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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
115/201

言語の違いって面倒

前回はたくさんの感想ありがとうございます。みんなサメ大好きなんですね(違

新世界暦1年11月3日 ドラスト大陸南方 未知の大陸上空 海上自衛隊 第71飛行隊 US-2


軍用、民間、問わずに少なくなった4発のエンジンを響かせて、海上自衛隊所属のUS-2が飛行していた。

日本の元々広い領海に加え、200カイリにおける捜索救難まで担うために造られた飛行艇である。

前型(US-1)からの最大の変更点はFBWの採用による操縦の自動化と、与圧胴体の採用による飛行高度の上昇である。


そんな機体だが、現在の任務は未知の大陸にある不明勢力との接触のための飛行ルート確認である。

本来ならMV-22を使った方がいいに決まっているのだが、いくつかの理由でUS-2に白羽の矢が立てられた。


まず1つ目の理由は航続距離。

わずかだがUS-2のほうが長い。

別にまっすぐ行って帰るだけならMV-22でも問題は無いのだが、ルート上に天候が急変する高い山脈があり、迂回すると空中給油しても微妙、というかそもそも天候次第では空中給油自体が困難になるので帰投不能になる。


もう1つの理由は目的地に十分な水深を持つ湖があったため。

悪天候は高度で飛び越せるUS-2のほうが天候の急変に対応しやすいので、使わない理由はない、というわけである。


途中に天候が急変するエリアがある全ルートで悪天候がないことが前提になるMV-22と、出発地と到着地の天候だけが問題になるUS-2、どっちが外交官を送り出す手段として適切か、となると必然的にUS-2の出番となった。


で、今回の飛行は実際にルートを飛行してみて、問題が無いか確認するための物である。

現在は高度をとって飛行しているが、本番では目的地付近で一気に着水まで持っていくため、一部匍匐飛行(NOE)するため、本当にプラン通りに飛行可能か確認しているのである。


「しかし、いくら地球よりテクノロジーが遅れてる世界とはいえ、ここまで未開の世界のままなもんかね」


遥か下方に広がる大自然を見ながら機長は言う。


「道すら見当たらない。人が住んでないわけじゃないのに、ここまで手付かずなもんか」


現在の機長は外部監視で完全に操縦には関わっていない。

本番で操縦を担当するため、実際の地形を確認しているのである。


「いや、そんなこと言われても見れないんですけど」


副操縦士は外を見てはいるものの、操縦桿を握っているので、地面を凝視するわけにもいかない。

航空機関士に至っては計器監視とスロットル操作を担当しているので外は見れない。


「あー、そういや後ろもお客さんだけなんだったか」


通常なら捜索救難調整官や機上救護員など、複数の乗員を乗せているのだが、今回の作戦ではそれらは乗せずに、全て「お客さん」ということになっている。

それでも試作機をいれて7機しかないUS-2のうち3機が割かれているので、割と大規模な作戦である。


そんなわけで、今後ろに乗っているのは本番に参加する他の2機の機長と副操縦士、及び護衛でついていく各国軍の隊長格である。

そう「各国」なのである。


日本はもちろんだが、イギリス、アメリカ、そしてアズガルドである。

イギリスは完全な便乗、アメリカは最後までV-22とKC-130による空中給油プランを考えていたものの、どう考えても天候が不安定な山脈を避けると空中給油が増える(ブラックバックる)ので諦めて、ごり押しでUS-2の機数を増やさせた。アズガルドはとりあえず一番近いからおまけである。


「しかし、写真では見てたが未だに信じられんなぁ。なんだってあんな不便そうなところにつくったんだ?」

「湖そのものを堀として利用している、と考えれば防衛上の利点はあるんじゃないですか?」


そう言って彼らが見下ろす眼下には、着水する予定の湖と、その中に浮かぶ島に建てられた中世ファンタジーのような白亜の城と城下町が広がっていた。




新世界暦1年11月5日 神聖アズガルド帝国ドラスト大陸領 セントーラス空軍基地


未知の大陸にある国に接触するための使節団の出発地になるのは、日英がドラスト大陸で借り上げている空軍基地である。

空自の飛行開発実験団が出張していたりするあたり、空域を自由に使うためだけの基地だったのだが、立地的に未知の大陸の航空調査にはもってこいだったので、なんやかんやと入り乱れてかなり賑やかな基地になっていた。


そんな基地の一角で、使節団に随行する各国の護衛が顔合わせを行っていたのだが


「なぁ、なんか俺らの装備惨めじゃね?」

「思ってても言うなよ。余計惨めになる」


アズガルドの使節団に随行する護衛である陸軍特別潜入班の隊員たちが小声で話していた。

各国の使節は、外交官2名に護衛10名が基本である。

その護衛に対し、日本は陸自特殊作戦群、イギリスは特殊空挺部隊(SAS)、アメリカは海兵隊特殊作戦コマンド(MARSOC)を派遣していた。


彼らが「惨め」といったのはその装備格差である。

3ヶ国とも、特に英国については誠に遺憾なことにL85(鈍器)を装備せず、M4系列の改良型を装備しており、光学照準器とフォアグリップを基本に、各種オプションが装着されている。

