31.干しブドウ
ブドウが育つまで十日かかった。食べてみると、とても瑞々しくて甘いブドウだった。普通に食べるには適している味だ。これなら、干しブドウにしても売れるだろう。
それから、村人総出でブドウを摘み取る。摘み取ったブドウは綺麗に洗って、干し網に並べて干した。その間、ブドウの木を休ませて、土の状態を見る。
土は豊富な栄養から、普通の栄養まで下がってきた。どうやら、今回のブドウでかなりの栄養を吸い取ったらしい。どうりで、あんなに美味しいわけだ。
これなら、干しブドウとしても売れる可能性が出てくる。始めの金策としては、期待が持てる味だ。
ブドウが干している間にもやることがある。瓶の製造だ。ワインを作った後、入れるものが必要だ。他の領で買い付けするよりも、自領で作った方が安上りで済む。
今後はワインを売っていくこともあり、ガラス瓶作りは急務だ。それで、ワインの瓶を作る前に、干しブドウを入れる瓶を作ることによって、経験値を増やしていく作戦だ。
村人の中から、手際の良い村人を数人選ぶ。そして、ガラス工房を作り、ガラス瓶作りが開始になった。
材料は簡単。砂、ソーダ、石灰。砂と石灰はある場所に私が取りに行けばいい。ソーダは木灰に含まれるので、それは領地で作る。
そうして材料を全部集めると、るつぼに入れて混ぜ合わせる。溶け切ったところを、今度は形を整えていく。
「ほら、こんな風にやるんだよ」
私が手本を見せると、職人見習いの村人が「おー!」と声を上げる。
「シア様はどうしてそんなことも出来るのですか!?」
「本当に多才ですね!」
「とても、分かりやすかったです」
ミリアたんのために、色々詰め込んだ知識が役に立った。ミリアたんのためなら、どんなことでも私は出来る!
「じゃあ、みんなもやってみて。最初は失敗してもいいから、経験を積んで」
「「「はい!」」」
そうして、ガラス職人を育成も始まった。みんな、始めは上手くいかなかったけれど、経験するごとにどんどん上手くなっていっている。
この調子なら、干しブドウまでには間に合いそうだ。私は、干しブドウが出来るまで、職人見習いの指導を続けていった。
◇
迎えた干しブドウが出来る日。家族で干しブドウの様子を見に来た。瑞々しかったブドウが小さくしぼんでしわしわになっている。
「これが干しブドウ? なんだか、美味しそうに見えない」
「見た目は悪くなったけど、美味しいよ。みんなで食べてみよう」
そう言って、家族に干しブドウを配った。みんなで目くばせをして口を放り込む。噛むと、甘い味が口に広がった。
「これは、なんと……芳醇な甘さだ」
「とても上品だわ。こんなの食べたことがない」
「すげー、美味しい!」
家族はみんな驚いた顔をした。私もそう思う。これはブドウが良かったのと、良い条件で干せたから上手くいったんだ。
しかも、この味は高級志向。庶民向けじゃなくて、貴族向けに売れる。
「これは、売れるよ! 早速、みんなで瓶詰めをしよう!」
指示を出すと、村人たちが干しブドウを瓶に詰めていく。ブドウが詰め終わると、今度は皮で蓋を閉じて紐で縛る。これで、一瓶完成だ。
そうして、一日がかりで瓶詰めをして、五千瓶ほどの干しブドウの瓶詰めが出来上がった。
「凄い……。たった、一か月で干しブドウの商品が出来てしまった。シアは凄いな、こんなことが出来るなんて」
「可愛らしい天使がここまでのことをするなんて、ビックリしたわ」
「シアは凄いな!」
出来上がった瓶詰めの山を見て、家族が手放しに褒めてくれる。それはそれで嬉しいけれど、肝心なことは忘れてない?
「私のお陰じゃないよ。全部、ミリアたんのお陰。だから、感謝を忘れないで」
そういうと、家族も村人も苦笑いをして、ミリアたんに祈りを捧げた。そうそう、それでいいんだ。全部、ミリアたんのお陰なんだから。
「じゃあ、今度はこの商品を売らないといけないな。出来る限りのことは協力させてもらうぞ」
「だったら、この商品を貴族向けに販売したいの。だから、貴族の集まりに連れて行って欲しい」
「貴族の集まりか……。まだ二歳のシアには早いと思っていたが、子供が集まるお茶会があるんだ。そこに、連れて行こうか?」
ほう……。子供が集まるお茶会。それは、絶好の好機ですねぇ。
「じゃあ、そのお茶会に連れて行って!」
「よし、任せておけ。たくさんの子供が集まるお茶会に連れて行ってやろう」
よし、これで伝手が出来れば、干しブドウが売れる。そして、その干しブドウで得た人脈を使って、ワインを売る。ここに、黄金の道筋が立った。
絶対にこのお茶会を成功させて、領地を栄えさせるんだ! ミリアたんのために!




