なんかそれっぽいことを言っとけば共産主義
異世界歴1年11月25日 ラストール王国 王都第二軍港
第二軍港にいた第三艦隊はせっせと出港準備をしている。
ラストールを訪問するアメリカ海軍を出迎えるためである。
「しかし、排水量10万トンの空母ってどんなだろうな」
出港準備を行っている自軍の排水量4万トンの巡洋戦艦を見ながら提督は言う。
「ほんとに戦艦の時代は終わりなんですねぇ・・・」
残念そうに参謀の1人が言う。
「航空機の性能向上で空母の時代が来るとは思っていたが、戦艦が全く不要になると言われると、なぁ・・・」
「夜間や多少の雨くらいなら運用に支障が無いって話ですから、そうなると戦艦は不要でしょうねぇ・・・」
海軍のこれからの主力が戦艦か空母か、という議論は元の世界でもあったが、航空機がまだまだ発展途上だったこともあり、作戦行動中の戦艦を航空機で撃沈するのは困難だと思われていた。
が、アズガルドの戦艦はあっさり日本の航空攻撃で沈められてしまったのである。
正確には、対艦ミサイルの飽和攻撃で艦上火災で手が付けられなくなり焼け落ちたり、誘爆して沈んだのだが、日本側の航空機の損失がゼロとなれば、どちらが優位なのかは明らかである。
「しかし、10万トンの空母でも搭載数は80にも満たないとの話です」
「航空機が大きくなったせいだろうなぁ」
提督は先日訪問したAPTO艦隊が載せていたF-35Bを思い出す。
ちなみに、参考程度だが大日本帝国海軍で言うと、空母赤城や加賀が4万トンで80~90機搭載なので、昔の戦闘機は小さかったのである。
いや、まぁ居住性を犠牲にすることで航空関連のスペースを大きくとっていたというのもあるが、それだけで捻出できるスペースはしれている。
「アズガルドは中古機を一括購入するようですが、我が国でその必要がありますかね?」
「アズガルドと違って損耗したわけではないといえ、あれほどの性能差を見せられるとなぁ・・・人民統制委員会のバカどももいるし、今でも勝っているとはいえ、こちらの被害をゼロにできるならそれに越したことはないだろ」
ちなみに、彼らは当初F/A-18の中古機を購入して空母を建造することを考えていたのだが、その空母の建造価格を知って卒倒するのはしばらく後の話である。
異世界歴1年11月25日 人民統制委員会 革命記念軍港
元の主達がいない光景が当たり前になり、ダスマン連合首長国から逃げてきた大型飛行艇が居座っている。
そんな軍港に視察に訪れている一団があった。
「ほう、これがねぇ」
「飛行船、にしても大きいですなぁ」
人民統制委員会の最高意思決定機関である(国名と同じというのがややこしさに拍車をかける)人民統制委員会の委員達である。
まぁ、国名に王家の名前がついている、と考えると不自然ではない。
「しかし、美しさのかけらも無いな」
同行していた海軍士官は、お前らが造らせたゲテモノより遥かにマシだ、と言う言葉がノドまで出かかったが、黙っていた。
「まったくですな。革命精神がかけらもない」
「そうですな」
「左様」
海軍士官はまたも、軍艦の革命精神ってなんだよ、と思ったが飲み込んだ。
ちなみに、そんなことを言っている委員たちも、革命精神が何か、と言われるとわからないのだが。
ようはその場のノリでそれっぽいことを言っているだけである。
ガヤガヤとそれっぽいことを言っている委員達の中で、一人の男が手を挙げると、ぴたっとそれが収まった。
「で、使い物になるのかね?」
委員会を束ねる委員長である。
ただ、全会一致が原則の委員会を束ねる議長、と言う程度で絶対的な権力を持つ最高指導者ではないのだが、革命を主導した初期メンバーで唯一生き残った、という経歴がそれに近い権力を与えているのは事実である。
「現在、運用方法の習得を進めており、間もなく同志たちの手で運用可能になります」
「よろしい。で、これに乗っていた連中は?」