対して、アズガルドは、自国では最新だった試作型のセミオートマチックライフルやサブマシンガンである。

自動小銃を輸入する話はあったし、実際一部はすでに輸入もされていたのだが、ろくに訓練もしていないものを使うわけにもいかないので、使い慣れた従来の装備での参加になったのである。


「装具類も全然違うな・・・」

「だがあんなにゴテゴテつけているととっさの時に伏せられないんじゃないか?」

「とはいえ、弾倉を1つずつあそこに入れてるなら再装填も早そうだ。全員がフルオート射撃できるようだし、火力を重視してるんじゃないか?」


各個人が装備しているチェストリグを見てコソコソと小声で話しているが、他の三国は「ちゃんと聞いてくれたら教えるのに」と思いながら、隠れて話しているつもりらしいアズガルドに配慮して知らん顔している。

ちなみに、チェストリグはものによってはワンタッチの留め具を外すと左右に開いて伏せるのに邪魔にならないようになるものもあるので、伏せることが前提の場合はこのタイプを使用することが多い。


敵の待ち伏せを受けることが多かったアフガンやイラクの教訓で、とにかく動き回って火力で制圧する、という思想に米軍がなった関係で「その場に伏せる」ということが少なくなったので、マガジンや小物類へのアクセスがしやすい体の前側にポケットが多いチェストリグが普及することになったのである。


逆に、市街戦訓練をやるようになっても、基本は防衛戦闘に主眼を置く陸自ではアズガルドと同じように「伏せる時に邪魔」という頭があったので、ボディーアーマーの前面につけるマグポーチなども含めて、中々普及しなかった。

まぁ、陸自の防弾チョッキ2型はPALS未対応だったのでオプションがつけにくかったとか、PALS対応の3型になっても、防弾チョッキは個人に貸与される装備ではないので、使用するたびに装具をつけたり外したりが面倒だから従来通り弾帯につけておく方が楽、とか、そもそも個人で買うしかないので・・・とか、他の要素もあったが。


そんな話はさておき、各国共通の無線の周波数を決めたり、英語でどうにかなる日英米はともかく、未だお互いに問題ないレベルで言語を扱える人間が少ないアズガルドのため、簡単な符丁と行動が決められる。

基本的には相手が敵対的な行動をとる場合は、素早く撤退し、第一にはUS-2への合流を目指し、それが困難な場合は陸路で離脱し、V-22が回収可能な地点か、US-2が着水可能な別の湖を目指すことになっている。


一方で、各国の外交官たちも顔を合わせていたが、一様にその表情は暗い。

なんせ相手に言葉が通じるかどうかわからないのである。

それでも行ってみないことには話が始まらない、というわけで本来なら軍を中心にした調査班に行かせればいいはずであった。


が、ここでどっかの防衛省の立場が弱い島国で、外務省が横やりをいれて(縄張り争い)外交であれば第一義には外務省の管轄だと言い出したのである。

縄張り争いで出世する人間はそれでいいが、それで実際に派遣されることになった人間はたまったものではないのだが、日本だけが外交官を派遣するというのは、後々のことを考えると不利になる可能性がある、と考えた英国も外交官を派遣すると言い出し、そうなると米国も派遣するしかなく、アズガルドにはそもそも選択権はない。


一国の省庁間争いに複数国が巻き込まれた形だが、わりと無い話でもないあたりが笑えず、実際に派遣される外交官はもっと笑えなかった。


お通夜モードの外交官たちの顔合わせは、結局のところ相手が敵対的な場合の離脱の判断基準を決めたり、退避訓練となるのだった。




新世界暦1年11月5日 日本国東京都小笠原支庁ユグドラシル村世界樹島 独立行政法人世界樹島管理機構本部


「例の大陸に外交団が派遣されることになったんですけど、大丈夫なんですか?」


そう言う北条はウルズの口にスプーンでアイスを運んでいた。


「うーん、美味しい」


へにゃっとした笑顔をしているウルズは話を聞いているのかいないのか、そんな2人を武田は何やってんだこいつら、という表情を隠さずに見ている。


「まぁ大丈夫じゃない?あそこなら排他的な国ってわけでもないみたいだし。言葉はそのままでは通じないけど」


ふわふわした感じで言うウルズだが、それが問題なんだろ、と思う武田だが余計な口は挟まない。


「とはいえ、実は地球でいうとラテン系の言語に近いんだよねー。なんなんだろうね?」


別に興味ないけど、といった感じでウルズはへにゃへにゃと北条にもたれかかるのだった。

次は・・・ちょっと不明。

とりあえず週二回更新目指します。

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― 新着の感想 ―
[一言] >鈍器 なんでや!H&Kの改良受けて弾は出るようになったやないか!(それだけともいう) 小銃も銃弾含めて迷走してるから、未来予想がしにくい兵器だよなぁって 謎の大陸とのファーストコンタクト…
[一言] 更新お疲れ様です。 新たな活躍の場を与えられたUS-2^^ (某誌で連載中の開発秘話はなかなか興味深いですね) 装備品悲喜交々(^^;; ファーストコンタクトは? 未踏の地にどんな人々が…
[気になる点] 英国の銃の各オプションとやらには 当然銃剣化も含まれてるよな?
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