26.物量作戦
「うん、結構集まったね」
私の前には百羽を超えるキジバードがお辞儀をして待機していた。みんな捕まえて、洗脳し、無事下僕になった。後は、私の思うがままだ。
『す、凄いね……まさか、私の力でこんなことが出来るだなんて』
「ミリアたんは究極の最高神だから、その力は強大なものだからね。本当に万能で究極で最高の力だよ」
『ううん。この力に可能性を見出してくれた、シアさんのお陰だよ。本当にありがとう』
ニコリと微笑むミリアたんを見ると、心が滾る! この笑顔で大陸を支配できるほどの力が溢れてくる!
そんな謙虚なミリアたんが好き! でも、明るいところも好きだし、ちょっとポンコツなところも好きだし!
「とくかく、好きだーっ!」
『ど、どうしたの!? 大丈夫?』
「ふー、驚かせちゃってごめんね。じゃあ、早速このキジバードに命令をしないと」
気を取り直して、キジバードに向き直る。
「「「ご主人様、ご命令を」」」
「うん。君たちの仕事は村から追い出された人をこの村に誘導すること。悲惨な村で苦労をしている村人を引き抜いて、この村の事を伝えること。とにかく、辛い目にあっている人をこの村に呼び寄せればいいんだよ」
そういうと、キジバードは了解するように頷いた。
「じゃあ、行ってきて、人を集めて!」
号令を出すと、キジバードは一斉に飛び上がり、空へと舞い上がった。そして、四方八方に散開していく。
『上手くいくといいですね』
「ちゃんと洗脳したから、仕事はしてくれると思うよ。キジバードが働いている間に、私たちもやることをやっておかないと」
『何をするんですか?』
「新しい人が来ても生活出来るように、環境は整えないとね。衣食住は当たり前として、仕事も増やしていかないと」
ちゃんとした生活基盤があるから、人は安心して暮らしていける。その為には事前準備が何よりも大切だ。
「また、ミリアたんの力を貸してほしいけれど……大丈夫?」
『私も少しは鍛えられたから、無茶をしても大丈夫だよ!』
「いや、無茶はさせられない! 絶対に疲れるとかはなし! ミリアたんは疲れて顔が曇るんだったら、力は使わない!」
『だ、大丈夫だよー……』
いや、ミリアたんは無理しすぎるところがあるから、私が率先して止めないといけない。よし、ミリアたんが疲れたらすぐにやめる!
『ほら、行こう? 早く終わらせないと、仕事が溜まっちゃうよ』
「うん!」
私はミリアたんを連れて、村へと戻っていった。
◇
それから私たちは、新しく迎えた住民たちのために、衣食住を整える日々を送っていた。
木々を伐り開いて居住地と畑の面積を広げ、その木材や集めた石を使って家を建てていく。
保管してあった素材を取り出しては衣服に仕立て直し、人が増えても困らないよう、狩りで肉を確保し、畑では野菜の栽培を進めた。
忙しくも充実した日々が、穏やかに過ぎていく。
そんなある日のことだった。
「よし、今日の作業はこの辺かな。ミリアたん、疲れてない?」
『まだまだ、元気が残っているよ。もっと、力を使って!』
「じゃあ、今日はここまでにしようか」
『えっ!? ま、まだ力を使えるよ!』
「……ああ、分かる。ミリアたんの声、ほんの少しだけ沈んでる。いつもみたいに弾んでないし、体から溢れてるはずの力も……こんなに弱々しいなんて。つまり、疲れてるってことだよね。無理なんてさせないよ。させるわけないじゃん。ミリアたんが壊れるくらいなら、周りの全部を壊した方がずっといい」
『あ、はい……大人しくしています』
……うん、分かってくれて本当に良かった。毎日、力を使わせてもらっているんだから、疲れていないわけじゃないんだよね。
そう思って引き揚げようとした時、空から一羽のキジバードが飛んできた。腕にとまらせると、キジバードがお辞儀をした。
「ご主人様。村を追放された人間を誘導してきました」
