表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
推し命の転生者、弱小ポンコツな推し神様のために万能な推し活パワーで騎士爵領を大領地にする  作者: 鳥助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/45

33.お子様のお茶会(2)

 コミュ力お化けのお兄様を前面に出した交流は、驚くほど自然に広がっていった。


 新しく到着した子供を見つけると、絶妙な距離感で歩み寄り、人懐っこい笑みとともに会話を始める。その気さくな態度は、相手の警戒を解くのがとにかく上手い。


 一対一で始まった会話は、気付けば周囲を巻き込み、小さな輪となって広がっていく。笑みや頷きが連鎖し、張り詰めていた空気が少しずつ和らいでいった。


 私は少し離れた位置から様子を見ながら、折を見て話題に変化を加える。お菓子や園庭の話など、誰もが興味を持てる要素をさりげなく差し込むことで、会話の流れを途切れさせないように整えていく。


 その流れに乗り、お兄様は全体を見渡しながら言葉を配り、誰一人取り残さないように場をまとめていく。気付けば、その中心には自然と人が集まり、小さな人だかりが出来ていた。


 そして、絶妙なタイミングで干しブドウを売り込み、着実に認知を広げていった。


 最初に感じた緊張感は薄れ、園庭には柔らかな賑わいが広がっている。


 ただの談笑ではなく、場を読み、流れを作り、空気を変えていく。ふっふっふっ、このお茶会、勝った! 干しブドウの買い手がたくさん見つかったも同然。


 たくさんの交流で味見用に持ってきた干しブドウがなくなり、あとは消化試合になった。


 ここまで来たのなら、あとは自由にしよう。私はこそっとお兄様に耳打ちをする。


「おにいちゃま。えいぎょうはおわりにして、あとはじゆうにたのしんでもいいよ」


「えっ、そうなのか? だったら、気の合う奴がいたから話に行ってもいい?」


「うん。わたちもこうりゅうをふかめるあいてをみつくろうよ」


「やったー! じゃあ、行ってくる!」


 嬉しそうに声を上げると、お兄様は集団の中に入って行った。そこでは、弾けんばかりの笑顔で楽しそうにしている姿を見つけられた。


『ひと段落だね。疲れてない?』


 その時、足元にいたミリアたんが話しかけてくる。


「いつもとはちがうから、ちょっとちゅかれた。こうりゅうをふかめるまえに、ひとやすみしようかな」


『だったら、席に行こうよ。あそこだったら、十分に休めるよ』


「うん!」


 ミリアたんが私を気遣ってくれる! その優しさに笑顔が蕩けると、空いている席へと座った。


 すると、すぐにメイドがやってきてお茶を淹れてくれる。そのお茶を一口飲みと、ホッと息を付こうとした、時――。


「……ねこ」


 後ろの生垣から声がした。ビックリして振り向くと、そこには金髪の男の子が生垣から顔を出していた。


 年は……私よりも年上のような気がする。だけど、せいぜい一歳か二歳程度だ。


 お茶会では滅多に見たことがなかった同じ幼児。仲よくしようにも、みんな五歳以上も年上ばかりで困っていたところだ。親近感があるし、この子なら仲良くなれそう。


「こんにちは。あなたはだぁれ?」


「……ひみつ。それより、ねこ。……さわりたい」


「くそがきが、うちぇろ。ミリアたんにはさわらしぇねぇ」


「……きゅうにことばがわるくなってない?」


 ミリアたんに触ろうなんざ、神様が許しても私が許さねぇ。もしかして、こいつ……敵か?


 睨み返していると、ミリアたんが私の腕を叩いた。


『そんなに怒らないで。触るだけなら、許してあげようよ』


「やだ……ぜったいやだ……。ミリアたんは、わたちだけのものなのに……なんでほかのこにさわらせなきゃいけないの……。わたち、こんなにだいじにしてるのに……いっしょにねて、いっしょにごはんたべて、ずっといっしょにいるのに……それでもたりないの……? さわるだけっていうけど……そうやってすこしずつ、とられていくんでしょ……? やだ……そんなの、ぜったいやだ……」


