22.侵入してきた賊
「みんな、集まってくれてありがとう。今日は大事な話があって、ここに集まってもらった」
お父様が村人の前に立つと話し始めた。
「どうやら、この村を狙っている賊が周辺に現れたらしい」
「えっ!? そ、そうなんですか!?」
「襲い掛かってくるんですか!?」
「ど、どうしたら!」
賊のことを伝えると、村人たちは混乱した。今までそんなことがなかったから、どうしたらいいか分からないのだ。
「落ち着いて聞いてくれ。このままだと村は賊に襲われ、奪われてしまう。それだけは避けたい。だから、ここにいるみんなで協力し合って、賊を倒すんだ」
その言葉に村人たちはしんと静まり返った。
「俺たちにそんなことが可能なのか?」
「私はそんなに力強くは……」
「力が足りないんじゃ……」
自分たちでは荷が重すぎる、そう言っているようだった。だが、そんなことは決してない。お父様の代わりに私が前に出た。
「みんな、忘れていない? 私たちにはミリアたんがついているっていうことを」
「おぉっ! そうでした!」
「我らにはミリア様がついているんだ!」
「ミリア様、ミリア様!」
ミリアたんの名を口にすると、村人たちに力が戻った。みんながミリアたんを崇め、恐怖を感じなくなった。
私の教育のお陰で、ミリアたんは村人の心の支えになった。日常にミリアたんがいて、特別な時にもミリアたんがいる。そんな生活を送ったおかげで、信仰心がとても高まっている。
「私たちにはミリアたんがついている! だから、賊なんていうのは敵でもない!」
「そうだ! ミリア様がいてくれれば、俺たちは戦える!」
「ミリア様のために、戦います!」
「やってやるぜー!」
村人たちは雄たけびを上げ、恐怖心を拭い去った。ミリアたんの信仰心のお陰で、こんなに立派な信者になって……。これならば、賊とだって戦えるはずだ。
「よし! みんなで賊を迎え撃つぞー!」
「「「おーーーっ!」」」
ミリアたんの信仰心でこの村を守るんだ!
◇
そして、その日の夜。村人たちは農具を持ち、家の影に隠れていた。私も一緒になって隠れ、賊の到着を待った。
すると、森の中から気配がした。大勢の人が歩いてくる気配だ。それが、真っすぐ村に向かってきている。
月明かりがその姿を照らし出す。武器を持った大人たちが村の中に入ってきた。
「ここが、最近景気のいい村か。色々と良い物が揃っていそうだな」
「とにかく、食料だ。食べるものが欲しい」
「結構いい家が立っているじゃないか。略奪じゃなくて、この村を乗っ取った方がいいんじゃないかい?」
警戒もせずに堂々と入ってきた。これは、不意を突くチャンスだ。賊が村の奥へと入ってくると、私は合図を出した。
「攻撃開始!」
「「「うおぉぉっ!!」」」
その声に村人たちは次々と飛び出していった。そして、賊の前に出ていった村人の姿は――筋肉隆々の筋肉ダルマだった。
「なっ!? えっ!? なぁっ!?」
「ば、化け物だぁっ!」
「こいつらは魔物かっ!?」
人間の常識を超えた姿に賊たちは一斉に怯えだした。まさか、想像を絶する筋肉ダルマがこんなにいるとは思わないだろう。
だけど、これは見た目のインパクトだけじゃない。ちゃんと、力も備わっているんだ。
「うらぁっ!」
「ぐはっ!」
「やぁっ!」
「うべらっ!」
「とぉっ!」
「らべばっ!」
力に物を言わせて農具を振り回すと、面白いように賊が倒れていく。力もスピードも段違いに強くなっている。
そんな集団が百人もいるのだから、ただの賊は相手にならない。ミリアたんの力で変身を遂げた村人は次々と賊を倒していった。
そして、最後の一人が地面に倒れた。静寂が下りる。
「こ、これで終わりか?」
「凄い、こんなにあっという間に……」
「全部倒したっていうのか?」
村人たちは自分たちで賊を退治したことに驚いていた。だけど、これが現実だ。
「みんなの信仰の力で賊を倒したんだよ。これが、信仰の力。ミリアたんの力だよ!」
「凄い……本当に……。うおぉぉっ、ミリア様、ばんざーい!」
「ミリア様、ありがとうございます!」
「ミリア様、ミリア様!」
村人たちは全ての感謝をミリアたんに捧げた。その熱狂ぶりは凄まじく、空気が振動するほどだった。
本当に村人は心からミリアたんを信仰している。それが良く分かる一幕だ。ここまで来るのに時間は掛かったけれど、これでミリアたんの信者は生まれた。
だけど、まだ足りない。ミリアたんを最高の神に押し上げるためにも、信者はもっと必要だ。
……待てよ。この賊たちを改心させて、信者にすることは出来ないだろうか? 悔い改め、ミリアたんを信仰するように洗脳すれば……また信者の出来上がりだ。
よし、次はそれをやっていこう。ミリアたんの信者を増やすんだ!




