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推し命の転生者、弱小ポンコツな推し神様のために万能な推し活パワーで騎士爵領を大領地にする  作者: 鳥助


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30/45

30.ワイン造りの前に

 それから、ミリアたんに負担をかけないようにブドウの木を増やしていった。最初は三十本だったブドウの木が百本になり、千本になり、一万本になった。


 そこまで増やすためには村人の力も必要になり、村が一丸となってブドウの木の増殖を手がけた。お陰で、三か月で一面に木を生やすことが出来た。


 こうなってしまえば、後はブドウを育てて、ワインを造るだけだ。工程はちゃんと頭の中に入っているが、それを倣うだけでワインが簡単に出来るとは思ってはいない。


 まずは数本のブドウの木から、ブドウを生育させる。それはミリアたんの力を使って、祈りの力で生育させたもの。


 そのブドウを食べてみると――。


「……普通のブドウ?」


 確か、ワインのブドウって味が濃いんじゃなかったっけ。とても甘いのとても酸っぱい。皮に渋みがあって、キュッと締まる味がする。


 だけど、これは普通に食べても美味しいブドウ。これだと、美味しいワインは造れない。じゃあ、何がダメだったのだろうか?


『シアさん、原因が分かった?』


「んー、良く分からない。だから、ミリアたんの力を借りてもいい?」


『私の力でブドウを良くするの?』


「いや、原因を調べるんだよ」


 そう言って、ミリアたんに祈りを捧げる。返ってきた力に強いイメージで変異させる。この力は――鑑定の力。


「よし! 今のブドウの木の詳しいことを教えて!」


 その力を行使すると、情報が頭の中に入ってくる。


【ワイン用のブドウの木】


・日照:×


・気温:〇


・寒暖差:〇


・水はけ:〇


・土:×


「なるほど、ダメなのは日照と土ってことか。どんな感じでダメなのか、教えて」


【ワイン用のブドウの木】


・日照:足りない


・土:栄養過多


「そうか……。祈りの力で育てても、当たる日照が少なかったんだ。それに、新しくこさえた畑だから栄養がありすぎると」


 問題が見えてきた。克服する問題は日照問題と土の栄養状態。これをどうにかすれば、ワイン用のブドウが造れる。


「じゃあ、このワイン用のブドウはミリアたんの力を使わないで育てる。普通に育てて、十分な日光を浴びさせるんだ。栄養は……ブドウを作りまくって、栄養を枯らせる。そうしたら、いずれこの土地から栄養が抜けてくれるはずだ」


 やることが決まった。あとは、実行するのみ。


「栄養を枯らせるだけにブドウを作るのも勿体ないな……。どうにかして、お金にすることは出来ないだろうか」


 加工品は色々あるけれど、一番手間がかからずに、簡単に造れるものは……。


「うん、干しブドウを作ろう。乾燥させるだけで出来るし、保存も効く。ワイン用のブドウが作れるまで、干しブドウを売ろう」


 作るものが決まった。後は、必要な道具を用意して……あっ! 売り先も必要だ! それに商品を扱う商会も必要!


「ブドウを作る前に、まずは商会を作らなくちゃ!」


『ブドウを作るだけじゃ終わらないんだね。大変そうだけど、大丈夫?』


「もちろん、大丈夫! ミリアたんのためだと思えば、全然苦じゃないよ!」


『……ありがとう。いつも、私のために動いてくれて嬉しい』


 にっこりと笑いかけてきた。


 うひゃ――――っ!! な、なにこれ!? 声が、声が直接魂に流れ込んできてるんだけど!? 全身の血が一瞬で沸騰したみたいに熱い! いやむしろ、これ一言で寿命が千年くらい伸びた気がするんだけど!?


 ダメだ、もう無理。尊すぎて直視できない。いや、でも見たい、ずっと見ていたい!


 その一言、その笑顔――それだけでいい。剣だろうが魔物だろうが世界の果てだろうが、なんだってやってやる! 今の私、絶対に無敵なんだけど!?


 待っていろ、難関! 全部解決させてやる!


 ◇


 屋敷に戻った私は早速商会を作る準備を進めた。商会長は私にして、その商会で働く人を村人から見繕う。中には昔、商会で働いていた人がいて、その経験がある人を積極的に雇った。


 屋敷の隣に商会の建物を作る。今後、商品を作ったらこの商会を通して売りさばくつもりだ。そのために、商会で働く人の教育も忘れない。


 そうして、商会の準備を終えると、ようやく干しブドウ作りがスタートした。


「ミリアたん、行くよ!」


『うん! 私、精一杯頑張るね! たくさんの祈りの力を頂戴!』


 ミリアたんはそういうが、やはりここは控えめにする。いつものように祈って、力を返してもらう。そして、その力をブドウの生育に作用するように変える。


「力よ、広がれー!」


 その力を放出すると、畑に広がっていった。すると、ブドウの木から芽が出た。だけど、それだけで終わってしまった。


『うぅ、ごめんなさい……。力が弱かったみたい。シアさんの力を十分に発揮出来なかった……。やっぱり、私はポンコツ……』


 その生育スピードを見て、ミリアたんがしゅんと落ち込んでしまった。


「そんなことないよ! 見て、見てよこれ!! この広大無辺の畑、そのすべてのブドウに、一斉に芽が吹いたんだよ!? こんな奇跡、もはや人の業じゃない! 天地創造に匹敵する大偉業だよ!! 普通なら何年もかけて少しずつ育つはずの命が、たった一瞬でこの有様だよ!? これを凄いなんて言葉で片付けるのは失礼すぎる……これはもう神話級、いや神そのものの御業だよ! ミリアたんは最高神! 至高神! 唯一無二の絶対存在! この世界の理すら塗り替える、全知全能にして究極無敵の女神様なんだから!!」


『うっ……あ、ありがとう……』


 よ、良かった……ミリアたんが笑ってくれた。ああ、その笑顔、やっぱり世界で一番かわいい……。ねえ、ミリアたん。自分の凄さ、ちゃんと分かってる? あなたの力は本物なんだよ。誰が何を言おうと、全部間違い。正しいのは、私だけが知ってる。


 だから、落ち込まなくていいよ。もし少しでも自信をなくしたら……私がちゃんと、何度でも教えてあげる。優しく、ゆっくり、逃げられないくらいに。


 大丈夫。ミリアたんは私のそばにいればいいの。だって、あなたの価値を一番理解してるのは、この世界で私だけなんだから。


『えっと、シアさんも大丈夫? 無理してない?』


「あっ、全然平気! ミリアたんがいれば、いつでも全力投球できるくらいには元気だよ!」


『そ、そう? 無理はしないでね』


 いけない、自分の思考に落ちるところだった。だけど、これを数日続ければ、ブドウが出来る。そして、栄養を土から搾り取って、ワイン用に適した土になる。


 ブドウが出来た都度に土の状態を確認して、土づくりをやっていこう!

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