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推し命の転生者、弱小ポンコツな推し神様のために万能な推し活パワーで騎士爵領を大領地にする  作者: 鳥助


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9.食生活の改善(3)

 ミリアたんの力は、想像以上だった。


 鍬をまともに振るえないほど非力だった村人たちが、まるで別人のように力強く土を耕している。


 荒れ果てていた畑も、村人総出で手を入れれば見違えるほどだった。硬く締まっていた土はふかふかにほぐれ、雑に扱われていた土地が、作物を育てるための畑へと生まれ変わっていく。


 その光景を見届けたあと、私は種を取り出した。


「ここからが大事だからね。適当にやったら、せっかくの畑も台無しになるよ」


 そう言って、一つひとつ手本を見せながら種を撒いていく。間隔、深さ、土のかぶせ方。どれも丁寧に説明した。


 さっきまで半信半疑だった村人たちも、今は違う。誰一人ふざけることなく、真剣な表情で私の手元を見つめていた。


「水やりも重要。多すぎてもダメ、少なすぎてもダメ。ちゃんと土の状態を見て判断するの」


「は、はい!」


「わ、分かりました!」


「やってみます!」


 返事にも力がこもる。これまでなんとなくでやっていた農作業が、今は一つひとつ意味のある行動に変わっている。


 うん、いい流れ。村人たちはぎこちないながらも、教えた通りに作業を始めた。慎重に、丁寧に、確かめるように。その様子を見ながら、私は小さく頷いた。


 これなら、ちゃんと育つね。荒地だった場所に、少しずつ未来が蒔かれていく。そんな確かな手応えが、そこにはあった。


 そして、時間は流れて――ふた月が経った。畑には沢山の実をつけた農作物が育っていた。


「ほ、本当に……実った……」


「信じられない……」


「何もない荒地だったのに……」


 その畑を見て、村人たちは呆然としている。その村人に向かって、私は言う。


「みんな、これで分かったでしょ? ミリアたんを信仰すれば、こんなに沢山の食べ物が手に入るって」


 ミリアたんに祈りを捧げてから行った畑作業。祈りのお陰で村人たちはしゃきしゃきを動き、広い畑の世話をしていた。


 そのお陰で畑が実り、この結果が出た。


「おぉ……これが信仰の力……」


「凄い……。信仰するだけで、こんなに沢山の食べ物が……」


「ありがたい、ありがたい。ミリア様……」


 その畑を見て、村人たちはとても感動している。そして、ミリアたんの前に膝を付いて、感謝の言葉を述べ始めた。


『みんな、私を信仰してくれてありがとう。少しでも、みんなの力になれたかな?』


「それは、もう! ミリア様の力がなかったら、農作物は育てられませんでした!」


「ミリア様を信仰することで、自然とやる気が出てきたんです! こんなの初めてで!」


「ミリア様が傍にいてくれたお陰で、なんとかやり遂げることが出来ました!」


 皆が口々にミリアたんを讃える。うんうん、そうだろう。ミリアたんがいてくれたおかげで、この日を迎えることが出来たといっても過言じゃない。


 それにしても、ミリアたん……優しいし健気。そこがいい、可愛い。やっぱり、ミリアたんは神!


『これからも、私を信仰してくれますか?』


「それはもちろんです!」


「これからも、祈りを捧げさせてください!」


「ミリア様が神様で本当に良かった!」


 これは、私の作戦が当たったんじゃない? このまま、領地を豊かにしていけば、信仰が集まってくれる。そしたら、ミリアたんが創造神に消されることはなくなる。


 だけど、これだけじゃ安心できない。やっぱり、まだ信仰が浅いから強力な加護を得られていない。みんな、私のように強力な加護を得られるようにしなければ。


「これからは、もっともっとミリアたんを信仰してもらう!」


「それは、やりますが……」


「いいや、足りない。みんな、私のようになってもらわないと困る」


「シア様のようには無理ですよ!」


「いや、やればできる! もっと、もっと、ミリアたんを信仰するんだよ!」


「で、でも……どうやって?」


 村人たちは私のようになるのを想像出来ないのか、首を傾げている。そこで、私は教えを語る。


「いい、よく聞いて。ミリアたんを信仰するっていうのはね、ただ祈るだけじゃ足りないの、朝起きた瞬間にミリアたんおはようって思って、顔を洗う時もこの水はミリアたんの恵みって感謝して、ご飯を食べる時は一口ごとにミリアたんありがとうって噛みしめて、畑を耕す時もミリアたん見てるかな、ミリアたんならどうするかなって考えて、疲れてもミリアたんのためならまだ頑張れるって踏み出して、夜眠る前には今日もミリアたんと一緒だったって思いながら目を閉じるの、そうやって一日の全部をミリアたんで満たしていくのが信仰なの」


 息継ぎも忘れたみたいに言い切ると、村人たちはぽかんとした顔で固まっていた。


「それだけじゃないよ、嬉しいことがあったらミリアたんのおかげって喜んで、辛いことがあってもミリアたんが見てるから大丈夫って耐えて、何かを選ぶ時はミリアたんならどっちを望むかなって考えて、自分の中の全部をミリアたん基準にしていくの、そうすればね、自然と分かるようになるの、ミリアたんが何を望んでるのか、どこにいるのか、どうすれば喜んでくれるのかが、だってずっと考えてるんだから、当たり前でしょ?」


 にこり、と笑う。


「信仰ってね、時間の一部を捧げるものじゃないの、全部を預けるものなの、少しだけじゃダメ、中途半端もダメ、ちゃんと全部ミリアたんにあげるの、そしたらちゃんと返ってくるから、力も、恵みも、奇跡も、全部」


 すっと、手を胸に当てる。


「私はそうしてるよ? だから、ここまで出来るの」


 静かに、でも逃がさないように視線を絡める。


「みんなも、出来るよね? だって、ミリアたんに救われたんだから。そのくらい、当然でしょ?」


 ニコリと微笑むと、村人から悲鳴が響いた。

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