37.収穫からのワイン造り
秋の季節になり、ブドウの収穫の時期になった。ブドウの実は膨らんで色づき、あとは収穫の日を待つだけになった。
最高の状態で収穫したかったため、毎日ブドウを調べて、収穫時期を見極めていく。そうして、秋も深まった頃――。
「うん、収穫するのに適したブドウになったよ」
最高の状態のブドウになった。これならば、収穫しても大丈夫そうだ。
それから、村人総出でブドウの収穫が始まった。ブドウを一つずつチェックしながら、房を切り取って籠の中に入れていく。
その作業を続けいる横で、房からブドウの実を取り出す作業も同時並行する。この後、踏み潰す作業に入るのだが、房と一緒に踏み潰すと房の青臭さや渋みが出てしまう。上質なワインを作りたいので、手間だがこの作業も行った。
取り外した実で桶がいっぱいになると、桶が私たちの前に置かれる。
「じゃあ、お兄様。やりましょう」
「うん! 楽しみだ!」
足を綺麗にした私たちはミリアたんに祈って力を授かる。そして、その力を体中に行き渡らせた。イメージするのは屈強で大きな体。
すると、体は大きくなり、足も大きくなった。その屈強で重たい体についた足でブドウを踏み潰すと簡単に潰れていった。あっという間に桶の中のブドウが踏みつぶされて、汁が溜まっている。
「ふう、こんなものだね」
「面白かったな! まだ、やるんだろう? 楽しみだ!」
まぁ、中々楽しかった。その時――。
「いやぁぁあああっ! また、私の可愛い天使が化け物にーー! 二人揃ってーー!」
様子見に来たお母様が私たちを見て絶叫した。
「戻ってぇ! お願いだから、戻ってぇえ!」
「いや、流石に仕事だから戻れないよ」
「俺、これが好きだからずっとこのままでもいい!」
絶叫するお母様を置いておいて、次の作業に取り掛かる。潰したブドウと汁を樽の中に入れ、今度は発酵を促す。
空気中やブドウについている天然酵母のお陰で、放置していれば発酵してくれる。だけど、ここで現代の知識を活用する。
昔のブドウ作りは気温管理はしていなかった。そのため、天候で味が左右されたと聞く。そうすると、味が落ちたりするからワインの価値が落ちてしまう。
だから、ここはしっかりと温度管理をする。倉庫に樽を持っていき、倉庫の温度を測る。現在の気温は十八度。適した温度は二十度から二十五度だ。これだと少し足りない。
ここから、ひと工夫をする。倉庫の周りで焚火をする、火が燃え移らないように管理する人も置く。すると、倉庫の温度は上がり二十三度になった。これならば、ちゃんと発酵してくれるだろう。
発酵期間は軽くて飲みやすいワインなら一週間。濃くて渋みが強いワインなら二週間。なので、ウチは両方の期間で作ることに決めた。
まずは一週間発酵させ、それが終わると今度は圧搾作業だ。圧搾機に入れ、液体と固形物に分ける。そうして、出てきた液体がワインの素だ。樽の中に入れて、今度は熟成に入る。
熟成は事前に作っていた地下の貯蔵庫。ここならば、適した温度のまま長期間熟成する事が出来る。二種類の貯蔵庫にそれぞれのワイン樽を入れた。
軽くて飲みやすいワインの熟成期間は数か月でいい。なぜかというと含まれるタンニンの量が少なくて、長期熟成に耐えれる体力がないからだ。
でも、しっかりと発酵させたワインにはタンニンが多く含まれているため、長期熟成に適している。なので、こちらの商品を高級路線でいく。
これで、数年熟成させれば……って、そんなに時間なんて待ってられない! 私には早くミリアたんを最高の神様にする使命がある!
ということで、ここでもミリアたんの力を使うことにした。
「じゃあ、ミリアたん。祈るよ」
『うん、いつでもいいよ』
ミリアたんに祈り、目いっぱいの力を授かる。その力を時間が進むような力に変え、貯蔵庫全体にかけた。すると、貯蔵庫に入っていたワインの時間が加速した。
だけど、それほど手ごたえがない。調べてみると、熟成されて十日と出てきた。
『うぅ、ごめんなさい……。私の力ではこれくらいが限界みたい……。やっぱり、私はポンコツ……』
「ううん、ミリアたんのせいじゃないよ。ミリアたんの力を存分に発揮出来なかったワインが悪いんだよ。そんなに落ち込まないで」
『でも、このワインは熟成するほど美味しくなるんでしょ? だったら、多い方がいいんじゃない?』
「そんなことはないよ。どんなワインでも適した熟成期間っていうのがあるんだよ。だから、決して長ければ長いほどいいってわけじゃない」
ワインの熟成は環境によって、大きく左右される。気温もそうだし、保存容器でも影響が出る。樽の密閉性が低ければ、ワインはダメになる。その為に、私は良い樽をミリアたんの力で作った。
この地下貯蔵庫と樽がどれだけの熟成に耐えられるか分からない。それを見極めつつ、熟成を進めなければいけない。
「毎日コツコツやっていって、春先に売れるように整えていけばいいよ。だから、ミリアたんはそのままでいい。無理はしないでね」
『ありがとう……。私でもみんなの役に立てるように頑張るね』
全然ミリアたんは頑張らなくていい。全部、私がやるから。ミリアたんはそこにいるだけで十分だ。
よし、あとは徹底的に管理をして、最高のワインを造る!




