エイプリルフール編:サメだ!サメを殴れ!
新世界暦2年4月1日 アメリカ合衆国アラスカ州 太平洋空軍第3航空団第525戦闘飛行隊
転移しても相変わらず試されすぎる大地のアラスカ上空を2機のF-22Aが飛行している。
ロシアと接していた以前なら最前線だったが、転移後は大型機でないと(空中給油か片道でない限り)飛んで来られる範囲に脅威はないので、一応武装はしているが、パトロールというよりは訓練飛行、点検飛行の類である。
「Bulldog1からBullseye、全ての飛行チェックを終了。これより規定ルートを周って帰投する」
『了解、Bulldog1。空域に他の飛行目標はない。優雅な空の旅を』
交信を終了し、2機のF-22はのんびりと(音速を超えているが)巡航速度で飛行する。
特に何事もなく、定められたルートを半分消化したところで、異常があった。
『ん?何か』
僚機のBulldog2がそう言った瞬間、空に光線が走り、Bulldog2が爆発した。
「Bullgdog2!!」
叫ぶと同時に回避行動しつつ、Bulldog2を見るが、燃え上がりながら落ちていき、爆発した。
射出座席の作動は確認できなかった。
「くそが!?こちらBulldog1、Bulldog2が撃墜された!」
そう無線に向かって叫んだが、AWACSから何の返答も無い。
再度叫ぼうとして、AWACSとのデータリンクが途絶していることに気付いた。電波妨害は検知されておらず、それが意味することは1つである。
「やってやる、やってやるさ!」
そう言ってBulldog1はマスターアームのスイッチを入れたが、それと同時に再び空に光線が走り、Bulldog1は爆発した。
新世界暦2年4月1日 アメリカ合衆国コロラド州 シャイアン・マウンテン空軍基地北米防空司令部
「エルメンドルフとのデータリンク途絶!」
「アンダーセン、ヒッカム、横田との通信も途絶しました!」
「ティンダル空軍基地が敵襲を受けています!」
NORADは混乱の坩堝にあった。
各地から一斉に攻撃を受けているという報告と共に、次々に通信が途絶したのである。
「何が起こっている!?ロシアか中国か!?」
司令がそう叫んだとき、全員が大きな振動を感じたのだった。
新世界暦2年4月1日 ロシア連邦 モスクワ
NORADが混乱に陥る少し前、ロシアの防空網は既に無力化され、モスクワ陥落のカウントダウンが始まっていた。
ナポレオンも占領できなかった都市は戦火に包まれ、都市の象徴とも言える赤の広場でも攻防戦が行われていた。
「くそ!どんな悪夢だよ!」
横転した車両を盾にボルトアクションのモシンナガンを撃っているのは大統領連隊の兵士である。
その横でAK-74を撃っているのは国家親衛隊である。
「一体どうなってやがる!?俺の目がおかしくなっちまったのか!?」
彼らの視線の先には、赤を基調に中央の白抜きに鍵十字が描かれた旗が翻っていた。
新世界暦2年4月1日 月の裏側 ゾンビナチス秘密基地 鮫の巣
「「「「「「「「「「ハイルヒトラー!」」」」」」」」」」
秘密基地で一番大きな部屋に、大量の人間・・・だったらしきモノが大量に集まり、お決まりのポーズで叫んでいる。
その全てが、服こそ見覚えのある制服なものの、まさにゾンビといった見た目で、眼窩が窪んでいたり、頬が腐り落ちていたりといった有様である。
「諸君!今宵、我々はついに本当の生存圏に帰還する。それを妨げる者は、例外なく絶滅する!根こそぎに!容赦なく!断固として!」
どこかで見たことあるちょび髭の演説に全員が心酔している。
「さあ、我々の生存圏を取り戻すのだ!」
「「「「「「「「「「ハイルヒトラー!」」」」」」」」」」
演説の終了と同時に次々にゾンビが出撃していく。
部屋を出た彼らはサメにまたがり、次々に地球に向かって宇宙に出て行った。
新世界暦2年4月1日 イギリス ロンドン
私の名前はジェイソン・ボンド。
英国秘密情報部に所属する工作員だ。