「……なにこのこ、こわい」


『シ、シアさん! ここは穏便に、仲良くなるチャンスなんだよ!』


「うぅ……ミ、ミリアたんがそういうなら……」


 心が切り裂かれる思いで、その男の子を呼んだ。すると、男の子は生垣から出てきて、そっとミリアたんに触った。


「……ふわふわ、きもちいい……」


「あたりまえでちょ。わたちがまいにちていねいにブラッシングをさせてもらっているんだかりゃ」


「へー、たいせつなねこなんだね。きみ、ちょっとこわいけどおもしろそう。なにか、はなしして」


「はなち? だったら、ミリアたんのすばらしいところをかたりゅね」


 私に対してミリアたんの話をさせるなんて、そんなに悪い奴じゃない? だったら、このミリアたんへの思いをぶちまけるべきだろう。


 そうして、私はその男の子にミリアたんへの愛をぶちまけた。無表情だった男の子が驚いた顔になり、次第にその表情が緩んでくるのが分かった。


「ふーん、いいね。そこまですきなものがあるのって」


「すきっていうことばでかたじゅけないでほしい。わたちのあいはそんなことばじゃ、あらわせきれりゃいほどに――」


「ミリアたんってほんとうにかみさまなの?」


「ほほう、わたちがうそをいっているとでも? このこうごうしいすがたをみりぇばわかるだろう」


「わたしにはかわいいねこにしかみえないよ。……でも、そんなにあついきもちなら、しんじてみたいな」


 ……はっ! も、もしかして、ミリアたんの布教になっていただと!? 信者が増えるなら大歓迎だ!


「ぜったいにしんじゃににゃるべき。しんじゃになれば、こうふくなまいにちがまっている」


「こうふくねぇ……。どんなふうに?」


「しにたかったにんげんをいきていきたいとおもわせるほどのこうふくだよ」


「それは、こうふくなの? だって、しにたかったのにしねなかったんだよ。らくになるせんたくをしなかったんだよ」


 男の子が不思議そうに首を傾げて訴えてきた。死にたかった人間は死なせるのが幸福だと言わんばかりだ。だけど、それは当事者じゃないからそんなことが言える。


「だれかがそばでよりそってくれるだけで、ちょっとだけおうえんしてくれるだけで、まえむきになれた。そうなると、もっとそのときのきもちになりたくて、そのひとといっしょにいたいっておもえるの。こうふくになれるひとをみつけたの」


「なるほど……しぬまえにこうふくをしってしまったんだね。そうなると、またあじわいたくなるな。それをじつげんしてくれたのが、そのミリアたんっていうかみさまなんだね」


 ……この子、理解している? まだ三、四歳くらいだと思うんだけど、すごい頭をしているな。


「きみたちはかわっていておもしろいね。もっと、なにか――」


 そう言いかけた時、男の子が辺りに視線を向ける。すると、遠くで誰かの大声が聞こえた。


「――セロスフィア王子、どこですか!? セロスフィア王子!」


 何人かの大人が紛れ込んで、懸命に辺りを見渡している。人を探している?


「……ざんねん。はなしはおわりだ」


「えっ? ……まさか」


「ねぇ、なまえきかせてよ」


「……シア・モンベルト」


「シア。また、ここにおいで。そのときはもっとおもしろいはなしをきかせてよ」


 そう言って、その男の子は初めて笑った。だけど、すぐに無表情になると、騒いでいた大人たちに歩み寄っていった。


 すると、大人たちは男の子を囲い込み、すぐにこの場所から立ち去って行った。


 ……もしかして、王子と顔見知りになってしまった?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載!

スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~

旧作

転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!

転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~

追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する

転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした

スラムの転生孤児は謙虚堅実に成り上がる〜チートなしの努力だけで掴んだ、人生逆転劇〜

ゾンビがいる終末世界を生き抜いた最強少女には異世界はぬるすぎる

元社畜はウィンドウで楽しい転生ライフを満喫中! ~ゲームのシステムを再現した万能スキルで、異世界生活を楽々攻略します~

異世界喫茶で再出発ライフ

ゴミスキルだと捨てられた少女たち、実は最強の生活能力スキルだったので気楽なスローライフ冒険旅を満喫する

推し命の転生者、弱小ポンコツな推し神様のために万能な推し活パワーで騎士爵領を大領地にする

過保護なお姉ちゃん系王女を救うために何度も死に戻っていたら、全部バレていて曇らせてしまった


この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~

コミュ障クラフターの私、引き継いだ能力が異世界では規格外すぎて無自覚に無双してしまう件~地味に暮らしたいだけなのに、なぜか注目されて怖いんですが~

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