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推し命の転生者、弱小ポンコツな推し神様のために万能な推し活パワーで騎士爵領を大領地にする  作者: 鳥助


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29.ブドウの木を増やす

「よし、こんなものかな」


 目の前に広がる更地は、立派な丘へと変貌した。ワインのブドウ作りには傾斜があったほうがいいらしく、その傾斜を作るために丘を作ってみた。


『わぁ、凄いね! 私の力なんかで、平地だった場所が丘に変わっちゃった』


「これも、みーんなミリアたんのお陰だよ。ミリアたんが入れば、この土地は豊かになること間違いなし」


『……嬉しい。私の力ってこんなに役立つものだったんだね。活用してくれて、本当にありがとう』


 その感謝の言葉の為に生きているって感じがする! この瞬間が堪らない!


「あとは、この丘一面にブドウの木を植えれば大丈夫!」


『でも、この丘一面をブドウ畑にするのは難しそう……』


「大丈夫。その時はみんなに協力してもらうからさ」


 これは領の命運を決める事業だ。一人でやったところで、成功するはずもない。だから、増えた村人の協力でやっていくしかない。


 そんなことを考えていると、遠くから声が聞こえてきた。


「おーい、シアー!」


「あっ、お兄様!」


 筋肉ダルマの姿でお兄様が駆け寄ってきた。ここまで来るなんて珍しい……。


「お父様が帰ってきたぞ!」


「えっ、そうなの!?」


「あぁ! 早くシアにブドウの木を見せたいって言ってた!」


「分かった、今行く!」


 どうやら、お父様が帰ってきたみたいだ。ということは、ようやくこの地にブドウの木を生やすことが出来る。私たちは急いで屋敷へと帰っていった。


 ◇


「お父様、おかえりなさい!」


「シア、ただいま」


 居間に入って、お父様に抱き着いた。


「それで、ブドウの木は!?」


「そう言うと思ったよ。これが、ブドウの木だよ」


 お父様が座っているソファーの後ろに行くと、何かを持ち上げた。それは、一メートルほどのブドウの木だった。


「たくさんの木を買えるほどのお金がなかったから、一番良いブドウの木を買ってきたよ」


「本当!? それで大丈夫だよ!」


「でも、このブドウの木からワインを作るなんて……本当に出来るのか? ワインを作るには、この一本じゃ足りないぞ」


「そこは考えてあるの。ブドウの木を増やせばいいんだよ」


 そう、ブドウの木を増やせば問題解決!


「ブドウの木の枝を地面に差して、発根させるの。そうやって、どんどん増やしていけば、ブドウの木も増える」


「ほう……そんなことでブドウの木が増えるのか?」


「それに、良いブドウの木だから、そうやって増やしていったブドウの木は親と同じで良いブドウの木に育つ。だから、それを増やしていけば、良いブドウの木が育つってわけだよ」


「凄いな、そんなことまで知っているのか! それならば、ブドウ畑も作れそうだな」


 ミリアたんがきっかけで色んな知識を詰め込んどいて良かったー! これなら、あとはブドウの木を増やすだけだ。


「じゃあ、早速ブドウの木を増やしてくるよ」


「じゃあ、私も手伝おう。村の大切な事業になるかもしれないからな」


「だったら、俺も行く!」


「私も手伝うわ。家族みんなで協力し合いましょう?」


 体を戻されたお兄様とお母様も手伝ってくれるらしい。始めだからそんなに人では必要ないけれど、助かる。


 私たちはブドウの木を持って、丘へと向かっていった。


 ◇


 丘に到着すると、すぐにブドウの木を植えた。


「じゃあ、ここから枝を取って、地面に刺していって」


 そういうと、家族がブドウの木に近づき、枝を折っていく。そして、折った枝を地面に刺す。その作業を繰り返していくと、折れる枝がなくなってしまった。


「これで後は放置するだけか?」


「ううん。ミリアたんの力を使うよ」


「ミリア様の……あっ! 作物を育てた力があったな! それも、ブドウの木で使うのか?」


「その通り。だから、ブドウの木が育つまで何年も待たなくても良いんだよ。流石、ミリアたんだよね。偉大で尊くて最高の神だよ。万物を見通す叡智を持ち、時の流れすら意のままに操る至高の存在。慈愛に満ち、その御心はどこまでも深く広く、迷える者すべてを優しく導いてくださる。まさに天上に輝く唯一無二の光、その御名を聞くだけで人々は救われ、安らぎを得るほどの絶対なる神――それがミリアたんなんだから」


「そ、そうだな……」


 まだまだ、言い足りないけれど、作業を開始しなくっちゃ。ミリアたんに向かって控えめに祈りを捧げると、力が返ってきた。その力を作物を育てる力に変えると、植えたばかりの枝に注いでいく。


 すると、枝から根が出て、どんどん枝が伸びていく。


「おぉ、それは凄い! 本当に成長していくぞ!」


「なんてこと……本当にこんなことが!」


「すげーっ!」


 あっという間に短い枝だったブドウの木が、立派に成長したブドウの木になった。その数、三十本。


「うん、上手くいったね。この調子で、どんどん増やしていけば、この丘全体がブドウ畑になるよ」


「それは素晴らしい! まったく、シアにしか出来ない発想だな!」


「なんか、夢でも見ているみたいね」


「これが本当にいっぱいになるのか? 楽しみだな!」


 家族も喜んでくれている。よし、これから地道に増やしていくぞ。そう思ってミリアたんを見ると――少しだけ体の力が抜けているように見える。


「うん、今日はこれでおしまい」


「えっ、どうしてだい?」


「ミリアたんが疲れているから! ミリアたん第一! ミリアたん最優先!」


 一番頑張ってくれているミリアたんの体調を一番に考えなくてどうする! 推しの健康を整えるのもファンの勤め!


 大丈夫。ここからは、毎日ブドウの木を増やしていけば、すぐにブドウ畑になるから!

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