弥助と越冬生活
野犬の親子が寒さに震え、洞窟にやってきた。何日も食べてなさそうで痩せ細ってる、それでも、母親は牙を剥く。
「出ていけ!」
弥助は丸太を持ち追い出そうとするのを、
「骨でもくれてやれ」
「姫様は野犬を世話されますのか」
「わしはグズリの毛皮で忙しい、弥助が世話するのじゃ」
弥助はやっぱ俺かよとボヤきながら、骨付き肉と水の皿を置いてやる。野犬親子は警戒してたが、やがて肉の臭いと空腹で喰らいつく。
姫様はひたすらグズリの毛皮を鞣し、商品価値を高めてる、傍目から見ても美しい艶が増してる、姫様はグズリの毛皮を鞣すの飽きると、熊の毛皮を鞣す、毛皮職人として金儲けの権化してる。
弥助はドングリを砕いて練って焼いたり、水を湯沸して飲水を用意する。野犬親子の糞も洞窟の奥に捨てる。子犬は弥助の足元をじゃれつく。
洞窟の外は狂ったような猛吹雪だが、洞窟の奥のこの場所は暖かく獣臭以外は平穏である。弥助は小舟の板や流木、枝など充分な燃料を貯めていた。熊肉やしか、ウサギなどの干し肉もある、水もある、竈もある、立派な住居である。
恐らく弥助のこれ迄の人生で一番命の危険から遠い時間であり、主君とはいえ異性と同じ屋根に住んでいる。
或夜、弥助はどうにも本能を、理性で抑えられなくなり、そっと、寝てる姫様の背中を触ろうとした、
「其処までじゃ、弥助、」
と、姫様はピシャリと叱責します。
弥助は不服だ、かつて初物頂いた仲であり、一緒に同じ屋根に暮らしてるのは夫婦といっても良いじゃないか。
「弥助、わしとて、この洞窟で弥助と世帯持ち、クズリなど狩って暮らせたらと思うぞ、しかし、それは赦されないのじゃ、わしは今迄沢山の縁ある者を犠牲にしてきた、わしだけが幸せになるのは許されないのじゃ、ワシは鼻高々国に行かねばならない」
姫様は、海賊武将の島を襲撃した時、半分以上の仲間を失った事や、お気に入りの侍女を海に沈めたことを忘れてない、だから此処で弥助と幸せになるわけにはいかないのだった。
弥助は拗ねては居たが、姫様の余りにも業の深さに諦める。姫様は弥助の男の性が気の毒に思えたのか、
お尻の下を少しだけ熊の毛皮から出して、
「サービスカットじゃ、これで自分でなんとかしろ、」
弥助は姫様の優しさに涙し、1人でゴソゴソする。
野犬親子は気を利かせてか、あちらの方を見ている。
冬は去ったようである、早朝、野犬親子が
元気に吠えてる、なにかを言いたげである。
「もしや、恩返しでもするつもりか」
と、姫様は野犬に付いて行くことにした、ポケットに方位磁石を入れる。
「俺も一緒に行く」
「却下じゃ、弥助は此処で毛皮を警備するのじゃ」
弥助は置き去りにされた子供のように洞窟の入口に何度も立ち姫様を、待つ。
次の日の夕方、姫様は戻ってきた。なんと手には596の饅頭って書いてある紙袋入りの饅頭をお土産に持ってる。
「野犬の親子はのう、大きな街までわしを案内してくれてな、振り返ればもう居なかったぞ、わしの早歩きでまる1日ぐらい、普通なら3日ぐらいの距離に街はある」
翌日、中ぐらいの品質のグズリの毛皮1枚と熊の毛皮の束を担いで姫様は街に出掛けた。弥助はまた留守番
姫様のグズリの毛皮は評判になり競り市で史上最高値が付いた。姫様は恐らく人生3回分の596な饅頭のあんこ饅頭が買えるぐらいの金を手に入れました。街の割と高級なホテルに常駐しました。
まだまだ毛皮は洞窟にあり弥助が警備してる。こんな田舎街であんな高値で売れるなら、鼻高々国では人生300回分の596の饅頭に苦労しない金が手に入る筈
姫様は商隊を組んで鼻高々国までグズリの毛皮を運ぶことにした。
ホテルの催し会場を借りて面接を行う。
「新しい自分を発見したくて応募しました」
「今迄の貴方は何をされてましたか」
「自分を探してました」
という無職の中年男性
「姫様の貴風と私とぴったり」
「具体的に何処ぴったりと思われますか」
「なんかそう思うのですよぴったり」
というピアスしたヤンキー
「人生をやり直ししたい」
「資格とか特技ありますか」
「チーズケーキを綺麗に6等分出来ると兄妹から褒められたことがあります」
という老人などが応募してくる。
馬や馬車、荷車も用意した。




