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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
124/201

未開の地の利権の価値は

新世界暦1年11月9日 ジュラシック大陸 湖上王国と魔王国の中間砦 正門


「おっしゃ、セーフ!」

「閉めろ、閉めろ!」


最後の1人が滑り込んだのを確認して、直ちに正門の扉が閉められ、ごつい閂もかけられた。

もっとも、途中で現れたラプトルモドキの群れは途中で救助班を追うのを止めて、倒れているスピノサウルスモドキとバリオニクスモドキのほうに行ったのでそれほど危機一髪にもならなかったのだが。


「要救助者の容態は?」


扉の閉鎖を確認して、桐島は看護兵に声をかける。


「左腕の開放骨折とそれに伴う出血、左足もどこか、多分大腿骨で骨折してますね。とりあえずわかるのはこのあたりですが、腰部のどこかも骨折してると思います。レントゲンを撮らない限り特定はできないですね」

「満身創痍だな」

「頭部に外傷が無いのが救いですね。ヘルメットを被っていたおかげでしょうが、検査は必要です。早急に後送して病院で処置する必要がありますが、ここからアズガルドの基地まででも持つかどうか」


もっとも、出撃基地であるドラスト大陸のセントーラス空軍基地は日英軍が駐屯しているとはいえ、日英は医務室レベルしか設置していないので、アズガルドの病院しかなく、当然医療施設は1940年代レベルである。


「洋上に訓練航海中の米空母がいなかったか?」

「ですがそこまで行くのに空中給油が必要です。セントーラス空軍基地にいるKC-130の準備をさせるくらいなら」

「セントーラス空軍基地に向かうほうが早そうだな」

「空母で待機中のMQ-25でもいればうまくいけそうですが」


いずれにしても待機中の空中給油機がないと届かないということである。


「とりあえず骨を戻して止血、固定するしかないですね」

「え、これ戻すの」


飛び出している左腕の骨を見て桐島以下救助班はドン引きしている。


「このままってわけにはいかんでしょう」

「いや、それはわかるけど、ねぇ・・・」


ぷらんぷらんの左腕を処置するために、辛うじて意識が残っているアズガルドの隊長を桐島たちが押さえつけていると、そこに外交団と魔王、神託の巫女が現れた。

もっとも、外交団のほうはアズガルドの護衛隊長の負傷具合を見て顔を真っ青にしているのも何人かいるが。


「思ったより重傷だなぁ」


負傷者の状況を見て魔王は呟くが、宝玉を通していないので巫女以外は何を言っているかわかっていないので、頭に?を浮かべている。

それを見た巫女が呆れたように宝玉を魔王から掠め取って4ヶ国と交渉を始めた。


「この砦の宝物庫にいれていた、我が国の治癒魔法の古代魔道具があります。それを使用すれば全快とはいかなくとも、生命の危機や後遺症からは脱することができるでしょう」


実際、宝物庫の中身は湖上王国分と魔王国分で分けて厳格に管理されているのだが、巫女はまるで湖上王国しか持っていないかのように言ったが、実際には魔王国側も持っている。

とはいえ、湖上王国とのなあなあの外交交渉しかしていない魔王に駆け引きなんて不可能である。

これについては湖上王国側の国王も似たようなもので、神託の巫女が狡猾なだけである。


「ただ、非常に貴重な魔道具で、一度使用すれば100年間経過しないと使えないと言われています」


一世代毎に見れば実質的に使い捨てである。

ちなみに、湖上王国には10個あり、1つを砦に置いているわけである。


「貴重なものですので、使用する、というのなら・・・」

「それなりの対価が必要ですか」


アズガルドの外交団が反応するが、その魔道具と呼ぶものの実態が不明で、効果もわからないので躊躇っている、と言ったところである。


「そういえばうち(アメリカ)で鹵獲した飛行艇にいくつかそんなモノがあったな」

「効果あったんですか?」

「捕虜の尋問でわかったことだし、その時にはちょうどいいの(負傷した捕虜)がいなかったのでなんとも・・・」

「しかし、ここで相手に借りをつくるというのは」

「借りだと思わなければいいのでは?別に借りになるのはアズガルドだけですし」

「まぁ、そう言えばそうですか。我々が決めることでもないですね。後送のための便は出すわけですし」


日英米はコソコソと小声で密談している。


「どうしたらいいんでしょう?」


判断に困る、といった感じで巫女と交渉していたアズガルドの外交官が日英米の輪に加わる。


「看護兵の見立てでは、このままセントーラス空軍基地まで後送して持つかどうかは五分五分。いずれにしても後送の準備はさせているから、後は彼女(巫女)の言うことをどう判断するかじゃないか?」