「運用方法を聞き出し、不要になった者たちから順に、革命精神を教育するためいくつかの革命再教育学校に配属しています」
こともなげに言う海軍士官だが、革命再教育学校入学の実態は、地球で言うとシベリア送りとか、炭鉱送りとか、そういう奴である。
「ふむ。素晴らしい。彼らが革命精神を理解して卒業してくれることを願っているよ」
「全くです」
ちなみに、革命再教育学校は学校なので最終的に卒業することも可能である。
ただ、その場合はほぼ例外なく皆木の箱に入っているが。
卒業できない奴は校内で埋まっている。
ごくごく稀に、何らかの間違いで入学してしまった者がいて、元の場所に戻れることもあるが、これは中退と呼ばれている当たり、実に悪趣味である。
「しかし、こんな革命同志が造ったわけでもないものに頼るのはいかがなものか」
委員長のその言葉に、全員に緊張が走る。
下手をすれば次の一言で、関わった者全員が再教育学校に入学することになりかねないのである。
「革命艦隊の準備は進んでいるのだろうね?」
その問いかけに、明らかにほっとした空気が周囲を支配する。
「はっ!勿論であります!間もなく新型超戦艦、突撃精神と攻撃精神が竣工いたします!」
またふざけた名前だが、一応彼らは大まじめである。
ちなみに、前回のバランスの悪い航空戦艦よりは、まともな排水量4万トン級の超弩級戦艦である。
主砲は前部集中配置で4連装3基12門の40センチ砲で、しかもその艦首には見るからに凶悪なドリルと見紛うばかりの衝角がついている。・・・まともってなんだ?
なお、彼らはひたすら戦艦ばかりつくっているので、空母とかその他補助艦が全く補充されない。
各艦の必要性を理解した人間を軒並み墓石の下に送ったせいで、素人ばかりなので4番を揃えれば野球は勝てると思っているのと同じである。
「よろしい。ではラストールに革命精神のなんたるかを示してやりなさい」
「「「革命万歳!」」」
その唱和とともに、人民統制委員会の軍港視察は終わりを告げたのだった。
異世界歴1年11月26日 ラストール王国 王城 会議室
「「なん・・・だと・・・」」
海軍がまとめた装備更新・・・もはや装備刷新のレベルだが・・・の計画を聞いた王族が絶句している。
「戦艦は全て退役・・・」
「重巡も艦艇整備の進捗に合わせて全て退役・・・」
国王と第一王女がこの世の終わりのような顔をして絶句している。
「えぇ・・・」
報告していた海軍参謀長も想定外の事態に絶句している。
「いいから報告を続けてください」
呆れた表情で王妃が先を促す。
「空母と搭載機については近く始まる米海軍との演習とデモ、見積を見てから決定したいと考えています」
「空母も無くなるかもしれないの!?」
「あ、いえ、アズガルドが導入を見送っているようですので、何か理由があるのではないかと思いまして・・・」
もうこのまま死ぬんじゃねぇかという絶望的な表情の第一王女にドン引きしながら海軍参謀長は言う。
なお、アズガルドが今のところ空母導入を躊躇っているのはもちろんその価格のせいである。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「母上、姉上がぶっ壊れてますが」
「放っておきなさい。それにこれも壊れてますから」
そう言って王妃は国王を指さすと、そこには魂が抜けて真っ白になっている国王がいた。
「ええと?」
「まぁ、適当に活を入れたら直るでしょう。心配いりませんよ。ご苦労様でした」
そう言って王妃は参謀長に退席を促した。
元々、国王に実権はないので、こんな報告をする必要もないのである。
ただ、王家が権力を持っていたころの名残と、国民に人気のある王家に世論の後ろ盾になってもらう目的で報告は続けられているのである。
「あ、人民統制委員会でまた不穏な動きがあるって伝えるの忘れた」
退室して廊下を歩いていると思い出した参謀長だったが、
「ま、いっか」
そのまま海軍本部のある第二軍港に帰って行ったのだった。
次は土曜日




