エース
出来たから上げる。
異世界歴1年11月22日 アズガルド神聖帝国ドラスト大陸領 セントール空軍基地
《こちら航空自衛隊所属のF-15J、コールサインはGalm。滑走路への進入許可を求む》
《こちらアメリカ空軍所属のF-15A、コールサインはPixy。同じく、滑走路への進入許可を求む》
真っ先に出撃準備を整えて滑走路に向かおうとする2機が、管制に進入許可を請う。
ここの管制業務は日英が当番制で交互に行っており、アズガルドは双方について研修中である。
ちなみに、この2機が真っ先に出撃準備が整った理由は簡単で、F-15SJは現役機材なので、パイロットも機付きも、普段はスクランブル待機にも就く現役の航空自衛官であり、全て現役の機材を持ち込んでいたからである。
米軍のF-15Aはその恩恵を受けたわけである。
ちなみに、2機ともAIM-9Lを4発とAIM-7Mを4発に増槽を装備したバリバリの対空戦闘仕様である。(なお、米空軍のF-15Aも含めて全て空自の在庫である
《了解、両機の滑走路への進入を許可する。離陸後は高度13000まで上昇しつつ、方位025に向かえ》
本日の管制担当は空自なので、戦域管制はP-14で行うことになっている。
余った英軍のARTHURはどうするのかというと、念のため低空侵攻の敵機を想定し、自衛用にストーマーHVMをつれて演習場にある小高い丘を目指して移動している。
まぁ、どのみちARTHURは本来防空レーダーではなく、対砲迫レーダーなので、広域監視を行いながら戦域管制はできないのだが。
《当基地から半径15キロ圏内は聖域とし、侵入機はSAMによる迎撃の対象となる。離陸後は許可無く当基地に近づくことを禁じる。・・・といってもお前らは両方IFF積んでるのか》
《俺はモード4だがな》
砂漠で放置されていたF-15Aなので、当然IFFのアップデートは行われておらず、旧式のままである。
《喜べ、今回は積んでない奴もいる状況だから、IFFの応答はモード4で行う》
《これでいつでも帰ってこられるわけだ》
《ちゃんと作動すればな》
米海軍のF/A-18がIFFの不具合で米陸軍のUH-60を撃墜した、なんてこともあるように、質問波と応答波のやり取りで行われる以上、間違いが「無い」とは言い切れないのがIFFの弱点である。
そのあたりの弱点も改善するために運用を開始したのが現行のモード5なのだが。
《Galm、Pixy、離陸を許可する。幸運を》
轟音を轟かせアフターバーナーを引きながら、2機のF-15が夜明け前の空へと消えていった。
異世界歴1年11月22日 アズガルド神聖帝国ドラスト大陸領 セントール空軍基地駐機場
「くそっ!このポンコツが!動けってんだよ!」
あまりにもぐずるエンジンにキレた整備員がF-16Aのエンジン外装を殴りつける。
「この手に限る」
「「「いや、動いてねぇから」」」
殴りつけて俺の仕事終わった、みたいな顔をしている整備員に周囲から総突っ込みが入る。
「おかしいなぁ、昼間はかかってたのに」
F-15を送り出した整備員も同じエンジンということで応援に来て、F-16の周囲はやたらと人が集まっていたので、遠くから見てもトラブルが起きたのがまるわかりである。
「くっ、売り込みの絶好の機会なのに」
関係者として来ていたメーカーの人間が地団駄を踏むが、どうしようもない。
そうこうしている間に、F-1BとF-1C、T-2Bも離陸していってしまった。ちなみに、3機ともAIM-9Lを4発装備している。
ついでのようにT-7Aも離陸していったが、非武装なのでただの空中退避である。
「お、動いた!」
電源車をつないであれやこれやと強引に起動したようである。
「JFSの調子が悪いのか」
「エンジンが動いちまえば問題ない」
空中でエンジンが止まると問題になるのだが、止まらなければいいのである(暴論
「よし行け!」
エンジンに火が入ったことで、急いでミサイルの安全ピンが抜かれ、離陸の準備が整えられる。
ちなみに、防空戦闘機仕様ではない普通のF-16Aなので、ミサイルはAIM-9Mのみである。
《こちらアメリカ空軍所属のF-16A、コールサインはPJ。滑走路進入許可を請う》
異世界歴1年11月22日 アズガルド神聖帝国ドラスト大陸領 高度11000m
ホリアセの言語で「超大型爆撃機」という、なんの面白みもない名前をつけられた6発機の編隊は、エンジン不調による脱落でその数を30機に減らしながらも、セントール空軍基地に向け巡航を続けていた。
途中、アズガルドの夜間戦闘機の迎撃を受けはしたものの、遥か低空をうろうろしていただけで、実害は何もなかった。
