20.教育
「うーん……私の可愛い子が……魔物と化け物に……」
ベッドの上で横になっているお母様が唸りながらそんなことを言った。どうやら、私たちの姿はあまりにも強烈だったみたいだ。
「なんとか、落ち着いて良かった。それにしてもセント、シア……レイチェルを驚かせたらダメじゃないか」
「えーっ! あんなにカッコいい姿だったのに!?」
「あれは使い勝手のいい姿なんだけど……」
お父様がムッとした怒り顔になるが、私たちは反抗した。だって、ミリアたんの力で変身したんだよ? だったら、存分に使わないとミリアたんに失礼だ。
「お前たちの気持ちは分かる。だけど、レイチェルにとって元の姿はとても可愛いものなんだ。だから、そう簡単に姿を変えられたら、心労も強くなるだろう? だから、あんまり見せないでくれ」
「だったら、お母様の見えないところで変身する!」
「お兄様、頭いい!」
「そういうわけじゃ……はぁっ。本当に気を付けるんだよ」
お母様に心労をかけるわけにはいかないから、こっそりと変身するとしよう。お父様もそんなに厳しく言ってこないから、そこを気を付ければなんとかなりそうだ。
「それにしても、セントは凄いな。ミリア様の力の影響が強く出たんだろう?」
「うん! 真剣に祈ったら、出来た!」
「うん、うん。お兄様は熱心にミリアたんに祈っていたからね。その気持ちが通じたんだよ」
「それはもちろん! あの強い体になりたかったからね!」
動機が不純だが、信仰する気持ちは本物のようだ。お兄様にはこのまま信仰を深めてもらうことにしよう。だが、ガチ恋だけは許されない。
「そうか……。この目でその影響を見て、少しは心が変わったよ。私も今まで以上に精進しよう」
「えっ……。だったら、今まで精進していなかったってこと? ……お父様?」
ジト目で睨みつけると、お父様が震え上がる。
「シ、シアッ! 怖い、怖い! ま、まだ半信半疑だったんだ! シアだけが特別だと思っていたから!」
「まぁ、私は特別にミリアたんを推しているけれど……。でも、そうか……まだまだ、信仰が浅いっていうのは分かった」
ミリアたんに信仰が集まらないのは、ミリアたんが過剰に信仰を返しているから以外にも原因がある。やはり、みんなの信仰が浅いのだ。
私のようには無理かもしれないけれど、もっと深い信仰が必要だ。お兄様だって、変身が出来るほどに信仰出来たのだから、他のみんなだってやればできる。
「これは教育が必要だね」
「教育? シア……お前は何をする気なんだ?」
「それは、もちろん。ミリアたんに今まで以上に信仰を集めることだよ。もっと、集めなければ……ミリアたんの立場が悪くなる一方……」
本当にどうにかせねば。神のいる世界でミリアたんが他の神に貶されているのだから、それをどうにかしたい。やっぱり、他の神を貶めるようなことをするか? ……いや、ミリアたんの方が先か。
「村もだいぶ充実したし、ここらでテコ入れをしよう。正しいミリアたんの信仰のやり方を広める必要がある」
「まぁ、それが出来ればいいのだが……」
「出来ればじゃない、やるの」
「ひぃっ!? シアのやる気が天元突破!?」
そう、私がやらないで誰がやる。
「というわけで、成功者のお兄様。少し手伝って」
「うん、いいぞ!」
「ミリアたんも少し力を貸して」
『もちろん、いいわ』
「よし、村人を集めに行こう」
そうして、私はミリアたんとお兄様を連れて、村へと行った。
◇
村の一角に村人が集まった。みんな、私の圧でおどおどとしている。
「じゃあ、みんなに伝えておくことがあるの。みんなのミリアたんへの信仰が浅い」
圧強めで言うと、村人たちは怯え始めた。
「す、すいません! 日常の事で手一杯で祈る気持ちが……」
「そろそろ、その日常も楽になってきたんじゃない? だから、みんなの気持ちにも余裕が出来たと思う。その余裕をミリアたんの信仰に向けて欲しいの」
「余裕を信仰にですか? 祈る時間を増やせばいいということですか?」
「ただ、単に増やせばいいってことじゃない。信仰の深さが必要。そうすると、ミリアたんにはたくさんの信仰が集まるし、みんなにもさらなる恩恵がある」
さらなる恩恵と口にすると、村人はざわめいた。
「さらなる恩恵とは、日常の仕事がもっと楽になるというところですか?」
「そう、信仰を深めれば、もっと日常がらくになる。それに、自分が望む力を手に入れることも出来る。お兄様」
「おう!」
お兄様を呼んで、みんなの前に立たせた。
「ミリア様を強く思うと、それだけ強い恩恵が戻ってくるんだ。この俺のようにな。見てて!」
そう宣言すると、お兄様はミリアたんに向き直る。そして、強く祈るとミリアたんが光り、その光りがお兄様を包み込む。
「来い、俺のカッコいい体!」
すると、お兄様の体がどんどん大きくなって、二メートルを超える筋肉隆々の体つきになった。
「おぉっ、こ、これは!」
「シア様が変身した姿!?」
「まさか、セント様まで!?」
途端に騒ぎ出す村人たち。その変身が信仰深い私にしか出来ないと思っていたのか、とても驚いた様子だった。
「ほら、見て! シアだけじゃなくて、俺にも出来たんだ! これも、強くミリア様に祈りを捧げたからだぞ!」
自慢げに胸を張る。
「じゃあ、本当に誰にでも出来るということ?」
「そうだよ。信仰さえ強ければ、自分の望む力が手に入る。それが良く分かったよね?」
「は、はい、分かりました! 私たちでも出来るんですね!」
「そうそう。みんなには豊かな暮らしをして欲しいから、今よりももっと信仰を深めればそれも可能になるよ」
そう話すと、村人たちは明るい顔で喜んだ。よし、掴みはオッケーだ。みんなの気持ちがこっちに向いてきた。
「では、教えてください! 俺たちに深い信仰というものを!」
「お願いします!」
「シア様、教えを!」
すると、村人が私の前に殺到してきた。これは、良い傾向だ。だったら、私はみっちりと教えてあげよう。
「私に任せて」
ニチャァッと笑うと、私はミリアたんへの信仰のあり方を話し始めた。




