第29話 【掲示板】四十一日検証班、再び
――匿名掲示板・第七ダンジョン検証スレ(現行スレ)・木曜
402:名無しの探索者
切り抜きから来ました。ここが例の検証スレであってますか
403:名無しの探索者
いらっしゃい。まとめとテンプレ読んでから書き込め
405:名無しの探索者
テンプレの「41日則」ってやつ、あれどうやって出した数字なんですか。切り抜きだと「おじさんが崩落を41日前から知ってた」みたいに言われてるんですけど
406:名無しの探索者
それがもう間違ってる。おじさんが気づいたのは4日前。41日ってのは、音が下がり始めてから柱が崩れるまでの平均。俺らが公社の公開記録から拾って集計した数字だ。ついでに言うと「41日前から知ってた」だと、おじさんが41日黙ってたことになる。デマとしても失礼な部類だぞ
409:名無しの探索者
懐かしいな。あの週は寝てなかった
410:名無しの探索者
ちょうどいいから新入りに説明するついでに、当時の集計リスト貼るわ
411:名無しの探索者
410だが、ちょっと待ってくれ。貼る前に見返したら、これおかしい
412:名無しの探索者
どうした
414:名無しの探索者
母数に柱以外が混ざってる。三番目の事例、これ昇降機の主索だ。「異音発生から破断まで」の日数。八番目はコンベアの軸受。柱じゃない
415:名無しの探索者
……まじか
417:名無しの探索者
まじだった。当時の母数は市内二基の十年分で、「音が変わってから壊れるまで」を機械的に拾ってた。数えたら、六十一件のうち、結界柱そのものは片手で足りる
418:名無しの探索者
無能検証班ww解散ww
419:名無しの探索者
じゃあ41日はゴミ数字だったってこと? 俺、人に自慢げに話したんだけど
421:名無しの探索者
そもそも柱だけの事例なんて、そんなに拾えるのか
422:名無しの探索者
年度締めの記録は全国ぶん公開されてる。あとは当時の地方紙。初代の図書館通い班の遺産だ
424:名無しの探索者
柱が崩れた事例だけで数え直す。市内十年じゃ足りないから、全国・三十年に広げる。図書館班のアーカイブがあるうちにやる。三十分くれ
425:名無しの探索者
正座して待つ
427:名無しの探索者
除外の基準はどうする。柱の支持部に付いてる金具の破断、って事例が一件ある。柱側に入れるか
429:名無しの探索者
柱本体のログか記録が残ってるものだけ。金具は除外。迷ったら除外
430:名無しの探索者
厳しめで行くんだな
431:名無しの探索者
甘くして生き残っても、それは欲しかった数字じゃないだろ
468:名無しの探索者
再検算終わった。全国・三十年、結界柱の崩壊だけで二十四件(第三柱は別勘定)。最短二十七日、最長五十五日。平均四〇・八日。中央値は四十二日で、平均とほぼ重なる。分布は素直だった
469:名無しの探索者
四捨五入で41日。……生き残ったのか
471:名無しの探索者
幅は広がった。前の「30〜50」は、市内十年ぶんの、しかも柱以外込みの幅だった。母数を入れ替えたのに、平均は、ほぼ動かなかった
472:名無しの探索者
おまけの発見。二十四件、ぜんぶ別の基だった。地図に点を打つと、全国に綺麗にばらける。同じダンジョンで二本続けて崩れた例は、この三十年、一度もない
474:名無しの探索者
三十年で二十四件なら、そもそも滅多に崩れないんだな、柱って
476:名無しの探索者
次のまとめから「全国三十年・柱二十四件・幅27〜55・平均41」を正とする。旧リストも消さずに残す。数字は生き残った。俺らの雑さも、まとめに残す
477:名無しの探索者
それでこそ検証班
479:名無しの探索者
新入りです。じゃあ41日って「気づいてから41日ある」って意味じゃないんですね
480:名無しの探索者
違う。下がり始めからだ。気づくのが遅ければ、残りはその分短い。おじさんは4日前に気づいて、実際そこから4日だった
481:名無しの探索者
こわ
483:名無しの探索者
それって、普段からずっと誰かが聴いてないと、意味なくないですか
