地の航路護衛に駆り出されている海自にとっては貴重な艦隊防空艦である。
もっとも、ヘリコプター格納庫を持たないので、船団護衛目的では微妙に使い難いのだが。
日本からラストールに向かう、4隻の自動車運搬船と4隻のコンテナ船を護衛してきたのである。
なお、燃料補給とヘリコプター搭載のため、補給艦ましゅうも同行している。
ましゅうは本来、哨戒ヘリコプターを搭載するようにはなっていないのだが、「格納庫自体はあるから大丈夫」というよくわからない理論でSH-60Kを運用させられていた。
艦首と格納庫上に急遽取り付けられたMk15Block1Bがこの世界の不安定さを物語っている。
「おや、ニミッツ級がいるな」
「オーストラリアを訪問していた艦隊でしょう。他の艦が見当たりませんが」
まさか(また)交戦状態に入っているとは知る由も無い自衛官たちは暢気なものである。
「出港は2日後か。ゆっくりもできんな」
「給油と生鮮品の積み込みくらいですから、半舷で半日くらいは上陸させられますかね」
「だといいけどな」
なんとなく嫌な空気を感じつつ、艦長はお土産くらい買いたいなぁ、と思うのだった。
新世界暦1年12月16日 ラストール王国 王都第二軍港
「そういうわけで作戦の組み直しです」
米海軍司令が宣言する。
部屋には米海軍、ラストール海軍、そして海上自衛隊の士官が集まっていた。
「しかし、駆逐艦1隻増えたところで作戦に何の変更が」
ラストールの士官の1人が声を上げる。
まぁ、ラストールの感覚で言うと巡洋艦くらいのサイズだが、こんごう型護衛艦の分類はDDG。駆逐艦であるDDに、艦隊防空ミサイルを装備していることを示すGがついた、れっきとした駆逐艦である。
「「でも今の駆逐艦はすごいぞ!最高だ!」」
なぜか米海軍の士官と海自の幹部が、そのラストールの士官に同時に同じことを返したのでラストール側は若干引いている。
「今はチキンブリトーを食ってる時間も惜しい。作戦を確認する」
そして微妙にのっかる米海軍司令。
「確認された敵大型飛行艇は全部で3隻。うち2隻はすでに墜としている。残る1隻をどうにかできれば、あとは在来型の艦隊。対艦ミサイルで削れば、ラストールの艦隊が苦も無く殲滅できる」
問題となるのはバリア持ちの大型飛行艇のみだとはっきり宣言するが、それがどうにもできないから困っているのである。
「旧タスマンとの交戦で確認された障壁持ちは、一度発動させてから障壁が消えるのを待てば、その後攻撃し放題だったが、今回確認されたのは障壁が時間経過で消失する様子が無い」
その言葉にわずかに日米側がざわめく。
「結果的に力押しで障壁を突破する形になり、我が軍は弾薬が底をついた。被弾大破して曳航中のニッツェには残ってるが、船体が傾いており、積み替えている時間はない」
そこで米海軍司令は海自の方を見る。
「だが、幸いなことに同型といって差し支えない艦が増援に現れてくれた。ミサイル飽和攻撃で一気に大型飛行艇を沈める」
アメリカとラストール側でおお、と歓声が上がるが、海自側は渋い顔をしている。
「あー、その作戦には問題がありまして・・・」
言い難そうにこんごう艦長が発言する。
「ミサイルが・・・」
「は?」
「ミサイルが足りません・・・」
こんごう艦長の告白に、ええ・・・という白けた空気が室内に広がる。
「ポーターが敵大型飛行艇を撃沈するために発射したミサイルがSM-2及びSM-6で42発、最後にSM-3が1発、ですよね」
「そうだな」
「SM-3は私の一存では使えませんし。というか、そもそもどうやって命中させたんです?」
「誘導コース上に無理やり目標を入れたらしい」
ぼそっと米海軍司令が、なんであいつ勝手に使ってんだよ、と言った感じで呟く。
「いま我が艦に積んでいるSM-2は30発しかありません」
うち貧乏なんで、と自虐的にこんごう艦長は言う。
ちなみに、他はVLAが12なので、90あるVLSのセルはすかすかである。
あと一応BMD用のSM-3が4セル埋めているが、本来の用途以外では使えない。
「なので、我が艦だけでは」
多分撃ち漏らします。と言外にこんごう艦長は告げる。
「うちの残ったSLAM-ERが4発。・・・足らんかな」
「むしろSM-3の使用許可取ってもらう方が早いのでは?」
米海軍側が騒がしくなる。
「なあ、1つ思いついたことがあるんだが」
そう声を上げた米海軍司令に皆の視線が集中した。
新世界暦1年12月16日 ラストール・人民統制委員会の間の海域 人民統制委員会海軍 戦艦「突撃精神」
「ええい!なにをぐずぐずしている!」
革命管理委員は飛行戦艦が2隻も撃沈されたらしいという事実に、気が立っていた。
このままでは艦隊委員長共々、帰れば粛清である。
「せめてラストール王都を灰燼に帰さねば・・・」
イライラしていることを隠そうともせずに革命管理委員は続ける。
「ラストールの主力艦隊はまだ見つからんのか!」
彼らがラストール巡洋艦と信じて疑わない米海軍のニッツェとの遭遇以降、彼らはまだ何の艦影も見ていなかった。
そもそも、彼らはラストールの主力艦隊が出港したかどうかの情報も掴んでいないのだが。
「現在、ラストール王都方面を中心に索敵機を飛ばしています。直に見つかるでしょう」
粛清されそうなことで頭がいっぱいになっている艦隊委員長を差し置いて、艦委員長が進言する。
「それに、見つからなければ見つからないで、敵王都まで障害が何もない、ということです。艦砲射撃で灰燼に帰してやりましょう」
「うむ。そうだな。何も絶対に遭遇しないといけないわけではないのだ。連中の帰る場所を無くしてやればいいのだからな」
革命管理委員は少し落ち着きを取り戻す。
まぁ、普通に考えて王都周辺には防衛用の要塞があるはずなのだが、それは飛行戦艦が破壊することになっているので、彼の頭の中ではすでに存在していなかった。
「敵艦発見の報!戦艦1、巡洋艦1!進路正面!飛行戦艦大躍進が急行中!」
通信委員の知らせに、艦橋内は色めき立つ。
「距離は!」
「このまま航行すれば我が艦が接触するまで4から6時間程度です。ここは大躍進に任せましょう」
「うむ。そうだな」
距離が離れていたことに残念がるが、飛行戦艦単独でも苦戦するような戦力ではない、と意識を王都砲撃に切り替えた。
すでに2隻の飛行戦艦が墜ちているというのに楽観的なあたり、軍人としては失格な革命管理委員だった。
次は水曜日