一仕事終えて久しぶりのロンドンだというのに、今のロンドンは上空をサメに跨ったナチスのゾンビが飛び回ってビームを撃ちまくっているという冗談みたいな状況だ。
愛車のV8エンジンのエキゾーストノートを聞きながら、サメから飛んでくるビームを避け、SIS本部に向かう。
イギリスを象徴する2ドアクーペだというのに、V8エンジンがドイツ製になると知ったときは不愉快だったものだ。
しかし、実際に乗ってみるとツインターボに過給され508馬力を発揮する4リッターV8エンジンは、V12エンジンよりもノーズが軽く、実にご機嫌な走りをもたらしてくれた。
「さて、時代遅れのクソナチどもについてこれるかな?」
パドルを操作しシフトダウンとともに野太いエキゾーストノートを響かせて、混乱に包まれたロンドンを疾走する。
新世界暦2年4月1日 日本国 埼玉県さいたま市
「アイエー!?」
「ナチスゾンビ!?ナチスゾンビナンデ!?」
上空をサメに乗ったナチスゾンビが飛び回り、高層建築を破壊し、そこで働くビジネス者は逃げ惑っていた。
ただただ逃げ惑うしかないサラリマン、ヤクザ、オイラン、観光客、迷子。
しかし、その時、どこからともなく放たれたスリケンにより1人のナチスゾンビは爆発四散した!
「ドーモ、ナチスゾンビ=サン、ハットリハンゾーです」
いつそこに現れたのだろうか。唯一残ったタワーの頂上、細いアンテナの上にそれはいた。
手を合わせ、オジギをしてアイサツする。アイサツ前の攻撃は、スゴイ・シツレイにあたるが、アイサツ前のアンブッシュは一度だけ認められている。
「キエー!」
しかし、アイサツする文化の無いナチスゾンビは、すぐさまハットリハンゾーに襲い掛かる!
「アイサツも出来ぬハンパモノめ!イヤー!」
カラテシャウトとともに飛び上がったハットリハンゾーの通った後に残るのは、ナチスゾンビとサメの血とシカバネだけであった!ワザマエ!
新世界暦2年4月1日 中華人民共和国河南省 嵩山少林寺
サメはもちろん中国にも現れていた。
かつてナチスが求めた不老不死の秘宝か、超人の秘伝か、そんなものに引き寄せられたのか、少林寺には都市部よりも多数のナチスゾンビとサメが殺到していた。
「アチョー」
しかし、その全ては達人によってあっさり撃退されたのだった。
新世界暦2年4月1日 世界のどこか ゾンビナチス対策センター
「ついにこの日が来たか!」
月に逃げたゾンビナチスが、再び地球を襲う日に備えて極秘に活動を行っていたこの組織は、アメリカ大統領ですらその存在を知らない。
「イギリスのスパイ、日本のニンジャ、中国の拳士、インドのヨガ、ケニアのマサイ、ロシアのコサック、そしてアメリカのナード、その他全てに非常招集だ!」
いつかのある日 日本国 日本国東京都小笠原支庁ユグドラシル村世界樹島 独立行政法人世界樹島管理機構本部
「という映画を考えてみたんだけどどうだろうか?」
ドヤァという擬音が聞こえてきそうな顔でウルズは言うが、その前で北条は頭を抱えていた。
時間が有り余っていると人間(厳密にいうとウルズが人間かどうかは議論の余地があるが)ろくなことを考えないのである。
「サメとゾンビとナチスという鉄壁の組み合わせに、みんな大好きスパイにニンジャにその他もろもろ、完璧じゃね?」
インターネット回線が通じてから、暇に任せて映画を見まくった結果がこれである。
とはいえ、最大の問題は
「あの、その組み合わせもうあるんですよ」
北条のその一言に、さすがに全知の技能でそんなことまでは調べていなかったウルズは無表情になり、「え、そんなバカな映画作ったヤツいんの?頭おかしいんじゃないの?」と自分を棚に上げて思ったのだった。
というわけでエイプリルフールなお話でした。
本筋とは1ミリも関係ありませんので忘れてください。アルコール入れて書いてるのでむしろ忘れろください(なら上げんなよと
そして久しぶりの出番がこんなのなウルズさん。
次回は本筋に戻って土曜日の予定です。




