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推し命の転生者、弱小ポンコツな推し神様のために万能な推し活パワーで騎士爵領を大領地にする  作者: 鳥助


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3.布教のやり方

『騒がせしてしまって、ごめんなさい。私の力でシアさんに特別な力が行き渡ったの』


 ミリアたんが場を落ち着かせて、説明をしてくれた。すると、先ほどまで混乱していた家族がようやく話を呑み込んでくれた。


「まさか、神様の力だなんて知らずに……。飛んだ失礼をしました」


 真っ先に口を開いたのはモンベルト騎士爵家当主のお父様、ケイズ。宙に浮いているミリアたんを見て、深々とお辞儀をした。


「私も取り乱してしまって申し訳ありませんでした。非礼をお詫びします」


 次にお母様、レイチェルがお辞儀をする。先ほどの慌てぶりは落ち着いたようだ。


「凄ーい! 神様? どうして、神様がここにいるの?」


 その横で六歳のお兄様、セントがミリアたんを見て目を輝かせている。


『分かってくれたらいいよ。家の迷惑を考えないで急に押しかけてごめんなさい……。やっぱり、私はポンコツ……』


「ミリアたんは全然ポンコツじゃないよ! スーパーウルトラダイナミックな最高神だよ!」


『シアさん……。本当にいつも応援してくれてありがとう』


 柔らかい声が頭に響いて、体が痺れる。ミリアたんの声は快感だよ! 永遠に聞いておきたい!


「と、とにかく……シアが神様の力で喋れて浮けるようになったのは分かった。急に浮いて喋りだすシアは邪神そのものだったが……」


「ほ、本当に良い神様なんですよね? シアを乗っ取って、酷いことはしませんよね?」


「シア、凄い! 俺も浮けるようになりたいなぁ!」


 落ち着いたと思っても、まだ心が浮ついているようだ。だったら、ここはみんなの気持ちを一つにするしかない。


「みんな、落ち着いて。まずは私の大事な話を聞いて欲しい」


「シアの大事な話? そ、そうだよな……。シアは話したくてその力を発揮したんだもんな」


「シアがここまでして話したかった話って何? もしかして、家族のこと?」


「シアの喋り方、大人っぽくてすげー!」


 こほん、と一つ咳ばらいをすると――。


「ミリアたんの布教をするにはどうしたらいい?」


 超重要なことだ。それなのに、家族はぽかんと呆気に取られていた。


「そ、そんなこと?」


「そんなことじゃない! ミリアたんを布教しないと、ミリアたんが消えてしまう! 信者が私しかいない状況だと、消えるしかないんだ! そうは、絶対にさせない! だから、早く布教をしないとダメなの!」


 ミリアたんを弱小ポンコツ神様のままでいさせたら、創造神によって消されてしまう。その創造神を殺したいほど憎いけど、今出来る手段はこれしかない。


「ミリアたんは私の生きがい! その生きがいがないと、生きていけない! いわば、運命共同体! つまり、一心同体! よって、ミリアたんと私は夫婦も同然! そんな運命の人の危機を救わないで何が夫か!」


「シアが夫? あれ? シアって男の子だった? ちんちん、なかったぞ?」


 セントがおとぼけをかますが、それに構っている暇はない。私は両親に向かって、指を差した。


「さぁ、言え! どうしたら、ミリアたんを布教出来る!」


「まだ赤ちゃんのシアがこんなにお喋りするなんて……」


「赤ちゃんには見えない、この活舌……」


 はっきりと伝えたはずなのに、両親は戸惑うように身を寄せた。もしかして、やりすぎた?


「ミリア神ってそんなに凄い神様なのね! 見直しちゃった! 私、ミリア神に入信するわ!」


「私も入信しよう! 赤ちゃんがこんなに喋れるようになったのは、ミリア神のおかげだ!」


 二人とも目を輝かせて、入信という言葉を言った。ふふっ、そうだろそうだろ。私のミリアたんは凄いんだ。やっぱり、隠しきれない神オーラというものがあるんだな。


 だけど、二人だけじゃ足りない。セントには後でゆっくりと布教するとして、他をどうするか?


「それで、ミリア神の布教だったな。それなら、領地の人を増やせばいいと思う」


「……なるほど? でも、どうしてそれで布教が出来るの?」


「布教するのに手っ取り早いのは、領民に働きかけることだ。信仰する神様の凄さが分かると、領民も心を入れ替えてくれるだろう」


 騎士爵家だから、その方法が手っ取り早いか。


「だけど、難しいわよ。この大陸の信仰は自由なの。誰がどの神様を信仰してもいいし、しなくてもいい。そんな中で、信仰する者が少ない神様を布教するのは大変よ」


 なるほど。この大陸は多神教なのか。人々はそれぞれ好きな神を信仰し、あるいは信仰しない自由すらある。どこか一つの宗教が絶対的な支配力を持っているわけではないらしい。


 それを聞いた瞬間、私はむしろ安心した。


 一神教の世界だったら面倒だっただろう。既に絶対的な神が存在し、人々が強く結びついているなら、そこへ割り込むのは非常に難しい。


 宗教というのは、ただ信仰するだけではなく、生活や文化、習慣と深く結びついている。そこに別の神をねじ込もうとすれば、当然反発が生まれる。下手をすれば異端扱いされ、排除されることすらある。


 だが、多神教なら話は別だ。


 多神教というのは言い換えれば、「神の席がいくつも空いている世界」ということだ。農業の神、海の神、戦いの神、商売の神。人々は状況に応じて祈る神を変える。複数の神を同時に信仰することも珍しくない。


 つまり、そこには常に隙間がある。


「大丈夫。ミリアたんが大陸全土から信仰を集めることは不可能じゃない」


 きっと、やり方さえ間違えなければ、ミリアたんは布教出来る! 待っていて、ミリアたん! 私がミリアたんを最高の神にしてあげるから!


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