21.二歳!
「シア。二歳の誕生日、おめでとう」
「本当に大きくなって……。お母様嬉しいわ」
「おめでとう、シア!」
家族に拍手で迎えられた。いつもは宙に浮いて移動しているが、今日は二歳になったということで自分の足で歩いている。
うーん、二歳児はまだちゃんと歩けないなぁ。
「まぁ、可愛い! こうしてみると、年相応に見えるわね」
「これが健全な二歳児の姿だな」
「俺はいつものシアがいいぞ!」
よちよちと歩く私の姿を見て、家族の反応は様々だ。だけど、顔は蕩けていて、とても穏やかなのは分かった。
いつもはミリアたんの力を使わせてもらっているが、使わなかったらどうなるのだろうか? そう思って、口調の力を失くしてみた。
「おとうちゃま、おかあちゃま、おにいちゃま。ありあとう!」
「まぁ! まぁ! まぁ! なんて可愛い声なんでしょう! やっぱり、私の娘は天使だわ!」
「年相応な姿がこんなにも可愛いなんてな。あぁ、シア。私のところに生まれてきてくれてありがとう」
「俺はいつものシアの方が面白い!」
お母様にギュッと抱きしめられ、そのお母様ごとお父様が抱きしめる。それを、お兄様が見守る。温かい家族の風景だ。
だけど、やはり二歳児は不便だ。普段使っているミリアたんの力の凄さが良く分かる。
「ふー……。やっぱり、いつものがいいわ」
「……もう、シアのいけず。今日一日は二歳児のままでいてくれてもいいのに」
「そうだぞ。無理はしなくてもいいんだぞ」
「赤ちゃんの時からこれだったから、こっちの方がしっくりくるんだよね」
「わーい! いつものシアに戻った!」
やっぱり、ミリアたんは偉大だわ。ミリアたんを信仰していて良かった。ミリアたんしか勝たん。
「じゃあ、シアの成長の感謝をミリア様に伝えましょう」
「そうだな。それはとても重要なことだ」
「俺もする!」
すると、自然な流れでミリアたんに感謝を伝えることになった。みんな、台の上に乗っているミリアたんに向かって、手を合わせてお祈りをする。
「ミリア様のお陰で、シアが無事に成長出来ました。本当にありがとうございます」
「ご加護のお陰で、無事に二歳になりました。これからもよろしくお願いします」
「ミリア様、ありがとう!」
『みんながシアを大切にしてくれたからだよ。だから、これからも大切にしてあげてね』
家族で感謝を伝えると、それを聞いたミリアたんが嬉しそうに頷いた。そうして、祈りの力はミリアたんに宿り、それが力となって保存される。
教育をしてから数か月が経った。今ではみんな自然とミリアたんを信仰出来るようになった。
日々の感謝をミリアたんに捧げ、日々の挨拶をミリアたんに捧げ、日々の祈りをミリアたんに捧げる。ミリアたんが中心になった生活を営むようになった。
はぁー。ここまでくるのに、結構時間がかかってしまった。洗脳……じゃなかった、教育は上手くいって、信仰も深まってくれた。お陰でミリアたんには信仰の力が溜まり、日々強くなっている。
そうだよねぇ。ミリアたんの素晴らしさを知ると、自然とそうなっちゃうよねぇ。とりあえず、合格ラインには到達したけれど、まだまだ信仰は深められるはずだ。
この調子で信仰深い信者を作っていって、ミリアたんを押し上げるんだ。そうすると、ミリアたんが貶されることもなくなるだろう。……だが、貶した神は絶対に許さん。
「さて、お祈りはここまでにして、シアの誕生日会をしよう」
「シアが領地を盛り立ててくれたおかげで、誕生日会も豪勢にすることが出来るわ」
「美味しいものがたくさん食べれて俺、嬉しい!」
この二年で村の状態も良くなった。作物はしっかりと育ち、村人はしっかりと働き、衣食住が整った生活が送れるようになった。
初めて見た時は悲惨な有様に驚いたけれど、ようやく人並程度の生活が送れるようになった。これも、全部ミリアたんのお陰。はー……ミリアたん、マジ神。
村の生活が安定したことだし、今度は人を呼び込むことをしなければ。さて、どうやって呼び込もうか……。
そんなことを考えていると、狼の遠吠えが聞こえてきた。どうやら、家の近くに来ているらしい。
私は席を立って、窓に近づいた。窓を開けると、そこには村の見回りをしている狼たちがいた。
『急に呼び出してどうしたの?』
『村の周りに変な奴らがウロウロしていたので、報告に来ました』
『報告出来て偉いね。それで、変な奴らって?』
『人間です。いかつい人間たちが武器を持って村をさぐっていました』
……これは、良い予感がしない。
『その人間たちは?』
『村を見回った後、森を出ていきました。その森の外を確認してくると、そこにも武器を持ったいかつい人間たちが居ました』
ただ事ではない。もしかしたら、この村を狙ってきた賊の可能性もある。とりあえず、お父様に確認だ。
「お父様。どうやら、村を偵察に来た怪しい人間たちがいるみたい」
「……怪しい人間? ……もしかしたら、賊かもしれないな。弱い村を襲う賊の集団がいる、と聞いたことがある」
なるほど、そういう集団か。この村が豊かになっていると噂をかぎつけて、狙ってきているかもしれない。
以前の村なら、略奪されていたかもしれない。だけど、今の村は違う。みんなが心からミリアたんを信仰している。その力が村人にはある。
これは、その力を確認するいいチャンスかもしれない。ふっふっふっ。ミリアたんへの信仰の力、見せつける時だ!