484:名無しの探索者
そうだよ。だからおじさんは毎日聴いてた
485:名無しの探索者
十年
486:名無しの探索者
十年
489:名無しの探索者
どうでもいいけど公社はおじさんのグッズを出せ
◇
木曜の夜は、北公園の換気塔の前に立った。
四番の音を取り、手帳に書いた。
下がり幅、変わらず。
濁り、あり。
進み、月単位のまま。
風のない夜で、聴くにはいい晩だった。
ダクトを渡ってくる音は、夜のほうが澄んで届く。
濁りの欄は、様式で一番広く取ってある。
書くことが多い欄だからだ。
今夜の四番は、一行で足りた。
明日の朝は第九、明日の夜は第四。
順路は、三基ぶんになった。
書き終えた頃、犬の散歩の人が通りかかって、会釈をくれた。
会釈を返した。
犬は換気塔に興味がなく、飼い主は俺の手帳に興味がなく、俺は二人の行き先に興味がなかった。
夜の順路には、それくらいの間柄がちょうどいい。
手帳を閉じて、留め金の小さい音を一つ聞いてから、公園を出た。
家に帰って、風呂に入って、寝た。
静かな木曜だった。
◇
――同じ夜、深夜帯。同スレ
578:名無しの探索者
平日の深夜にこの流速
579:名無しの探索者
41日の話を聞いてから、なんか寝そびれてる。うちの近所のダンジョンの柱、今どうなってんだろって
582:名無しの探索者
ところでさ、公社が今月出した「設備保全室 発足のお知らせ」、あれの別紙って誰か読んだ?
583:名無しの探索者
読むわけないだろそんなもん
584:名無しの探索者
読め。点検の記録様式が付いてる。「様式第一号」。欄が三つある。「下がり幅」「濁り」「速さ」
586:名無しの探索者
画像きた。ほんとだ、三つに分かれてる
587:名無しの探索者
欄の幅、「濁り」のところだけ広くないか
588:名無しの探索者
書くことが多い欄なんだろ。速さは日数で書けるけど、濁りって数字にしにくそうだし
590:名無しの探索者
備考の注意書きが良い。「推測を書くときは、推測と書きます」だって
591:名無しの探索者
役所の文書でこれ書ける人、一人しか思い当たらないんだよな
593:名無しの探索者
待て、この欄の分け方って重要じゃないか? 「速さ」と「濁り」が、わざわざ別の欄になってる
594:名無しの探索者
劣化が速いって話と、音が濁るって話を、別の現象として記録してるってことだろ
595:名無しの探索者
つまり「速いだけの柱」と「濁ってる柱」は、別物として書かれてる
597:名無しの探索者
第九の六番、突貫で直したやつあったろ。あれが「速い」方だとして、じゃあ「濁ってる」方の柱はどれだよ
598:名無しの探索者
分からん。ただ、欄がわざわざあるってことは、書く相手が存在するんだろ
600:名無しの探索者
様式から現物の存在を推理するの、考古学っぽくて好き
603:名無しの探索者
要はあれだろ、音聴けば安全か分かるんだろ
604:名無しの探索者
浅層なら音が普通=安全ってことじゃん。プロも「浅層は逃げられる場所」って言ってたし
606:名無しの探索者
800円で柵まで行けるんだから、聴き放題だよな
609:名無しの探索者
>>603
上三つまとめて違う。様式のどこにも「安全」なんて欄はない。あるのは下がり幅と濁りと速さだけだ。安全かどうかは、誰も書いてない
611:名無しの探索者
切り抜き新作きてる。「説明が、下手で」のとこ単品
612:名無しの探索者
それもう百回見た
614:名無しの探索者
おじさんの缶のお茶と同じやつ探してるんだけど特定班いる?
616:名無しの探索者
俺も今週末、第四に聴きに行くわ。800円なら映画より安い
619:名無しの探索者
だから様式には安全の欄が
621:名無しの探索者
第四の見学枠、土曜も日曜も、もう取れないんだが
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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