「帰ったらプロポーズとか言ってたらしいので、多分持たないのでは?」

「いや、そのプロポーズが失敗するやつならワンチャン」


死亡フラグのことをわからないアズガルドの外交官はあまりの言い草に絶句しているが、心の奥底でなんか納得しているのだった。

とはいえ、帰ったらプロポーズだなんていう話を聞いてしまうと、外交交渉はともかく、助けてやりたいという気持ちは大きくなる。


「まぁ、一刻も早く後送したほうがいいのは確かだし、早く決めた方がいい」

「時間がかからないならとりあえず試してみるのも手では?」


使う使わないの外交交渉に関しては完全に他人事の日英米は、決断を急かす。


「うぐぐ、しかし得体のしれないものに命を託すというのも・・・」

「ここまでの対応からして、悪化させるようなものを勧めてくるとは考えにくいでしょう。時間がかからないならやってみては?」

「・・・むしろ時間の節約のためにCMV-22で後送しながら使えばいいのでは?」


いいこと思いついた、という感じで完全に悪い笑顔でアメリカの外交官が言う。


「ほお」

「それはなかなか」


時間も節約できるが、うまくすれば解析もできる。実にいい手だ、と日英もそれにのっかる。


「ええ・・・」


一方のアズガルドは、完全に悪いことを考えている日英米にドン引きしている。というか、ほとんど人体実験に使おう、と言っているようなものである。


「まぁ、アズガルドのことですから、最終的な判断は責任者のあなたが決めることでは?」


日本の外交官のその一言に、アズガルドの外交官は増々苦悩の色を深めるのだった。




新世界暦1年11月11日 ジュラシック大陸 湖上王国 王城 謁見の間


結局、予定外で待機させていたCMV-22を帰還させたりしたせいで予定から1日遅れになったものの、外交団は湖上王国に帰ってきていた。


「魔王国との交渉もまとまったようだし、我が国としても貴国らと友諠を結ぶことに異論はない」


神託の巫女がしれっと魔王から分捕ってきた翻訳の宝玉を使って宣言する。


結局、アズガルドの護衛隊長の治療に湖上王国が秘蔵していた魔道具を使用した結果、見た目上外傷はなくなったのだが、精密検査(と調査)が必要ということで、中間砦からCMV-22でセントーラス空軍基地に後送、そこで英空軍のヴォイジャーに乗せ換えて英国の病院に送られた。

ちなみに、肝心の魔道具のほうは人が入るカプセルのようなもので、とても迅速には運び出せそうになかったので、使用状況をビデオに収めただけで、あとは病院での効果測定待ちである。


で、その魔道具を使用した「借り」だが、巫女が個人的に持っておくことにしたらしく、湖上王国の外交交渉では持ち出さずに、なにやらアズガルドから個人的にいろいろと引き出したようである。

いくら貴重な魔道具とはいえ、所詮は一個人の生命を救ったに過ぎず、国家間の交渉で引き出せる譲歩としては微々たるものだとの判断もあったようである。


「まぁ、うちから提供できるものなんて土地しかないから、よろしく頼むよ」


こうして、日英米はドラスト大陸に加えて、新たなフロンティアを手に入れたが、それでもこの大陸の一部に過ぎず、他の小規模な社会集団への接触も引き続き行われて徐々に領域を拡大していくのだった。




新世界暦1年11月12日 日本国東京都 内閣総理大臣官邸


「アズガルド本国のインフラ開発とドラスト大陸の開発だけでも大概なのに、また新たな鉱山利権やらなんやらかんやらとか、手が回らない気がするんだけど?」

「どこも手付かずの利権ですからね。とにかく他国に先んじて押さえてしまわなければ」


湖上王国と魔王国との交渉結果で得られた利権を見ながら首相と経済産業大臣が話している。


「利権の見返りにうちは飛行艇で定期便飛ばすの?」

「とりあえずつなぎでUS-2を再生産してあてようかと。型式証明受けてませんが、飛ぶのはそんなの関係ない場所ですので」

「そもそも性能フルに発揮させようとすると型式証明受けられないとか聞いたけど?」

「まぁ、極端なSTOL性能を捨て去ればとれますよ?」

「それメリットないよね?」


失速速度より大幅に低い速度で離着陸できるので、極端に短い滑走距離で荒れた海でも運用できるのである。

境界層制御のために専用のエンジンを搭載し、圧縮した空気を翼上面に吹き出すことで揚力を増しているのがPS-1以降の海自飛行艇の特徴である。が、通常飛行時の失速速度を離陸速度が大幅に下回っている、というのは通常の航空機ではスペック上おかしいので、US-2の最大のウリであるSTOL性能を捨てないと民間航路で使うための型式証明が取れないのである。


「まぁ、どのみち湖上王国とドラスト大陸を往復させるだけですから、アメリカ連邦航空局(FAA)の型式証明はいりませんよ」

「けど、それの運航母体はどうするんだ?」

「半官半民で法人つくって運航させるしかないんじゃないですか?どのみち週一でも過多な運航ですし、それほどの規模は必要ないでしょう。採算も取れないでしょうし」


ドラスト大陸から鉄道を伸ばす方が本命なので、それまでの繋ぎである。

ちなみにその鉄道は英米アズガルドでやるが、車両は英国が入れることになっているので、しれっと日本企業の英国工場が受注している。

まぁ、開通は何年先かと言う話だが。


「しかし、2000キロの鉄道とか、間に何もないのに採算とれないだろ」

「まぁ、どのみち鉱山開発するのに鉄道は必要ですから、気長にやりましょう」


利権は押さえたことが重要なんですよ、と経済産業大臣は笑うのだった。

次は水曜日

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 『チャーンス』>巫女&魔王 まあ『代償』はありましたが、訪問団全員が無事?に帰国出来て何よりです^^ 後始末(利権の活用確定作業)を押し付けられた省庁&官僚の皆さんは大…
[良い点] よかった……死亡フラグは一応回避されたか……。 『彼女がフラグをおられたら』を読んだことのある人間としては、死亡フラグ発言についつい過敏に反応してしまいますね(笑) [一言] 日米英、悪い…
[一言] イメージ的にはサ○ヤ人の回復ポット的な奴なのかな?>回復魔道具 どこまで回復したのかは検査結果待ちと とりあえず利権が有ればその管理のためのテキトーなポスト用意は用意できるしまあ… US…
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