「おっ、やっと来たね。人数は?」
「八人でございます」
「まぁ、そんなものか。お疲れ様、森で休んでいて」
どうやら、第一陣がやってきたみたいだ。迎えに行こうとした時、遠くから村人が走ってくるのが見えた。
「シア様ー! 外から人がやってきました!」
「こっちも来たね。案内して、話をするから」
「はい!」
村人の先導で私は道を進んでいった。しばらく進んでいくと、村人に囲まれた人たちが見えた。服は汚れて破れ、その頬はこけていた。やはり、追放されてしまってから、ろくな生活を送ってこなかったのだろう。
その人たちの前に着くと、出来るだけ明るく話し始める。
「モンベルト騎士爵領へようそこ。私は騎士爵の娘だよ」
「あ、はじめまして……。あの……私たちはここに来れば、住む場所も着る物も食べる物もあるって聞いてきたんです」
「こんな俺たちでも、迎い入れてくれるのか?」
「もちろん。そういう人たちを集めていたので、大歓迎です」
そういうと、その人たちは嬉しそうに笑った。でも、重要なのはここからだ。
「だけど、ミリアたんを信仰しないとダメ。それが、この村に住む条件だよ」
「はい、それは聞いております。一人の神様を信仰すればいいんですよね?」
「そうそう。この村はね、ミリアたんっていう史上最強で、誰よりも尊くて、絶対で……私たちが生きていられる理由そのものの神様によって成り立ってるの。だからね、ミリアたんを信じない人なんて……この村にはいらないの。だって、そんなの許せるわけないでしょ? ミリアたんを疑うなんて、考えるだけでもおかしいし……そんな人が同じ場所で息してるなんて、ちょっと耐えられないかな。安心して? ちゃんと信仰してくれるなら、すっごく優しくするよ。ここはとってもいい場所だから」
私の気持ちを吐き出すと、その人たちは圧倒されたように怯えた。いけない、気持ちが抑えられなかった。
「じゃあ、村人が色々とここの生活を教えていくね。みんな、お願い。落ち着いたら、また私から説明するから」
「後は任せてください!」
村人は快く引き受けると、その人たちを連れて行ってしまった。あとは、落ち着いた頃合いを見計らって、村のことを説明して、信仰の話もしなくちゃ。
『人が来て良かったですね。これから、どんどん人が増えるといいのだけれど……』
「大丈夫だよ。これから、どんどん人が増えてくる。そしたら、村が大きくなって、信者も増える。信者が少ないからって、絶対に消させやしないから」
『シアさん……。いつも私のために尽力してくれて、ありがとう』
「ミリアたんの感謝、効くーーーッ!!」
なにこれ、なにこれ……! 今の一言だけで、全身に力が満ちていくんだけど!? いや違う、満ちるどころか溢れてる。もう抑えきれない。心臓がうるさい。うるさいうるさいうるさい――!
「ありがとうって……今、言ったよね? ちゃんと、私に……!」
『え、えっと……うん。いつも頑張ってくれてるから、その……』
「~~~~っ!!」
言葉にならない声が漏れる。
ダメだ、直視できない。ミリアたんの顔が尊すぎて、目が焼ける。いや焼けてもいい、むしろ焼かれて本望。でもやっぱり直視は無理。チラ見で限界。いや、でも見たい――!
葛藤の末、私はそっと顔を覆いながらも指の隙間からミリアたんを見つめる。……やっぱり可愛い。無理。尊い。世界が救われた。
「こんなに優しくて、こんなに尊くて、こんなに可愛い神様がいるのに……知らないまま生きてる人がいるなんて、もったいない! どんどん布教をして、信者を増やしていくぞ!」
『む、無理しないでね』
「無理だなんて、とんでもない。もはや、生きがい! ミリアたんは、ただそこにいてくれるだけでいい。笑ってくれるだけでいい。あとは全部、私が世界を整えてあげる」
ミリアたんのためなら、どんなことだって出来る! やってやるぞー!