「隊長、発見はされていますから、セントール基地にも通報されているでしょう」
「だろうな」
「爆撃高度3000はあまりに危険では?」
「それを今どうすべきか考えている」
誘導弾ならともかく、自由落下の無誘導爆弾は投下高度が上がれば上がるほど命中率が悪くなる。
風の影響を受けるので、これはどうしようと避けようがないことである。
急降下爆撃の精度が高い、と言われるのは、爆弾に勢いをつけて放るので、風の影響を受けにくいのと、単純に高度を下げるためである。
高度10000メートルが当たり前で、そこに離陸からものの数分で達することができる現代では、軍用機の高度なんて、戦闘機が格闘戦をする際に持っているエネルギーの違い程度にしか認識されないが、レシプロ機では大きな問題である。
そもそも、その高度まで昇るだけで数十分かかることはおろか、下手すればそこまで昇れないことだってあり得るのである。
つまり、高度11000メートルを巡行するこの編隊は、現在のところほぼ安全地帯を飛行しているのである。
が、こんな高度から爆弾をばら撒いたところで、爆弾は方々に散ってしまい、有効な攻撃にはならない。
日本を焦土にしたB-29も、その爆撃が成果をあげるようになったのは高度1500~3000メートルという低い高度からの爆撃に切り替えてからである。
そんな高度で飛ぶならB-29でなくてもいいように思えるが、行き帰りの道中で高度をとることで迎撃を避け、確実に全機で攻撃可能というのと、航続距離の問題である。
とはいえ、高度1500~3000メートルなら零戦でも問題ない高度であり、B-29の被害は拡大することになり、被弾した機体の退避地や護衛戦闘機の発進基地が必要になって発生したのが硫黄島の戦いなので、やはり防空能力のある相手に爆撃機だけで低空侵入というのは危険である。
「他にも攻撃部隊はいる、戦果よりも機体を持ち帰ることを優先すべきか・・・?」
現在は40機が実戦配備されているものの、イカレタレシプロエンジンを6発も積む超大型爆撃機は高価であり、エンジンの製造ラインは配備済みの機体向けの交換用エンジンに手を取られている状態なので、以後の増備が未定になっていた。
「快調なら素晴らしい機体なのだがなぁ」
なんせアズガルドでこれを迎撃できる機体は、帝都近郊に配備されたターボチャージャー装備のリンドヴルム3D型だけであるが、こちらもエンジンの量産体制の問題で帝都近郊への配備に留まっていた。
もっとも、アズガルド自身はすでにレシプロエンジンに見切りをつけているので、エンジンの生産問題が解決した現状でも量産する予定はないのだが。
「一度高度8000で敵基地上空をフライパス、敵迎撃機が上がっているようならそのまま爆撃、いないようなら高度4000まで降下して爆撃を行う。全弾投下後は再び高度12000まで上昇し離脱する」
隊長が言い終えたのと、編隊の左翼端と右翼端の機体が爆発したのは同時だった。
「なんだ!?エンジントラブルか!?」
爆発したのに敵の攻撃ではなく、エンジン不調を第一に想定する当たり、乗員たちの機体への信頼(?)が垣間見えるが、残念ながら爆発したのはどちらも胴体であった。
「敵襲か!?」
両翼がバラバラになって墜ちていく機体を視界に収めながらも、乗員たちの目は周囲に動く。
「おい!誰か敵機を視認したか!」
『見ていない!いったいどこからだ!』
『噂のあった高射砲搭載の大型機に狙撃されたんじゃないか!?』
『そんなものが1発であたるものか!』
敵機を視認した者が誰もいないことで、無線は錯綜したが、再び2機が爆発した。
『ロケット弾のようなものが命中したぞ!』
「発射母機はどこだ!?」
編隊が混乱に包まれる中、また1機、また1機と墜ちていくのだった。
異世界歴1年11月22日 アズガルド神聖帝国ドラスト大陸領 高度13000m
《こちらGalm、スパローは弾切れだ》
《Pixyも同じく、これより有視界戦闘に移行する》
各々4発のAIM-7を射耗し尽くしたF-15はAIM-9による戦闘を行うべく、敵編隊への接近を開始する。
《PJ、エンゲージ》
《Wardog、エンゲージ》
《Trigger、エンゲージ》
《Nemo、エンゲージ》
視界外射程ミサイルによる攻撃が終わるのを待っていた他の機体も一斉に敵編隊への接近を開始する。
一応、各機の搭載ミサイルをきっちり全弾命中させれば敵編隊は全滅するはずである。
まぁ、全機20mmバルカン砲も搭載しているので、ミサイルで撃ち漏らしても全機撃墜できるはずである。
北海道でアズガルドに対してやったことの焼き直しが再び行われようとしていた。
次は水曜日。余裕余裕(慢心




